スコア:274/999
出典:エネサイ
『子宮に沈める』
【あらすじ】
二人の子供達への良き母親であった由希子だったが、夫との不仲が原因で次第に母親としての自分を見失っていく。実際に起こったの悲惨なネグレクト事件『大阪2児餓死事件』がモチーフ。果たして母性とは?女性とは?
【作品情報】
公開:2013年11月9日(日本)/上映時間:95分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:実話原作/映倫区分:NR(15歳未満非推奨)/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督・脚本)緒方貴臣/(音楽)田中マコト
【キャスト】
伊澤恵美子/土屋希乃/土屋瑛輝/辰巳蒼生/仁科百華/田中稔彦
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※情報は【2022年11月4日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。
ポイントレビュー
■この題材を選ぶのであれば、もっと勇気が欲しかった
ポイント:108/333|評価:BAD
出だしから話の作りが、母親の由希子の心情に特化し過ぎていて、何が言いたいのかが分からないです。家族内での夫の立ち位置も分からないまま、気が付いたらシングルマザー化しています。
こういう状況のお母さん沢山いると思いますよ。なぜ、この様な最悪の結果になったかのバックボーンを描かないと全然意味がないと思うんですよね。
見る前から映画を楽しむという気分で見られるようなものではないと分ってはいましたが、終始とつとつと小さなエピソードを並べたてられるだけの作品なので、伝わってくるものが少ないんです。
批判的に評価されやすい題材なのは理解できるのですが、それだけに大きな勇気が欲しかったです。冷静に見返すと、あの事件とあんまり関係ないですから……このお話。亡くなってしまった子供達が悲惨だったってことを映像にして映したかっただけの作品になってしまっているんです。
その映し方は上手かったといえば、上手かったのかもしれませんが、いやそれは事件を知っている人にはだいたいわかっているし……繰り返しで申し訳ないんですが、映画として何を伝えたかったんでしょう。
それが、とにかく辛かったですね。目を当てたくない部分だけがピックアップされていますから。
■実在の事件を元ネタにすることの難しさ
ポイント:65/333|評価:BAD
褒めたいのは子役の演技ぐらいでしょうか……
元ネタが実際に起きた出来事の場合、映画化する必要があるか、ないかという議論は起きて当然なのですが、それって結局は製作側の力量次第で、世論が変わることも多く、何とも結論が出にくい話ではあります。
元ネタとなった事件を問わず、自分自身が実在の事件の当事者だったら、どんな気持ちになるか想像も出来ません。当事者じゃないからこそ、残酷にも数々の実話を題材にした作品を見ることを楽しみにしてしまうことも出来るわけでして……
ただ、覚悟を決めて言えば、この描き方はダメだと思います。何らかの期待を抱いて見ておきながら、人として卑怯な言い方と取られるかもしれませんが、これは視聴者が傷つくだけです。
好みの問題ではあると思うんですが、すみません。なんとも評価したくない作品です。
■センセーショナルな事件を取り扱いたかっただけ?
ポイント:101/333|評価:BAD
実際起こった事件がベースな上に、ドキュメンタリータッチなので、純粋に映画として見るのが非常に厳しい話でした。全てが作り話であって欲しいなと……見ている間の気分は良くありません。
事件を知っている人なら、お話の着地点がわかっている話ではありますしね。
ただ、唯一の救いは作中の母としての苦しみの描き方がかなり偏っているので、同情する気も起きなければ、退屈にさえ思わせてくれるところ。
母親として子育てが心を壊してしまうほどに重荷で、退屈だということを描きたいならそれでも構わないんですが、あれだけの事件の闇を描き切れてはいません。ただ、センセーショナルな事件を映画にしてみたというようにしか私には感じられました。
物語の主題に関わるひとつひとつのエピソードが尻切れとんぼで、響くものはなかったですね。題名の『子宮に沈める』は何処か胸に刺さるものがありましたが、これを見るくらいなら、ニュース記事などで事件についての詳細を知る方が、母として考えさせられるものがあるんじゃないかなというのが率直な感想でした。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
レビュアーとして覚悟を持って推薦したくない作品
メインレビュアー
ドキュメンタリー担当/最低評価本作品のメインレビューは出来ることなら担当したくありませんでした……
映画全体のムードとしては、同じく実在のネグレクト事件(育児放棄事件)をモチーフにした『誰も知らない』(巣鴨子供置き去り事件)に良く似ています。
同作と同様に本作の子役たちの演技は非常に自然です。ことに小さな子供二人だけで部屋に放置されている時期は、まるで育児放棄されている様子を覗き見ているような気分になります。胸が痛かったです。
自分の心情を含めてレビューすると、かなりエモーショナルな話になってしまうので、純粋な映画としてレビューさせて頂きます。
まず、暗転が多過ぎです。暗転が多い映画というのは、話の繋がりよりも映したい映像を最優先している映画だと私は思っています。
本作では中盤あたりから、放置された子供たちの映像ばかりが映し出されます。放置された子供たちが追い詰められている様子が淡々と流れる。
これを見て抱ける感想は「可哀そう……」これしかないんです。だから何だか拷問を受けてるような気分になってしまう。
2時間もない映画なんですが、時間が経つのが凄く遅いです。「早く終わって欲しい」見ている間、そればっかり考えていました。
終盤になると、母親の表情は意図的にほとんど映されなくなり、無感情で無機質な存在として描かれるんですが、彼女がそこに至った理由がモヤっとしているので、その演出も効いてきません。
なのでさっさと目の前の子供が救われるラストを映し出して欲しい気持ちになってくる。嘘でもいいから、お願いだからという感じで……
そうなんです。元ネタとなった事件の結末を知っているこちらは、そういう心の流れになってしまうから話が全然入って来ないんです。母親のキャラクター性にバックボーンが全くありません。子供たちが朽ちていく様をただ眺めさせられるだけの残酷な観察映画になってしまっている。
置き去りにされる子供側の視点で描いたという作品ですらありません。ただ見せられる。
事件の悲惨さを伝える意図でこのような構成になったのかもしれませんが、映画を見ている気分になれませんでした。後味が悪いとか、もうそういう次元じゃないんです。
「観客にそう思わせることが本作品の狙いなんですよ」と言われてしまえば、「あぁそうですか……」としか言いようがないのですが、私はこれを評価したくないです。ラストなんて酷いです。
ただ、そう思えただけでも、見る価値はあったかもしれません。見て見ないことには判断出来ませんから……
レビュアーの一人として、覚悟を持ってオススメしたくない映画です。キツかったです。本当に。
本作の名台詞
ママ遅いよ
出典:子宮に沈める/VOD版
役名:幸(娘)
演:土屋希乃