邦画『ちょっと今から仕事やめてくる』/ブラック企業に勤めて良かったのはアイツに出会えたことぐらい

スコア:509/999

ちょっと今から仕事やめてくる出典:東宝
『ちょっと今から仕事やめてくる』


【あらすじ】

ブラック企業に勤める青山は上司からのパワハラと長時間労働に疲弊し、ホームで無意識に飛び込み自殺を図る。だが、間一髪で小学校時代の同級生を名乗るヤマモトに助けられ、彼との交流を通して次第に成長していく。


【作品情報】

公開:2017年5月27日(日本)/上映時間:113分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:ヒューマンドラマ/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督)成島出/(脚本) 成島出,多和田久美/(音楽)安川午朗/(主題歌)コブクロ『心』/(原作)北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』


【キャスト】

福士蒼汰/工藤阿須加/黒木華/小池栄子/森口瑤子/池田成志/吉田鋼太郎


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ポイントレビュー


■ブラック企業の上司役を吉田鋼太郎が熱演!!

アクセル神田
試文 書人
ドラマ担当
ポイント:169/333|評価:GOOD

パワハラ上司を演じる吉田鋼太郎が抜群の演技を見せてくれます。『おっさんずラブ』の時のあの純粋で愛らしい姿からは、微塵も想像できないほどの最悪のクズ上司っぷり。今の時代でこそ、ああいった暴君は世間的にやり玉にあげられるようになりましたが、私が新卒で入った会社では似たような光景が繰り広げられていましたね。

吉田鋼太郎の熱演が余りに目立つので多少話のテーマが頭に入って来ない部分はありましたが、あのリアリティはブラック企業に勤めたことがある人なら、「あったあった」頷けるところでしょう。もし視聴者が営業部に所属した経験がある方だったとしたら、なおのことそうです。トラウマが蘇ってしまう可能性さえあります。

でも、多分こうも思うんじゃないでしょうかね?リアルだけど、自分はこれよりもっと酷かったって……

うん、そんな「ブラック経験者あるある」が散りばめられている映画なので、私としては本筋の背景的なものばかりに目がいってしまって、心から楽しめたとは言いにくいですね。

見やすい話ではあったのですが、私には青山の命を救ったこと以外に、登場人物としてのヤマモトの存在意義を感じることは出来ませんでした。本作については、もっとブラック企業問題について突き詰めていくお話の方が良かったんじゃないかと思うほどです。

ブラック企業の方じゃなくて、そこに良いようにやられている青山自身が色々反省してしまっていますからね。悪くはないんですけど、日本企業の悪しき風習に正面切ってメンチを切っていく話ではなかったのは少し残念でした。


■スカッとする話ではなかったが、これはこれでOK

試分 書人
試文 書人
サスペンス担当
ポイント:169/333|評価:GOOD

ヤマモト(福士蒼汰)のような飄々とした人間に諭されると、何もかもを真っさらにしてリスタート出来そうな気持ちになるのは凄くわかる。だが、現実の世界ではそんな人物と出会える可能性なんて、小数点の後に限りなくゼロを並べたあとの1に等しい可能性がないのが悲しいところ。

本作は、選んでいる社会的な題材もいいし、リズムよくお話も進んでいくんだけど、まぁだけど、こんなのって映画の中だけの世界だよね……という元も子もない感想が拭い切れないままで終わってしまうので、不完全燃焼さはあった。

本作のキャッチコピーは、「スカッとできて最後は泣ける」らしいんだけど、ミステリアスなヤマモトとの自分を取り戻そうとしている青山交遊シーンは、温かい気持ちにはなっても、そこで泣けはしなかったし、ラストもスカッとはしなかったな。むしろ逆でモヤッとしてしまった。

青山が最終的に出した答えは、『スカッとジャパン』の馬場課長の「はい論破!!」に対する反論にさえなってない。なので同番組のようなスカッとさを求めて本作を選んだ場合は、注意がいるだろう。

と、ここまで言いつつも、実はそこまで嫌いな作品じゃない。こうでも綺麗にまとめておかないと、映画の世界に現実逃避しようなんて誰も思わなくなっちゃうからね。そう、飴と鞭よ。飴と鞭。現実の世界だって、想像の世界だって、どっちかだけじゃダメなんだよね。

一応、本作は両方を兼ね備えているお話ではあるので、一定の評価はしたいと思う。ええ、ぼちぼちポチッと再生ボタンを押す価値はある作品ですな。


■黒木華ってジェニファー・ローレンスっぽくないですか?

