邦画『映画 ビリギャル』/大学受験界隈で起きたプチ珍しい出来事をノンフィクション小説化して映画化もした話

スコア:541/999

映画 ビリギャル出典: 東宝
『映画 ビリギャル』


【あらすじ】

遊ぶ事が大好きで勉強を全くしなかったさやかは、母の薦めで受けた塾の入学テストで小4並みの学力と判定されてしまう。その後の学校での担任教師の心無い一言の影響もあり、さやかは慶応大学合格を堂々と宣言する。


【作品情報】

公開:2015年5月1日(日本)|2015年10月22日(香港)|2015年11月13日(台湾)|2016年4月14日/上映時間:117分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:ノンフィクション映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:英語


【スタッフ】

(監督) 土井裕泰/(脚本) 橋本裕志/(音楽) 瀬川英史/ サンボマスター『可能性』/(原作)坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』


【キャスト】

有村架純/ 伊藤淳史/野村周平/松井愛莉/阿部菜渚美/蔵下穂波/安田顕/田中哲司/吉田羊/奥田こころ


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ポイントレビュー


■有村架純と伊藤淳史の微笑ましいやり取りは見所

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:190/333|評価:GOOD

自分の人生にまつわるストーリーを投稿出来るサイト『STORYS.JP』の投稿をノベライズした、坪田信貴著のノンフィクション小説『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』をさらに映画化した作品です。

原作小説のタイトルと同じような長ったらしい説明になってしまいましたが、この時代はこういうタイトルの付け方が流行り、でも結局は略して紹介するという手法が流行りだったような気がします。

当サイトでもレビューさせて頂いている『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』も本作公開の2年後に公開されているので、似たような時期ですね。こちらの作品も『チアダン』と略すのでこのパターンです。そして、最早説明するまでもなく、どちらもタイトルを読むだけで9割方のストーリーは把握できるようになっています。

忌憚のない意見を言わせて頂くとすれば、こういうタイトルの付け方の開拓者はおそらく悲しいかなエッチなビデオなんです。こういう展開?が見たいというユーザーの希望に答えるのが最重要視される分野ですから……

何だか自分で書いていて急に恥ずかしくなってきましたが、結末より過程が大事で予め定められたところに向かう作品が好きな方には、面白く仕上がっていると思います。かなり主演の有村架純と塾講師役の伊藤淳史の微笑ましいやり取りに底上げされている部分はあるものの、『チアダン』よりは『映画 ビリギャル』の方がずっと好きですね。一応映画版は略したバージョンのタイトルした付けていないのも、印象は良いです。

……また、勘違いのないように念のため申し上げておきますが、説明的なタイトルのAVが好みなわけではありません。好きなのはちゃんと別ジャンルであります。男としてそこは譲れませんのであしからず。


■本作品を取り巻く本作とは無関係の別の出来事の方が気になってしまって……

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:149/333|評価:BAD

ノンフィクション小説が原作の映画……という触れ込みを大々的にアピールする意義があったのかと言われると若干の疑問が残ります。フィクションの世界では、映画でもTVドラマでもアニメでも漫画でも小説でも、飽きるほど目にしてきた内容です。

そして、それらを見たり読んだりした学生が受験勉強を頑張って名門大学に挑戦してみようという気持ちになることもあると思います。本作についてもそれは同じだと言っても良いでしょう。

ふんわりした表現になってしまいますが、見終えるとやる気に似た何かが一応は生まれては来ます。ただ、それはすぐに消えてしまう軽い軽いものでした。

それゆえに、本作の行き過ぎた実話アピールは逆効果だったのではないかとも感じました。そこまで特殊な例だとは思わないんです。結構実在しますよこういう受験生。気恥ずかしさからなのか、特段自らは語ろうとはしないだけで……

受験生の勉強意欲を高めるという意味では、本作の受験エピソードを見るより、偏差値が低めの高校の大学別合格実績を見た方が、本作を見るよりよっぽどやる気が出るんじゃないでしょうか?論より証拠です。数字には圧倒的な説得力があります。

実話アピールとしては、エンドロールに実在の主人公の大学入学式の写真を映す程度の演出で良かったのでは?

