韓国映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』/犯罪グループに誘拐され、彼らによって育てられた少年の物語

スコア:660/999

ファイ 悪魔に育てられた少年出典:ショーボックス
『ファイ 悪魔に育てられた少年』


【あらすじ】

5人組の犯罪プロフェショナル集団のリーダーのソクテは、自らが誘拐した子供をファイと名付け数々の犯罪テクニックを教えながら育てていた。17歳になったファイはソクテに初めて人を殺すことをソクテに命令される。


【作品情報】

公開:2013年10月9日(韓国)|2014年4月19日/上映時間:126分/ジャンル:サスペンス/サブジャンル:クライムアクション/映倫区分:全年齢/製作国:韓国/言語:韓国語


【スタッフ】

(監督) チャン・ジュナン/(脚本)パク・チュソク/(音楽)モグ


【キャスト】

ヨ・ジング/キム・ユンソク/チョ・ジヌン/チャン・ヒョンソン/キム・ソンギュン/パク・ヘジュン/イム・ジウン/キム・ヨンミン/ナム・ジヒョン/ムン・ソングン


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※情報は【2020年07月02日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。

ポイントレビュー


■父親になったような気持ちで見てしまう

試分 書人
試文 書人
サスペンス担当
ポイント:229/333|評価:GOOD

しかしキツイ話ですな。実際に現実でも誘拐した子供を誘拐犯が育てていた事案が起きているだけに、あり得そうでもあるし……愛憎入り混じるとはまさにこういった状況を言うのであろう。そんな設定だから、気が付けばファイが映る度に「将来どうすんだろうこの子……」と、父親になったような気分で彼を見守るようになっていた。本作はフィクションだから普通に楽しめばいいのにね。あぁ父親になってみたい。いや、まず結婚したい。


■このタイプの韓国映画にしては意外な結末

山守 秀久
山守 秀久
アクション担当
ポイント:241/333|評価:GOOD

当時まだ15歳であったヨ・ジングが少年ながらにアクションシーンを頑張っています。大人に混じってこれだけの立ち回りが出来れば十分です。単に格闘をするだけであれば、ヘタをしたら登場人物のオッサン連中より強いのでしょうが、きっちり映画的なアクションをこなしています。ただ、如何にも韓国のクライムアクションといった趣きで話が進んでいく映画だったので、この手の韓国映画としてはあのラストは意外でした。


■リーダー役のキム・ユンソクの重厚な演技が凄い

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:190/333|評価:GOOD

当サイトで紹介したことがある『チェイサー』で主演を務めたキム・ユンソクが出ていますが、本作の役柄としては『哀しき獣』の役に近いです。しかし役者さんというのは凄い。同じ犯罪グループのリーダーを演じても全く違う性格に見えるんですから。韓国映画界での評価は良く知りませんが、名優だと思います。風格がヤバイですね。ストーリーがあってこその映画ですが、彼の存在感が本作に華を添えていたことは間違いありません。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

如何にも韓国映画っぽい作品……いや、そうでもない!

山守 秀久
山守 秀久
メインレビュアー
アクション担当/最高評価

後味が良いのか悪いのかの結論が出しにくい映画ではありましたが、数あるクライム系の韓国映画の中では良い部類に入るのではないでしょうか?

視聴前の私の結末予測を嘘偽りなく言わせて頂きますが、てっきり全員死ぬと思ってました。韓国映画はどうしてもそういう終わらせ方が好きなイメージがありましたので……私としては良い意味で裏切られた納得がいくラストでした。

正直言って、ファイが復讐モードに入った時に若干飽きが来たてしまっていたんです。教わった技術を元に自分を育てた誘拐組織に復讐していくのを見て終わりかと。アクション的には見続けられる映像ではあったのですが、ストーリーがお決まり通りとわかって見続けるのは幾らか辛いものがあります。

でも、フタを開けて見るとわずかに他作品と映画としての構造が違うんです。5人組の組織のメンバーの中で自分を可愛がってくれたメンバーとのシーンであったり、思ったよりも弱い対立組織の壊滅の仕方だったり、確かに韓国映画のレールの上は走っているんですけど、復讐モードに入るまでの伏線がしっかりしています。

こうした丁寧な伏線の張り方がこの先ひょっとしたら何かあるぞという、期待感を持続させてくれたので、おかげで復讐シーンにしっくり来ないことはほとんどなく、ラストまで一気に向かうことが出来ました。

これは日本で配信されている韓国映画に慣れてきてしまった人間にとっては希少な感覚なんです。特にこういった復讐劇の場合は伏線が適当なことが多くて、基本的に血で血を洗う感じにしとけばOKでしょうという作品がかなりあります。あまり見ていない頃はまだ良いのですが、何本も見続けてこのパターンを連発されるとウンザリしてきてしまう。

その点、本作は伏線と本線が絶妙のタイミングで繋がる、血で血を洗うだけで終わらせていません。血で血をすすぐとでも言いましょうか、視聴者としても理解が示せる映画としての帰結を、はっきりと示してくれます。

今思えば、ファイが怪物の幻覚に悩まされている描写がもっとも大事な伏線だったのです。最初見た時は心理描写の一手法かぐらいにしか考えていなかったのですが、実際はこの伏線から物語は始まり本線へと向かっていたのです。さらに言えば、あそこからは実はラストへの道は一直線の一本道しかなかったのです。

だから、あの最後の局面でソクテを撃てないと、ファイは彼を一生撃てません。彼は主人公ファイが見続けた幻覚の怪物の正体そのものなのです。

自分の人生を生きるためには、怪物を見ずに生きるためには疑似家族のこの父親から離脱しないといけません。ただ、ソクテに対して心の奥底では父性を感じてしまっているファイにとってそれは、自分が死ぬのと同じくらい辛い選択です。

そのことはソクテも分かっていて、とてもやるせないシーンでした。彼は「自分も怪物を見た」と言っていました。また、「怪物を見ないで済むようにお前を救ってやったんだ」みたいなことも彼は言います。

不器用で副題通りに悪魔のような男ですが、彼もまたファイを実の息子のように感じていることが表情からも読み取れます。言葉で煙に巻いて裏をかこうとしているわけではありません。いつでもファイを殺そうと思えば、殺せましたから。

本項を読んでいる方は見た方がほとんどだと思いますので、最後にファイがどうしたかをご存知でしょうから、私の言っている意味が多少はご理解頂けると思います。

私としてはラストはこの話の道筋で行くなら最高終着点だと考えています。いや、何度も言うようですが、韓国映画でこういう終わり方って本当に珍しいです。今まであんなに真っ暗闇の映画だったのに、エンドロール直前にパっと明るくなる感じって悪くありません。ここまで読み進めて、まだ未見だという方も少ないでしょうが、決して鬱な映画ではないので、よろしければ再生ボタンを押してみてください。

因みにですが、誘拐犯が誘拐した子供を育てるという作品は日本にも存在しています。『八日目の蝉』という作品です。こちらの作品も現代邦画の名作と言っても過言ではない内容になっています。

予想するに疑似親子関係というのは、物語として視聴者の心を掴みやすい設定なのでしょう。良いも悪いも関係なしに、親がいないとこの世に生まれてこれませんから……

ただし、こちらの作品については、誘拐の動悸も誘拐犯のその後の行動も本作とは全くかけ離れていますので、頭をリセットしてからご覧頂ければと思います。あれ?そう考えると余計な補足情報でしたね(笑)。

本作の名台詞

楽になったろ 怪物はもう見えない

出典:ファイ 悪魔に育てられた少年/VOD版

役名:ソクテ
演:キム・ユンソク