洋画『フード・インク』/私達の食べ物は、一体どんなもので一体どんなところから来るの?

スコア:766/999

フード・インク出典:アンプラグド
『フード・インク』


【あらすじ】

アメリカの巨大食品企業と農畜産業の闇に迫る。なぜ同国の貧困層は肥満が多いのか?なぜ食中毒がこれほどまでに広がるのか?トウモロコシと大豆の秘密などなど、アメリカの食の問題を取り扱ったドキュメンタリー。


【作品情報】

公開:2008年9月7日(カナダ)|2009年6月12日(日本)|2011年1月22日/上映時間:94分/ジャンル:ドキュメンタリー/ビジネス/映倫区分:全年齢/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督) ロバート・ケナー/(脚本) ロバート・ケナー,エリス・ピアルスタイン,キム・ロバーツ/(音楽)マーク・アドラー


【キャスト】

エリック・シュローサー/T・ルース/他、多数の農畜産業関係者


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※情報は【2020年02月10日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。

ポイントレビュー


■テンポが良すぎるのが裏目に出ることも……

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:247/333|評価:GOOD

初公開が10年以上前のドキュメンタリーですので、現在のアメリカの状況とはかけ離れている点はあると思います。

今のアメリカの食品がこの頃より良くなっているのか、それとも悪くなっているのかはわかりませんが、本作を見た当時の若者達が「何とかしなければ!」と立ち上がってくれていたら、きっと今は改善されているでしょう。

それぐらい説得力のある作品ですが、一方で難点もありました。

話が進むテンポが速い上に提供される情報量が多いので、一度見ただけでは7割ぐらいのしか、この問題の本質が私に伝わってきませんでした。

勉強がてら、二度目の視聴をしたところ9割ぐらいの理解を得ることが出来ましたが、ドキュメンタリーを二度見るすることのは、私のような当ジャンルがよっぽど好きな人間に限られます。

本作品ほどの内容であれば、120分ぐらい使っても良かったと思います。少なくとも、私はもう少し見ていたかったです。特に初見時は字幕を追うだけで必死でした。一回の視聴で観客の知的好奇心を満たすことが求められるジャンルだけに、そこだけが非常に残念な作品です。

頭もいいし、説明も上手なんですけど、ちょっと早口な営業マンみたいなドキュメンタリー映画でした。


■身近なものにこそ疑問を持つことが大事

猿渡 りん子
猿渡 りん子
お母さん代表
ポイント:282/333|評価:GOOD

「私達は一体どんなものを食べさせられているの?どうしてそれを食べさせられることになったの?」

私が思う、このドキュメンタリーの主題はこれです。

こう書いてみると、子供が親にぶつけてくる疑問とちょっと似てるんですよね。たとえ子供が嫌いな食べ物であっても、健康に良いと思われるもの(例えば野菜等)は、大抵の親は心を鬼にして食卓に並べます。

そうすると、子供が言うんですよね。「どうして、ピーマンはこんなに苦いくてマズイの?どうして、こんなものを食べなきゃいけないの?」って。

わが子の健康のためにやっていることですから、この映画で啓蒙したかったこととは、本質的には真逆なのですが、なかなかどうしてこれも回答に困ってしまう。

親はそれについて、「大きくなるためだよ」や「体にいいからだよ」とメールで定型文を送るみたいに返すしかない(私だけかもしれませんが)。

でも、このドキュメンタリーは理論的にちゃんとテーマについて回答しています。話は複雑でしたが、最終的にはなるほどと合点がいきました。そして、子供の方がよっぽど、目の前のことに疑問を持って生きているってことに気が付きました。

何にでも疑問を持ってそれについて深く考察するってとても大事なことだと思います。そして、この映画のように、その考察を元にまだそのことを知らない人々に問題提起することはもっと大事なことです。

「そうだ!私もこの映画をきっかけに子供のためにピーマンの良さについて調べてみよう!」と、一瞬だけでも私にこう思わせてくれた本作は、ドキュメンタリーとして非常に優秀な作品なんだと思います。

ただ、問題は私も子供と同じくピーマンが嫌いって事なんですよねぇ……子供の手前、我慢して食べますが、どうもあの苦みだけは慣れません。


■片側の意見しか聞けないのは判断に困る

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:237/333|評価:GOOD

背筋を正して見るようなドキュメンタリー。全く奇をてらってはいません。調査や取材でわかったことを、淡々と視聴者に伝えていく。これぞまさに王道です。これでいいんです。

ドキュメンタリーってものは、何でもかんでも体験して、それをレポートすりゃいいっていう単純なものじゃない。客観性が必要なんです。『食品』というジャンルがメインの作品にしては、視点はかなり中立的な作品だと思います。あくまで同ジャンルにしては……ですが。

ただ、気になる点が一つだけ。それは農畜産系の大企業側は一度も取材に応じなかったせいで、片側だけの意見しか聞けなかったこと。これでは客観的中立性を保つには限界があります。

大手スーパーのウォルマートはある程度の目論見があるにしろ、あれだけ作中で批判されながらも勇気を出して出演したのに……ほぼ全編を通して片側(批判側)の意見だけしか聞けない作品になってしまっている。そこがちょっぴりモヤっとしました。

とはいえ、そんな状況でも思想の押し付けが薄めの作品に仕上げ切ったのは評価に値します。ちゃんとアポ取ってるんだから、企業側も理論武装して、きちんと反論すればよいのにね。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