このお話の主人公のモデルになったご本人は、かなり高偏差値の中高一貫学校の生徒さんだったそうなので、元々勉強が出来る素養はあったんでしょうが、たとえそうでなくても、こういった事例は山ほどあると思います。

とはいえ、娯楽的な作品として見るなら平均点近くはある作品です。

と、やや辛口なレビューですが、最後に少々無関係な話を付け加えさせて頂くと、実は私……この『映画 ビリギャル』なんかよりも、その投稿先であった『STORYS.JP』に過去関わっていた『Coincheck』の元社長(コインチェック事件後に同社は買収され社長は辞任)についてのノンフィクションの方がずっと見て見たいんです。そのことがずっと視聴を邪魔してしまっていた点は、今回の低めになってしまった評価に考慮の余地が残ります。

現在、そういう小説や映画が製作されているという噂は耳にしておりませんが、期待してお待ちしています。人生には成功もあれば失敗もあります。偏差値30から慶応大学を目指すと宣言するより、勇気のいる行動になると思いますが、どうにかなりませんでしょうか?


■一流大学に受かることはゴールじゃなくてあくまでスタート

橘 律
橘 律
一流大卒代表
ポイント:202/333|評価:GOOD

世間的に偏差値が高く一流と言われている国立大学に現役で合格し、留年せずに卒業したことがあります!エッヘン!凄いだろ~

と、今となってはそれぐらいしか思い浮かぶ言葉が見つからないぐらい、脳の肌年齢が赤子のほっぺのようにツヤツヤのプニプニになりつつありますが、この作品にはこんな私でも流石に現代の学生の皆さんに、アドバイスを捧げたい気持ちにさせられました。

それはですね。大学受験なんて人生の夢や目的を達成するための手段でしかないんだから、もう少し肩の力抜いていこうよってことです。死に物狂いで受験勉強すること自体は大事でも何でもありません。

それは机の上でやる学問に限ったことではなく、体育館でやるスポーツでも一緒ですし、遊びに関してだって一緒。何かのために何かを『やる気』になること。本作の中で良いなと思ったことは、この根底にある部分がそれなりに描かれているところですね。

高学歴というキャリアだけを取り敢えず持ちたくて始めたことじゃない。主人公さやかの中でふとしたきっかけで何かが弾けて、『やる気』が起きて始めた受験勉強です。何かに対して『やる気』が芽生える理由なんてどんな下らないことでも構わないんです。

そして、その『やる気』を持続することの難しさ……そういったことをさり気なくメッセージに込めて伝えているという点では、私的には好感が持てました。

ただね。1年間で40も偏差値を上げることは確かに稀有な例かもしれないですけど、その成長にかかる期間は人によりけりな部分が多くあるのでね。別にそこを推されても、「じゃあ私も偏差値30だから頑張ってみよう!」とはならないと思うんですよね。

冷たい言い方をすれば、さやかは『やる気』になるまでの時間がかかってしまったから、マッチポンプ的に厳しい戦いになっただけなので、別段そこは凄くないんじゃないかな?不良から医者や弁護士になった人より、最初から真面目で医者や弁護士になった方が偉いのと同じ。むしろ『やる気』を持ってからの運の良さの方に感謝して欲しいと思います。

人生はサバイバルです。高学歴は社会人として有利にスタートを決めるためのアイテムであることは間違いないんですけど、決してゴールではない。

社会的にまったく成功していない私が言っても何の説得力もありませんが、せっかくやる気を出して得たアイテムは有効活用して、この厳しい世界を乗り切ってやるのだ!と思い立ったら、作中のさやかのように一年発起して受験勉強に打ち込むのはありだと思います。

マジでこんなに分かりやすい強レア役ないですからね(スロットを打つ人にしか分からない)。おかげで本当の意味で頭の良い方が割を食ってしまっている世の中になってしまっていますが……ま、ポイントレビューなのにこんなに長い感想を書けている時点で、変に屈折した目線で観ない限りは一見の価値はある映画だと思います。

適度に頑張れ!受験生!!でも、皆が頑張っちゃうと結果が変わらないのって矛盾だよね!


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

そこまで特別なお話ではない貴重なノンフィクション

橘 律
橘 律
メインレビュアー
一流大卒代表/最高評価

ポイントレビューの時点でかなりボリューミーだったっていうのに、また私ですかい。ネタバレはタイトル時点である程度完結しているし、大体言いたいことは書いちゃったし、何を書こうかなぁ……

そう、そうです。これを文字数稼ぎと言います。

じゃあ、本作のメインの学びの場である『塾』についてのお話でもしましょうか?この作品の原作者は塾の講師の方のようで、なかなか受験生にとっては有能なトレーナーであるようです。何でも心理学的なものを応用して教えたりもするのだとか。

私も通っていた『塾』の先生のおかげで受験勉強がうまく運んだクチなので、本作の主人公さやかとかなり似ているところがありますね。偏差値はそこそこありましたけど、勉強は見栄を張るわけではなく、本当にやっていませんでした。

学生さん達にとっては月並みな話題になってしまいますが、あの定期テスト前の謎の心理戦「ワタシ昨日寝ちゃってさぁ~全然勉強してないよ」「俺なんて漫画全巻読破しちゃったよぉ」などの勉強してないアピールは一体何なんでしょうか?

