邦画『武士の献立』/刀の代わりに包丁で夫婦愛を調理します

スコア:609/999

武士の献立出典:松竹
『武士の献立』


【あらすじ】

加賀藩の料理人である舟木伝内は、息子安信と結婚して欲しいとお貞の方の女中、春に頼む。春は渋々ながらも結婚を承諾するが、安信は武士でありながら「包丁侍」と馬鹿にされる藩の料理人の現状に不貞腐れていた。


【作品情報】

公開:2013年12月14日(日本)/上映時間:121分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:歴史映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督) 朝原雄三/(脚本)柏田道夫,山室有紀子,朝原雄三/(音楽)岩代太郎/(主題歌) CHARA『恋文』


【キャスト】

上戸彩/高良健吾/西田敏行/余貴美子/成海璃子/柄本佑/夏川結衣/緒形直人
/鹿賀丈史


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ポイントレビュー


■貴重な作品ではあるけど、やっぱり地味

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:168/333|評価:GOOD

テレビ番組で流れるのはだいたいが鞘から刀を抜く、チャンバラモノ。大河ドラマだって、そのほとんどで合戦があったり、諍いがあったりして、刃傷沙汰を描くのが通常です。

忠臣蔵なんて、後10年は見なくていいんじゃないかってぐらい見飽きました。

ゆえに、本作の藩に仕えている武士の裏方を描いている作品は、地味ではありますが、大変貴重だと感じます。

歴史モノってある程度の知識があれば、結果がどうなるかわかっているのものなので、こういった表に出て来ないようなお話を見るのは中々の目新しさがありました。

しかしながら、やはり地味さはぬぐい切れませんね。

ハートにポッっと小さな火を灯してくれるような物語ではあるのですが、淡々と話が進んでいく上に、同じく非チャンバラものの『花戦さ』のような熱さがあまりないので、やや評価は低めです。ポイントはギリギリ平均以上ありますが。


■夫婦になってから恋愛するのも悪くないのかなぁ?

橘 律
橘 律
ラブストーリー担当
ポイント:198/333|評価:GOOD

現代では、好きな人と恋愛結婚するのが当たり前の文化となっていますが、昔は丸っきり違っていて、春のように突然縁談が決まる世界だったんだなぁと、しみじみとしてしまいました。

でも、それはそれで、人生の物語としては1つのアクセントなのかもしれませんね。

本作で描かれているように、夫婦になってから恋愛がはじまるのもありなのかなぁと、お見合い結婚もありかなぁと、思わず、行き遅れの自分の状況に照らし合わせて、最初から最後まで見てしまいました。

また、「夫婦としての絆がどうなるのか?」以外のお料理パートについては、歴史版『美味しんぼ』みたいな感じですね。ただし、海原雄山みたいに無茶苦茶言う人は登場しません……残念。


■歴史マニア垂涎の登場人物達!!

山守 秀久
山守 秀久
歴史好き代表
ポイント:243/333|評価:GOOD

歴史モノとしては、『武士の家計簿』に続き、かなり新しい視点から製作された映画と言えるでしょう。

実在の人物をモデルにしてはいますが、登場人物がどんな経歴で、どんな立場についていたのかを知っている方は、おそらく日本で1割ぐらいです。

冒頭でご紹介した『武士の家計簿』もそうでしたが、本作の登場人物をもし知っているとしたら、相当な歴史マニアだと言って差し支えないでしょう(笑)

ストーリー展開としては、ごくごく普通の流れを汲んだ作品ではありますが、こうしたまいなーな歴史上の人物に焦点を当てた映画は、私のようなマニアにとっては悦に浸れる部分はありました。

そういうところがマニアックな人間のダメ要素の一つなんでしょうが……


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

もう少し料理人としての仕事が見たかった

山守 秀久
山守 秀久
メインレビュアー
歴史好き代表/最高評価

例えるなら、有名俳優にスポットを当てるのではなく、彼ら彼女らを輝かせる照明さんにスポットを当てたような映画です。そこに家族愛、夫婦愛を混ぜ込んで、タイトル通り料理してみました、という内容になっています。

『武士の家計簿』と同じ脚本家の作品なので、書いた方は、こうした一般的には知られていない視点でから見る歴史話が好きなんだと思います。

歴史モノの新ジャンル誕生とまでは評価出来ませんが、歴史好きとしては、こういう試みは是非続けて頂きたいなと今後の作品も期待しています。

とはいえ、一般ウケするかと聞かれると少々回答に戸惑ってしまう話ではあります。

夫の安信が段々とやる気を出していき、妻の春は夫の成長を喜びつつも、突然の縁談だったがゆえの安信の自分の気持ちに対する不安を抱える。

冷静に分析すると、割かし良くある話なんです。歴史モノでかつ、マニアックな歴史上の人物を取り上げているから、物珍しさがある部分は認めざるを得ません。

歴史好きの人にとっては「うぁ~こんなマイナーなのも出て来るんだぁ」と、盛り上がれるかもしれませんが、全く興味がない人にとってはごくごく普通のお話という感想になっても決しておかしくありません。

そういった意味では、幾分中途半端なところもある映画ではあるでしょう。

どうせマイナー、マニアックな歴史上の人物を登場させるなら、いっそのこと振り切りに振り切って、夫婦愛、家族愛は必要最小限にしぼり、武士の世界にも料理担当者がいたんだよって話の中心にして欲しかったです。

監督や脚本家が表現したかったことはそこではなく、私が言っていることは微妙にズレているんでしょうが、真の意味で挑戦的な歴史モノには仕上がっていない気はしました。

もうツーパンチぐらい、武士でありながら料理人であるという役割を詳しく描写して欲しかったです。

エンターティメントとして作りあげるには無理難題を言っているのは理解していますが、縁の下の力持ち的な仕事にも絶対にドラマチックなエピソードがありますから。どんな仕事をしていても、物語の主役になれると私はそう考えています。

本作の名台詞

へへ……親子して死に損なったな

出典:武士の献立/VOD版

役名:舟木伝内
演:西田敏行