洋画『グッドフェローズ』/作中当時にマフィアだった人物が太鼓判を押すほどのリアリティ

スコア:924/999

グッドフェローズ出典:ワーナー・ブラザース
『グッドフェローズ』


【あらすじ】

ニューヨークマフィアの準構成員であった実在の人物、ヘンリー・ヒルを主人公に、ルッケーゼ家の幹部ポーリーに仕える、ヘンリー、ジミー、トミーの3人の数奇な運命と、ヘンリーとその家族とのわだかまりを描く。


【作品情報】

公開:1990年9月19日(アメリカ)1990年10月13日(日本)/上映時間:145分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:マフィア映画/映倫区分:PG12/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督) マーティン・スコセッシ/(脚本) マーティン・スコセッシ, ニコラス・ピレッジ/(原作)ニコラス・ピレッジ『Wiseguy』


【キャスト】

レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ/ジョー・ペシ/ロレイン・ブラッコ/ポール・ソルヴィノ/サミュエル・L・ジャクソン/ヴィンセント・ギャロ


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※情報は【2022年11月4日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。

ポイントレビュー


■マフィア映画好きなら見なきゃダメ、ゼッタイ

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:309/333|評価:GOOD

見ていて清々しいぐらいのマフィアっぷり、ギャングっぷり、そして、アウトローっぷりです。マフィア映画やギャング映画は、大まかに区別すると「動の物語」と「静の物語」に二分することができますが、『ゴッドファーザー』が「静の物語」なら本作『グッドフェローズ』は「動の物語」にあたる作品です。

『ゴッドファーザー』も狂おしいほど好きな作品ですが、この『グッドフェローズ』も同じくらい好きです。実に甲乙つけがたい……といいますか、互いに全く違う魅力を持つ映画なので、そこを比較するのはあんまり意味がありませんね。

平泳ぎとクロールでタイム勝負をさせるようなものです。戦っている種目が全然違います。

自分の性格的に本当はあんまりこういう言い方はしたくないんですが、あえて言わせて頂くと、「マフィア映画好きならこの映画を見ないで一体何を見るんだい?」とキッパリ言い切れるほどの作品です。

もし、マフィアやギャング、ヤクザモノが好きだと周りに豪語しておきながら、本作品をまだ見ていないという方がいらっしゃいましたら、早急に再生ボタンを押して、ご視聴されることを強く推奨いたします。

マフィア映画ファンの友人などにバレたら大変なので、もちろんこっそりとですよ。悪事を働く時にこっそりと行動しなければならないのはマフィアも同じですからね。

彼らと同じような気分に浸りながら、視聴最高のマフィア映画を見るなんて、なかなかオツってもんじゃないですか。こっそり映画を見るのは悪いことじゃないですけどね(笑)


■トミーの小さな体に宿る凶暴性が怖すぎる

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:327/333|評価:GOOD

一年に一度は必ず見る映画です。何度見ても飽きず、何度見てもトミーがオシッコを漏らしてしまいそうなぐらいおそろしい。

彼を演じたジョー・ペシは、本作品の中という括りにおいては、あのマフィア映画界の重鎮ロバート・デ・ニーロ(本作ではジミー役)を完全に食ってしまったと言っても過言ではありません。

ジミー役のデニーロもヘンリー役のレイ・リオッタも抜群の演技力を発揮してはいるんですが、ジョー・ペシが演じた常に相手を畏怖させるトミー像の前にはやはり霞んで見えてしまう。

まさに裏の主役。もうこの映画自体が、展開、演出、その他もろもとを含めて完璧なのに、トミーの存在が彼の異常な暴力性さながらに、これでもかとダメ押し気味に畳みかけてきます。

ここまでやられると、無理にでもイチャモンを付けたくなるものですが、イチャモンの「イ」の字も沸いて出なくなってしまうほど、序盤からただただ見入ってしまう超名作です。


■トキメキとドキドキって本当に似てるんだね

橘 律
橘 律
女性代表?
ポイント:288/333|評価:GOOD

本来はこんな見方をしてはいけない映画なんでしょうけど、悪い男がモテる理由が本作品を見てようやくわかりました。

恋のトキメキと恐怖のドキドキを無意識に混同してしまうからなんですね。かの有名な『吊り橋効果』、私は間違ってないと思います。恋のトキメキなんてそう長くは続かないものですが、生命に関わるドキドキは生物である限り、心臓が止まるまで続くんです。

いやぁ羨ましいですねマフィア。やりたい放題やってるくせに、金はあるわ、女もいるわ、人気のレストランには並ばず入れるわで。

現実の世界では花より団子派の私としては、3つ目がもっとも重要なので、ヘンリー、ジミー、トミーの3人だったら、ヘンリーでいいかな。薬やってるのは嫌だけど。

なんて軽口を叩いておりますが、それはこの映画が怖かったからなんです。見ていて面白いのに怖いんです。ポップにジョーク混じりで描かれているのに、重厚なんです。コミカルなのにホラーなんです。

ここまで映画側の演出とは矛盾した感情が芽生えたのは初めてと言っていいかもしれないです。

そして何より本作品の怖ろしいところは、取り立てて衝撃のシーンや結末が用意されている作品ではないってこと。彼らはマフィアの準構成員なので、人を殴ったり、撃ったり、殺して埋めたりっていう場面はありますが、決して派手ではない。

でも、ドキドキが止まらない。彼らの歪んだ性質と開き直ったクズさへのトキメキが止まらない。

中高生の頃は別にヤンキーの先輩なんか興味なかったんですけどね。もしあの時、マフィアの先輩がいたら、やばかったかもしれません。

ただ、これは映画の世界の話ってエクスキューズがありますのでね。マフィアモノとしては珍しく美化しているところもあまりなくて、極めてリアルに描いているように見えたけど、現実はもっと泥臭くてヤバイ世界なんだろうな。

やっぱマフィアの男はやめときます。顔はジミーが好みなので、デニーロでいいです。中の人は沢山お金持ってるだろうし。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

限りなく等身大に近いマフィア像ここにあり!