橘 律
橘 律
20代々表
ポイント:171/333|評価:GOOD

本作での私のお気に入りキャラは、黒木華演じる青山君の先輩こと五十嵐美紀です。もしかしたらこれは私だけかもしれないんですけど、黒木華とジェニファー・ローレンスって何か似てません?雰囲気とか表情の作り方とか、純朴ぽい顔立ちとか。

本作視聴中にそればっかりに注目していたから、映画は気が付いた時にはもうエンドロールだったんですけど、本作を見たことで私の脳内では黒木華は和製ジェニファー・ローレンス。ジェニファー・ローレンスは、洋製黒木華ということでカタが尽いたので、幸せです。ええ、面白かったですよ。

あんな感じの先輩は学生時代から良くいましたからね。異性に対してあそこまでやる人ってのは見たことないですけど、女って結果が求められる世界では、意外と白々しいところがあったりします。

例えば、期末試験の当日、「やば~い休憩に漫画読んでたらそのまま寝ちゃったぁ」とか、「あぁん、今日の試験科目間違えちゃった、てへ」みたいなこと言う子って必ずいたじゃないですか?あれ99%嘘ですから。めっちゃ目の下にクマ作ってるし、後者に至っては、試験最終日に言ったりしてますから。エクスキューズと油断を呼びたいだけなんですよ。

でも、こういう身の丈に合わない白々しさで結果を残そうとする姿って何だか可愛らしいですよね。だから作中の五十嵐美紀の行動も許してあげようと思います。因みに私は、堂々と「勉強めっちゃしてきたぁ~」と言って赤点ギリギリのタイプでした。あれ?何の話してたんだっけ?


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

終盤を適当にまとめてなければワンチャンあったのに……

橘 律
橘 律
メインレビュアー
サスペンス担当/最高評価

くっそ~!

途中から結構適当に見ちゃってたから、「これで私達お揃いだね」って感じに適当にポイントレビューを書いたバチが当たってしまった……

いや、っていうのは嘘で、実際は真面目に見てはいたんですよ。でも本作って、全体像をよ~く考察してみると、そこまで深みがあるようなお話ではないんですよね。それが本作の魅力でもあり、同時に欠点でもあるんですけど、何だかなぁ……本作はその核心となる部分が一貫して適当なんです。

作中で唯一の謎キャラであるヤマモトの正体を知ったことで、青山がどう考え、どう変わっていくのかが話の肝のハズなのに、全部適当に終わらせちゃってる。挙句の果てにはサスペンスでは究極の禁じ手である「双子オチ」を使う始末。ありゃりゃのりゃーです。

ぶっちゃけ嫌な予兆は端々に見えていたんですよ。

何か興味深いシーンってブラック企業で働いている場面だけだなぁって。アオヤマとヤマモトが二人で過ごすシーンはいいから、会社のシーン早く映してくれないかなぁって。二人が巡り合ってからは、ところどころでそんなシーンが見受けられました。

ヤマモトが青山に言っていることって、何だかんだ言って普通なんですよ。特段ぶっ飛んたことを言っているわけじゃないんです。

「転職も視野に入れて頑張ってみたら?」とか「死ぬぐらいなら辞めたら?」とか、そんなのわかりきってることだし、そういう一般論すらも考えられないぐらい追い詰められているから、青山は吸い込まれるように電車に向かって横倒れに落ちようとしたわけで……

なんでこの人は知恵袋で質問すればすぐにでも返って来そうな回答しかしないんだろう?つまんない人……って、一瞬そう思ってしまったぐらい普通のことしか言いません。

そんな風に思いながら見ていたこともあって、ヤマモトの正体は割とどうでもいいかなと、私自身も二人の交流シーンは適当に見るようになってしまいました。

そして終盤、私の勘は私の心の中で見事に的中します。

サスペンスパートのオチの前に、青山が彼についてネットで調べた時、ヤマモトなる人物はすでに過労自殺で死んでいることが発覚するシーンがあるんですけど、ネット上にアップされている写真が、ヤマモト(自分を救ってくれたヤマモト)とそっくりなので、その前に霊園に向かうヤマモトを偶然見かけていたことも手伝って、青山は、「ヤマモトはもしかしたら幽霊かも」っていう素っ頓狂な推測を立てちゃうんです。