トウモロコシの万能感に頭をコーンとやられる(※)

猿渡 りん子
猿渡 りん子
メインレビュアー
お母さん代表/最高評価

タイトルとジャケットだけを見て、公開当時流行っていた「肉をやめて野菜だけで生きていこう。その方が食料は枯渇しない」みたいなドキュメンタリーなんじゃないかと、私は勝手に思い込んでしまっていたんですが、全然違う話でしたね。

肉をやめて野菜を増やそうの理論はうろ覚えではありますけど、肉を食べるのを諦めるて作物を野菜に絞ると、敷地当たりで養える人間の数が圧倒的に増えるんだそうで、その時は妙に感心したもんです。

もう10年以上前の流行なので、ひょっとしたら微妙に時期がズレてしまっているかもしれませんが……

ただ、出産を境にお肉大好き人間に変貌したので、今となってはそんな気持ち一切消え去ってしまいました。

なんてたって、美味しいですもんお肉。焼肉なんてハラミなんてネーミングのくせに脂肪分が少ないってんだから、もうそのウッカリ感も可愛くて食べちゃいたいぐらい……って、ただ単に思うだけじゃなく、普通に行動にも移します。

本作品でも食料の枯渇問題にさらっと触れていますが、それが主題ではないですね。あなたのお口に入るものが、どんなものなのか?この貴重な食料を全部大企業に支配されている状況で大丈夫なのか?といった取り扱い方です。

もっとも道徳を失ってはいけない業界が、もっとも不道徳であり、そもそも消費者がこうした問題について関心を持ちにくいのを利用して、このまま消費者に気づかせないようにその状態を維持しようとしている。

日本でも今でこそ、無農薬やら、産地やらを気にするようになっていますが、私が小学生ぐらいの時は何にもそんなこと言われませんでしたからね。

「灯台下暗し」とはまさにこのことで、身近にあるものほど、それに対して何の疑問も持ちにくいんです。テキストレビューでも書きましたが、その点では子供の方がずっと当たり前のことに疑問を持って生きています。

O157で子供を亡くしたお母様のエピソードは大変気の毒に思いますが、何かが起きてから、ようやっと疑問を抱く、おそらくこれは大人の本能なんです。

だからこそ、こうしたドキュメンタリーを長い年月をかけて製作しようと思った人々の疑念の抱き方には、尊敬の念しかありません。

ひときわ際立って泡を食わされたのが、トウモロコシの存在。子持ちの身としては、病原性大腸菌O-157で亡くなってしまった小さな男の子をもっと取り上げたかったんですが、インパクトが半端なかったので、自分の感想に正直にいきたいと思います。

あの……トウモロコシって、凄く消化が悪いイメージありませんか?

少なくとも私は動物がそれを食べて病的に早く成長するなんて想像もしていませんでした。飼料にするとやっぱり違うんですかね。

しかも、飼料以外のものでも、原料としても使われていないものがないってぐらい、アメリカでは利用されている野菜なんだそうで、本作品で訴えていることが仮に全て本当だとしたら、この時のアメリカはトウモロコシに全て支配されていると言っても過言ではありません。

まさか薬品の原料(作中では鎮痛剤が例に挙げられています)にまでなっているとは思いもよりませんでしたし、家畜の主食を普通の草などの飼料から補助金のおかげで安価で仕入れられるようになったトウモロコシに切り替えたことで、家畜達の健康状態が悪くなり、抗生物質を打って育てなければならなくなった。

結果、その肉を食べた人間もまた体調を崩してしまうという……まぁ、なんというトウモロコシを頂点にした負の食物連鎖でしょう。もしもその体調を崩した人間を治す薬の原料がトウモロコシだったりしたら、悪い冗談もいいとこです。

この映画からは、他にも様々な興味深い知識を得ることが出来ましたが、やはりこのトウモロコシの衝撃にはどれも敵いません。

ドキュメンタリーは年月が経つに連れて、現状から離れてしまう、旬が短いジャンルですが、願わくばこの問題がアメリカですでに解決されていて、旬が過ぎた作品になっていることを祈るばかりです。

確かに描き方に多少偏りはありますが、なんの偏りもないドキュメンタリーなんて存在しないですもんね。

あと、全然本作品と関係ない話になっちゃいますが、SFチックなものが大好きな私が、現実世界の塊みたいなジャンルであるドキュメンタリーを高く評価するのって不思議な現象です。

人間は結構極端な生き物なのかもしれません。だからきっと、トウモロコシの件でも極端になってしまったんでしょう。って、こじ付けもいいところか……

でもガチで凄いなトウモロコシ。乾電池の原料にもなるんですって。一体何なの?粒々なだけのくせして!そっち方面にも手をだせるのかい!

ただし、トウモロコシに罪は一切ないことだけは付け加えさせて頂きます。悪いのはそれを正しく扱わない一部の人間です。

※レビュータイトルにしょうもない親父ギャグを入れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。作中ではずっとコーンと字幕で書かれていたので、どうしても使いたくてこれしか思い浮かばなかったんです……深くお詫び申し上げます。

本作の名台詞

現在 米国の農地の約30%はコーン畑だ

出典:フード・インク/VOD版

出演:T・ルース
役職:コーン生産者協会 副会長