邦画『花戦さ』/合戦シーンがないのに華がある歴史モノ

スコア:631/999

花戦さ出典:東映
『花戦さ』


【あらすじ】

少々風変りな所はあるものの、花を生けることに関しては凄まじい才気と情熱を発揮する僧侶、池坊専応。彼は縁あって織田信長、そして信長亡き後に冷酷な権力者となった豊臣秀吉に向けて、花を生けることになる。


【作品情報】

公開:2017年6月3日(日本)/上映時間:127分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:歴史映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督)篠原哲雄/(脚本)森下佳子/(音楽) 久石譲/(原作) 鬼塚忠『花いくさ』


【キャスト】

野村萬斎/市川猿之助/中井貴一/佐々木蔵之介/佐藤浩市/高橋克実/吉田栄作/森川葵


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ポイントレビュー


■豊臣政権に関する知識に詳しい方はより楽しめるかも

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:167/333|評価:GOOD

芸術分野における戦いを描くのは難しい。

自分の中で一方的に思い込んでいる一つのセオリーなのですが、この作品の場合は、その曖昧な芸術の勝ち負けの定義を、うまく物語の中で消化していたのではないでしょか?

けれど、この映画を歴史的な背景を知らない人にオススメしてしまうと、何が何だかわからなかったという感想を持つ人が多少いると思うんです。

全くと言って良いほど知識がない状態でも、ひとつも理解が出来なかったとまではならないと思いますが、必要最低限の知識がないと、真の意味で楽しめない部分はあると思います。

織田信長が死んだ後って、どうなったんだっけ?そもそも戦国時代ってなんだっけな方には、少々わかりにくいかもしれません。「なんで、お茶やお花のことで、そんなにマジになってんの?」と言われてしまったら、お終いな作品です。

とはいっても、豊臣秀吉と千利休は色々あった。ぐらいのこと知っている人なら、おそらく大丈夫。茶道、華道については、きちんと作中で説明があります。

そう考えてみると、意外と小学校高学年から中学生ぐらいが見ると、面白かったと言ってくれそうな映画ですね。

好奇心の強い子であれば、見終わった後に、利休や池坊についてウィキペディアで検索すること間違いなしです。


■野村萬斎の演技に刮目せよ

山守 秀久
山守 秀久
歴史好き代表
ポイント:266/333|評価:GOOD

能楽師の野村萬斎さんを受け入れられるか、受け入れられないかで、かなり評価が変わってくるのではないでしょうか?

残念ながら、私は受け入れられない方でした。

それは演技に狂言的な芝居がかった印象を受けたからという理由ではなく、やはり野村萬斎は野村萬斎であるといった印象からくるものです。

存在感があり過ぎました。

一連の物語の中で、全てが彼の魅力に凝縮されてしまっているような気がするんです。

でも、それだと、タイトルである『花戦さ』の本来の意味はどうなるのかと疑問を持ってしまいます。別に題材が『花』じゃなくてもなんでも戦場に活けたんじゃないですか……彼なら。

そうした部分を鑑みると、歴史好きとしてはやや不満かなという感想です。それぐらい主演の魅力が際立っていました。

個人に魅力があり過ぎてイチャモンをつけられるというのは、もしかしたら天才の宿命なのかもしれません。

とはいえ、見ていて満足感自体はあるので、タチが悪いんです。

すみません。色々と理屈をコネてしまいましたが、歴史モノの中ではかなりの良作です。

そう、魅せられてしまったがゆえに、納得できなくてつい……ですね。


■初めてお花って可愛いものだと思った

橘 律
橘 律
女性代表?
ポイント:198/333|評価:GOOD

数少ない経験からのお話で誠に申し訳ないのですが……

わたくしがお花を頂いても全く嬉しくない、むしろ、そのまま電車に乗って持ち帰るのが恥ずかしかったと思うタイプの女であると、ご理解頂いた上でレビューをお読みください。

気遣いを持って飾られた花ってあんなに綺麗なんですね。特に北野大茶湯の際に、池坊によって木の幹の上に飾られた花達はちょこんとしていて、美しさのなかに可愛らしささえありました。

それ以外のシーンでも、目的をもって飾る、皆で眺める、感想を言い合う、っていう花に対する心の持ち方を教えて貰ったりと、まるで本物の華道の先生に習いに行ったみたいな気分にさせてくれる映画です。

ただ、こうした作中の場面を見ていると、自分が少しだけ、ほんの少しだけ間違っていたことに気付かされます。

「花なんて邪魔なだけじゃん」

そう思っていた時期が私にもありました。なので反省の意味を込めて、私にとっては、数少ない花を送って下さった男性(二人)に、この場をお借りして心から謝罪の言葉を述べたいと思います。

気持ちを汲み取れないあたいが間違ってました。今のプロフ画像も花のクセにね(笑)

申し訳ねぇでありんす。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

野村萬斎というクセのある花が生けられている作品

山守 秀久
山守 秀久
メインレビュアー
アクション担当/最高評価

野村萬斎という役者は実に恐ろしいです。

たとえ脇役として出ていた話だとしても、たとえ物語としてはつまらなかったという感想を受けるものだとしても、最終評価としては「野村萬斎が出てた作品」という称号が与えざるを得ないほどの存在感があります。

この「花戦さ」に関してもその評価は変わりません。

完全に「野村萬斎が出てた作品」です。

同じく野村萬斎が主演している『のぼうの城』という時代映画がありますが、こちらの映画で抱いたものとほぼほぼ変わらない感想をこの映画でも持ちました。

テーマがテーマなので、芸能界、歌舞伎界からも沢山の味のある俳優陣が出演していますが、完全に食われてしまっています。

私自身は極端な話、物語の一部である役者という存在が、物語そのものを支配してしまうというのは、如何なものかと思う側の人間なののですが、許せてしまうんです。

野村萬斎が主役で良かったと。

ご無礼にも原作を読んだことがないので、話の筋の魅力云云かんぬんのレビューは出来ません。でも、野村萬斎という役者が好きならその魅力を存分の楽しめる映画だと思います。

歴史という、壮大なる物語を愛する一人の人間としては、あまり認めたくないことですが、「主演が良かった」というだけで、高い評価を下したくなる映画です。

よくよく考えてみると、総合的にはよくある戦国時代のいざこざに便乗して、ある実在の人物が活躍するという格好なんですが、それをさも新しい切り口でやってのけましたといった雰囲気をかもしだしたのは、やはり野村萬斎の存在でしょう。

少々、日本一好きな役者というワケでもない野村萬斎を褒め過ぎな気がしないでもないですが、彼が映画そのものに独自の色に染め上げるほどにクセが強い役者だというのは事実だと思います。

クセが強い演技で彩られた、クセがなかったハズの作品といった意味合いでは、私は一見の価値があると思います。

芸能の世界では主役が食われるとは良く言ったものですが、主役が全部を食うというのは、存外に珍しいケースなのではないでしょうか?

本作の名台詞

赤も好きや緑も紫も金も好きやで…でも今は黒が好きやで

出典:花戦さ/VOD版

役名:千利休
演:佐藤浩市