きっと結果が悪かった時のためのエクスキューズなんでしょうけど、本当に勉強してこないで戦場に臨むような人間は、クラスメイトのテスト前日の過ごし方なんてものを、テスト結果が配られる日まで覚えてられる余裕などありません。

なので、私はハッキリとこう言っていました「私はめっちゃ(数分前から)勉強してきたよ!」と。自分だけには嘘はつきたくないですもの。

もちろん結果は言わずもがなで、散々な点数でいわゆる血痕(欠点)が付きかけの成績ばかりでした。元々好きだった分野ではそれなりの教科もありましたが、焼け石に温水にもならない状態。やってないものは出来るハズがありませんよね。えっへん!

そうなんです。『やる気』になってやってないものは出来るハズがない。だから、その『やる気』を与えてくれた『塾』の先生には私は今も感謝しています。

本来そこの部分は学校の先生のお仕事で、『やる気』があることが前提で通うのが『塾』なんでしょうけど、彼らは色々と忙しいですしね。完全なるビジネスで行っている塾とは、仕事のスタンスも違います。

ここの部分は人それぞれなんでしょうけど、私の場合は学校の先生からは人間を、塾の先生からは前述の『やる気』の大切さと、受験の攻略法を学びました。

だから本作のさやかも、この『塾』との相性の良さがあってこその結果なのです。そこにあまり良くない教師として描かれていた担任教師を足しても良いくらい。

この奇跡の配合があったからこそ人生を変化させることが出来たわけで、全面的に『塾』通いを支持するわけではありませんけど、本作のこの設定は塾業界にとって非常に有益なプロモーションになったと思います。合格実績を上げるために、優秀な学生にお金を払って架空在籍させる名義借りなんかより、よっぽど正統な宣伝行為ですしね。

ただ『やる気』を持てば、『塾』に行けば、成績が良くなるわけではないってことだけは肝に銘じておくべきだと思います。

話を翻す形になっちゃいますけど、私の言ってることも、本作が言っていることも「バットを振らなきゃヒットは打てない」「シュートを打たなきゃ点は入らない」と同じことなんです。

愛想もクソもない言い方をしてしまえば、「やらなきゃやれない」ただこれだけ。そして、「やっても出来ないこともある」これだけです。

さらに言ってしまうと、この『ビリギャル』は受験戦争逆転劇のテンプレそのまんまのありきたりなお話で、特別心に残るものがあるような作品では(少なくとも私にとっては)ありません。

でも、こういう当たり前に起きる話を当たり前の構成で作って当たり前の終わり方で終わらせるって勇気がいりますよね。だって、「どっかで聞いたことあるような話じゃん」って感想からはほぼ逃げられない内容ですから。

タイトルを読んだだけで、「またそのネタかよ」って観てみることを放棄してしまった人も少なからずいたと思います。

だけどだけど、こういった作品もないといけないんです。私自身は感動もなく、有村架純可愛いなぁとか、伊藤淳史ってやっぱりいいなぁといった場面場面での軽い感想しかありませんでしたけど、こういう時期ってあったような気がしましたから。全然タイプの違う高校生でしたけど、そんな気がしましたから。

これってありきたりで、雛形に沿ったお話で、それでいてノンフィクションだから出来る芸当なんじゃないでしょうか。

ノンフィクション作品って、普通は特別かつ特殊な事例しか取り扱わないことが多いと思い込んでいたので、その意味ではチャレンジ精神に溢れた映画だって言っちゃって良いと思います。

ぶっちゃけ付けた点数はかなりオマケした途中点が入っていますが、なかなかどうして魅せる作品ではあったような気がします。そんなふんわりした感想がふんわり浮かぶ映画でござぇました。

あ、あとこれは本作には関係ない私個人の話ですけど、私がおバカなのは純然たる事実でノンフィクションです。有名大学に入れたのも、良いことも悪いことも色んな運のめぐり合わせに出会えたからってだけ。うん、結局は大学で勉強したこととは全く無関係な分野に行っちゃったしね。

あぁ……こうして振り返ると、あのうら若き日の奇跡的な運をあの日あの時の帯馬券取りに使わせて貰えたらと……そんな物思いにふける今日この頃(主に日曜日の夕方)。

私はまだギリで馬券を買える歳じゃなかった気がするけど、きっと買えたよね?2015年ヴィクトリアマイルの3連単2千万馬券。

本作の名台詞

工藤さやかは慶応大学に合格します!

出典:映画 ビリギャル/VOD版

役名:工藤さやか
演:有村架純