いやいやいや、正体を偽る可笑しなヤツ的な描写はあったけど、幽霊ぽっさはなかったよね?まだあり得て、成りすまし整形でしょ。それでもかなり苦しいけど、どんだけ疲れてるんですか青山君……

勤め先のブラック企業で上司の山上からやり込められたり、私の作中のお気に入り人物でもある五十嵐に貶められたり、そういうシーンはあんなにも丁寧に描いているのに、映画としてもっとも大事な結論部分が適当過ぎて、伏線が無駄になっちゃってるんです。

色々あったけど、ヤマモトに詳しい人に聞いてみたら、結局彼は幽霊じゃなくて孤児院出身の生きた人間。過労死で亡くなった山本純に似ていたのは、彼がヤマモトの双子の弟の優だからでした。ちゃんちゃん。って言われたって、こっちは何を思えばいいのかわかりません。

そっか、それでヤマモトは何かとアオヤマを助けてくれたんだ。ヤマモトもヤマモトで山本純に対するけじめを付けたかったんだね。だから、ヤマモトは自分のやりたいことが出来るバヌアツ共和国に戻っていったんだ。そうだね、そりゃアオヤマもヤマモトを追いかけて、バヌアツで働こうって思っちゃうよね……

いやいや、どう考えても視聴者はこうは思えないですよ。

これ、ブラック企業に勤める若者が「働くということ」について見つめ直す話じゃなかったんだ……そう思った瞬間が私は割かし早かったので、本作を娯楽作とて楽しむことは出来ましたけど、結末自体はこんな感じでダメダメな気がしましたね。

いや、マジでブラック企業の話は一体どこに消えたんでしょう?

間接的にでもいいから作品としてこういう企業を糾弾しなくていいの?「会社なんてそんなもんだよ」っていう日本特有の一般論を打ち破るために、山本優っていう不思議くんを青山に絡めたのだとばかり思っていたけど、本作はつまるところ、ヤマモトの正体を追うことが最終目的の娯楽サスペンスなんですよね。

主演が青山演じる工藤阿須加じゃなくて、ヤマモト演じる福士蒼汰と表記されていたこともこれで納得がいきました。これはヤマモトの物語なんです。

ブラック企業に勤める人間の再生を描くという意味では、似たような題材の『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』より幾分マシでしたけど、本作に目立った目新しい部分があったかと聞かれれば、それはほとんどありませんでしたし、如何にも日本的な希望を持って生きてさえすればいい的なラストにゲンナリもしてしまいました。

極端に言ってしまえばこのお話って、日本のブラック企業なんてどうにも出来ないんだから海外で働いて子供達の笑顔に癒されつつ、やりがいを持って生きようぜ!ってことですよね?

日本はブラック企業に勤めてる人達自身が、図らずもブラック企業を支えてしまっている側面がありますから、フィクションの世界であっても、戦うだけ無駄っていう結論になってしまうのも分かる気がします。

本作で上司の山上や先輩の五十嵐が出ているシーンが、まるでブラック企業疑似体験のように私の目に映ったのは、もしかしたら本作がそんな現実を舞台裏で伝えようとしていたからかも知れません。そう思い直せば、深い作品ではあるのかな?

結末は案外でしたけど、もしも誰かに本作の感想を尋ねられたら、「悪くはないですね」と言えるくらいには楽しめた話ではありました。ただ、「悪くなかったですね」って言ってあげる水準には、今一歩届かずといったところでしょうか。ノルマ達成のため、取引先からは是非とも下のお言葉を頂きたいものです。ビジネス会話って難しいですね。

本作の名台詞

体が鉛のように重い… 休みたい… 眠りたい… もう 疲れた……

出典:ちょっと今から仕事やめてくる/VOD版

役名:青山陸
演:工藤阿須加