近道 通
近道 通
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価

マフィアの上流層を描いた名作と言えば、『ゴットファーザー』ですが、下流層を描いた名作と言えば、この『グッドフェローズ』にとどめを刺すでしょう。

主人公クラスの3人は正式なマフィアではなく、準構成員です。日本で言えば、親分と盃を交わしたヤクザの下で働く不良みたいなものにあたります。

ですが、日本のそれとは違い、上納金さえ納めれば、比較的自由に動けるようで、かなり裕福に暮らしています(ただ、トミーはレストランのツケを支払わなかったり、しているので、ひょっとしたら貧乏かも)。

ただ、この裕福さが『ゴットファーザー』のような上品なものではないんですよ。例えばヘンリーが妻や愛人に与えたマンションや家具は、相当な値段がすると思われるんですが、こんな生活が送りたいとは素直に憧れられない下品さがある。

慎ましやかに暮らしている『ゴットファーザー』の方が余程憧れられます。映画を見て、ヴィト・コルリオーネみたいになりたいと思う男はいても、本作品のヘンリーやトミーみたいになりたいと思う男はほとんどいないんじゃないかな(ジミーは佇まい格好いいのでちょっとだけいるかも)。

もう、全然羨ましくないんです。お金があって、愛人がいて、街を肩で風を切って歩くなんて、男冥利に尽きる感じがしてもおかしくないんですが、逆にああはなりたくないと思ってしまう。

そういうマフィアの描き方が本作品の一番の魅力です。マフィアの世界なんて美しいもんじゃないよ。誰も信じられず、愛情も友情も確かめられず、空笑いを続けるしかない世界だよ。そう教えてくれます。

作中で、ヘンリーがトミーのジョークに対してわざとらしく大笑いするシーンがあるのですが、もうこれはそうした数々の描写の中でも際立って、彼らの浅ましさを表現していました。

ポイントレビューではトミー役のジョー・ペシばかりを褒めてしまいましたが、ヘンリー役のレイ・リオッタもやはり名優ですね。

決して『ゴッドファーザー』がマフィアを美化しているとは思いませんが、あの世界の真に迫っているのは本作品の方だと思います。

モノホンの元マフィア幹部が“Reddit”というサイト上で一般人から質問を受け付けた際に、「一番現実的なマフィアを描いているのは、『グッド・フェローズ』だ」と言っていたぐらいですから。

ただし、それに続けて、「ヘンリーはあんなに男らしいヤツじゃなかった」とも言っていたので、そこはビックリ。作中では結構ヘンリーってヘタレのヤク中のダメキャラ枠だったはずなんですが、現実のマフィアの世界では、あんなダメダメな映画の中のヘンリーみたいな奴でも男らしい扱いなんですね。

とはいえ、映画の中のヘンリーは一番格下っぽいポジションでありながら、ジミーとトミーという凶暴な二人とほぼ対等に渡りあってはいたので、そこは男らしいと言えば男らしいのかもしれません。あの二人に長い間付き合って命があるって、相当なポテンシャルがないと無理です。

いや、マジで嫌ですね。ヘンリーのようにあの二人に囲まれて生活していくんだったら、まだ彼らに即行で殺されて地獄に行った方がマシまである。

手に汗握る緊張感というよりは、額に冷汗をかくような緊張感。その原因の大元は、ほとんどこの二人(ジミーとトミー)にあって、作中でも主人公ヘンリーは狂言回し的な存在に落ち着いてはいますが、同時に一番不幸な存在でもあるなと心から思います。

多分、三人の中でヘンリーはダントツでマフィアに向いてないです。そして、ジミーはマフィアにしか向いてない。トミーは人間に向いてない。

そういう各々の個性を含め、当時の下層マフィアの現実を描いたこの作品を見ずして、マフィア映画は語れません。

また、マフィア映画を極端に嫌ってでもいない限りは、特別好きなジャンルではない方にもオススメ出来る作品です。本作はマフィア映画の入門編であり、基本編であり、応用編でもある完全無欠の作品ですから、どんな好みの方でもお楽しみ頂けると思います。

ただ、ヘタしたら、映画を見終わった後に「グッドフェローズ 〇〇」でググったりしたくなっちゃうかもしれませんので、ハマり過ぎはご注意を。

この映画まわりのことをあんまり調べ過ぎると、トミー役のあのジョー・ペシが、『ホームアローン』であのドジっ子泥棒役をやっていたなんてことまでわかちゃいますから。さらには、アメリカでの公開がこの二作品は同じ年で結構公開日が近かったってことまで……

おそらく何処かの誰かが「同じファミリーモノだから平気平気」なんて冗談を言いながら封切ったんでしょうけど、ファミリーの意味が全然違うでしょうに。

当時『グッドフェローズ』と『ホームアローン』を二本立てで見た方は一体どんな感想を持ったんでしょうかね……

本作の名台詞

まともな稼業はアホだ

出典:グッドフェローズ/VOD版

役名:ヘンリー・ヒル
演:レイ・リオッタ