洋画『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』/お金儲けをしたせいでお金に困って、大変なことになりました

スコア:481/999

ビリオネア・ボーイズ・クラブ出典: ヴァーティカル・エンターテインメント
『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』


【あらすじ】

証券取引所で働くジョーは野心家の同級生ディーンと偶然再会し意気投合、若者達を誘い集め投資サークルを設立する。セレブとの交流で著名なロンの協力も取り付け、順調に組織を運営していたはずのジョーだったが……


【作品情報】

公開:2018年7月17日(アメリカVOD配信)|2018年8月17日(アメリカ)|2018年11月10日(日本)/上映時間:108分/ジャンル:サスペンスドラマ/サブジャンル:実話原作/映倫区分:PG12/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督) ジェームズ・コックス/(脚本) ジェームズ・コックス,キャプテン・モズナー/(音楽) ジョエル・J・リチャード


【キャスト】

アンセル・エルゴート/ タロン・エジャトン/ ケヴィン・スペイシー/ジェレミー・アーヴァイン/ケイリー・エルウィス


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ポイントレビュー


■作中アイテム「オピウム」についての補足説明もあるよ

試文 書人
試文 書人
サスペンス担当
ポイント:149/333|評価:BAD

色々とやらかしてしまってはいるけれど、ケヴィン・スペイシーが出ているサスペンス作品と聞けば、サスペンサー(ケヴィン・スペイシーが出てるサスペンスファン)としては見ないわけにはいもんでね。意気揚々と見てみたよ。でもこれはいけない。

前半はかなりイイ感じで知的な雰囲気なのに、後半はまるで別の映画。火曜サスペンス劇場の方がよっぽど筋がしっかりしてる。あれなら綺麗な崖も見られるしね。

真面目に期待を持ち過ぎた。金融だの金市場だの散々難しい話並べといて、結局はどうしようもなく衝動的なお話に持って行くんですかい。それでこのオチですかい。

人間なんてそんなもんなのは分かっているけどさ、せっかく映画なんだからか、もっとこうあるだろう。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』みたいな雰囲気と展開を期待して見るとバカを見るので、軽い気持ちで見るがいい。俺はこの作品に二度目はないがな!

え~八つ当たりみたいに偉そうな言い方してすみませんでした。お詫びに作中に出て来る薬物「オピウム」について説明します。うん、これを知っとかないと、どんな薬なのかわからないからね。ストーリーの中では、そんなに重要なアイテムってわけじゃないけど。

【オピウム】
簡単に言えば阿片(アヘン)のことだ!作中ではパイプで吸っていたから、それをさらに生成したモルヒネや、ヘロインではないな……そして、イヴ・サン=ローランが1977年に出した香水でもないぞ!ネットで検索すれば大体わかることだが、どうだ!恐れ入ったか!


■序盤はそこそこ良いので娯楽作として見れば……

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:191/333|評価:GOOD

日本人の感覚で見ると、甲子園の観戦のために集まったようなで会合で、大金の投資話をしている若者達の姿にまず驚かされると思います。

ただ、これはアメリカの方にとっては、ごく普通の感覚なのだそうで、日本の方が観賞する際には、原則的に投資が大好きで単純な貯金が嫌がる文化という点を心に留め置いておくのがよろしいのではないでしょうか?

こんなことありえないでしょ?という感覚のまま見続けていると、それだけで終わってしまう作品です。

しかしながら、肝心のストーリーも決して優秀作といった出来ではなく、かなり尻すぼみで荒っぽい作りになっているので、「アメリカ的な投資文化によって起きた出来事」という要素に惹かれるものがない方には、個人的には興味深い作品とは言い難いお話だと思います。

アメリカの投資文化の勉強になるかと言われても、そうでもない作品です。半実話作品としては少々もったいなく、娯楽作として見るなら、まぁまぁの出来といった印象でしたね。


■それなりの事件を元にしたそれなりの実話系サスペンス映画

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:141/333|評価:BAD

本作を最大限に楽しむために、私が一番オススメしたい視聴方法は、あらすじも読まず、CMも見ず、全く何も考えずに再生ボタンを押すことです。すでに、ここまで読んで下さっている方にとっては、何のアドバイスにもなっていませんが、まだ間に合います。見たいと思ったら、すぐ再生ボタンを押してください。

しかし、これは良い意味でそう言っているのではなく、消去法としての楽しみ方です。前情報があると、この手のジャンルが好きな方々にとっては、どうしても期待値が上がってしまいますからね。

無の境地で見始めればそれなりのサスペンス映画です。いえ、それなりよりほんの少し下かもしれません……これは思わぬところで点数を付けづらい作品に出会ってしまいました。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

実在の詐欺事件の事例記事を読んだ方がためになるのでは?

山守 秀久
山守 秀久
メインレビュアー
ドキュメンタリー担当/最低評価

1983年に実際にアメリカで起きた詐欺と殺人事件をモデルにした映画です。

本作品で使われた金儲けの手法とは手口が若干異なりますが、豊田商事事件を映画化したら、同じような作品になりそうな気がして、視聴中にいらない不安が常によぎる作品でした。

本作及び元となった事件で行われた詐欺は、ポンジ・スキーム(投資家から出資金を集め、集めた出資金の一部を配当金などの名目で再分配する手法)使っているので、どちらかと言えば、日本で起きた円天事件などがそれに近いのですが、円天の手口よりも雑で、詐欺としては若者らしい未熟さを感じます。

しかも攻略法詐欺(ギャンブルの攻略情報等を販売するのが有名)と合わせての運用となっているので、作中でもてはやされている程には、天才的かつ悪魔的なお金の儲け方とは言い難いところがあります。

事件当時は革新的な詐欺だったのかもしれませんが、お金を集めるだけで特別なことはせずに、それを浪費するだけというのは、冷静に考えれば始めた瞬間から終わりしか見えない詐欺ですから……

お金は集めただけでは何の価値も生まれません。集めたそれをどう増やすのかが投資の本分です。作中でも運営側である主人公達が(他人の)大金を手にしたあたりから雲行きが怪しくなってきますが、これも当然の話で、生産的なことを何もしていなければお金はただただ使われて無くなるだけです。

しかしながら、本作とよく似た詐欺は今も形を変えて多数存在しています。常に人を疑ってかかれとまでは言いませんが、「他人にうまい話を持ち掛けて来るバカはいない」と、毎朝唱えてから、一日の行動を取りましょう。

私は日米を問わず、実話をモデルにした作品は秀作である可能性が高く、逆に駄作と呼べるものはとことん駄作であるという認識を持っているのですが、個人的な見解としては、本作には凡作という三文判を押したくなる珍しいケースとなってしまいました。

学べるものをあえて挙げるとしたら、上記にあげた詐欺には気をつけようね程度のものです。終わりが見えているものを初めておいて、最終的に資金繰りに困ったら相続金目当ての殺人で解決なんて、知的犯罪者としては愚の骨頂です。

作中で主人公ジョーは天才的な人物として描かれていますが、これでは単なる神輿に担がれただけの小賢しい男にしか見えません。作中の描写が彼に変に同情的なのも気になりました。現在、収監されながら無罪を訴え続けているモデルとなった本人発案の企画映画だったんでしょうか?

補足情報としては、ケヴィン・スペイシーの例の疑惑事件が絡んでいた時期の公開作品でしたので、ひと悶着があったようで、「その疑惑が浮かぶ前に撮影を終えた作品だ」という理由公開に踏み切った貴重な作品ではあります。

海外の大手レビューサイトでも軒並み評価が低めなのは、この点も影響しているのかもしれませんが、私は作品のみのクオリティで判断したとしても凡作だと言ったと思います。

とにかく実話を映像化しておけば、何とかセンセーショナルさは醸し出せるだろうという判断で本作を発表したとしたら残念でなりませんが、実話を元に作品を創造するということは「事実は小説より奇なり」のパワーワードに挑むということに他なりません。

エンドロール前に登場人物達のその後を字幕で流すのが、このジャンルの映画の定番ですが、これをどんな気持ちで見るのかかが重要で、この部分が一番良かったシーンになってはいけないのです。

ついでにもう一つだけ……本作主演のアンセル・エルゴートが余りにも不運なので、ここでフォローをさせて下さい。

本当に彼には同情を禁じ得ません。出世作の『ベイビー・ドライバー』でもケヴィン・スペイシーと共演していますので、彼は何も悪くないのに出演作の露出の面でかなり苦労したことでしょう。

ただ、それが報われたのか『ウェスト・サイド・ストーリー』(ウエスト・サイド物語のリメイク)に主役のトニー役で出演しています。評判も上々のようで私はまだ見ていないので楽しみにしています。

また、新年に『TOKYO VICE』で共演した伊藤英明と彼の実家でおせちを食べるほど、日本を気に入ってくれているようです。いや、特段ご本人の大ファンというわけではありませんが、こういった明るい話は嬉しいものです。

本作の名台詞

金があるってことは 尊敬されることだ

出典:ビリオネア・ボーイズ・クラブ/VOD版

役名:ディーン・カーニー
演:タロン・エジャトン