洋画『スーパーサイズ・ミー2:ホーリーチキン!』/ファストフード業界における「健康的」っていう定義は凄く難しいよね

スコア:623/999

スーパーサイズ・ミー2:ホーリーチキン!出典: Samuel Goldwyn Films
『スーパーサイズ・ミー2:ホーリーチキン!』


【あらすじ】

『スーパーサイズ・ミー』でお馴染みのモーガン・スパーロックが12年ぶりにファストフード業界の闇に迫る。今回の体験はファストフード店を自らが起業してみる事。体験型ドキュメンタリーの巨匠が出した答えとは?


【作品情報】

公開:2019年9月19日(アメリカ)|不明(日本)/上映時間:93分/ジャンル:ドキュメンタリー/サブジャンル:ビジネス/映倫区分:NR/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督)モーガン・スパーロック/(脚本)ジェレミー・チルニック,モーガン・スパーロック


【キャスト】

モーガン・スパーロック他、養鶏関係の方々


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ポイントレビュー


■ドキュメンタリー作品としての結論がハッキリしている

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:191/333|評価:GOOD

間違いなく『スーパーサイズ・ミー』より切り口が面白いです。監督のモーガン・スパーロックがなぜここまでファストフード業界に思い入れがあるのかは謎のままですが、分かりやすく、前作よりはずっとドキュメンタリーしています。監督としては『ボーリング・フォー・コロンバイン』のマイケル・ムーアと被るところがありますが、思想として正しい正しくないは別にするとすれば、思いのほか作品としての結論が綺麗でした。


■皮肉な体験ドキュメンタリーの第一人者なんじゃない?

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:230/333|評価:GOOD

だいぶ監督の成長が見られる作品でした。ドキュメンタリー作品として偏っているところはありますが、こういう偏った方がいないと業界のおかしな部分に迫ることは難しいんだろうなとは思います。ただ、今回はほんの少ししか出て来なかったけど、マクドナルドどんだけ嫌いなんだよと(笑)。いや、皮肉めいたドキュメンタリーを撮らせたら、この人に勝つのってなかなか難しいんじゃないでしょうかね。


■作品の構成に漂う押し付けがましさだけが残念

橘 律
橘 律
元ファストフード店バイト代表
ポイント:202/333|評価:GOOD

序盤でパッパッパッと画面が切り替わる場面が多かったので、少し画面酔いしそうになりました。しかしながら、押し付けがましさを抜きにすれば、名作になれたのになってお話ではあります。その点で本筋から浮いた余計な映像が多かったような……食べるために動物を殺すのって全然悪いことだと思わない人間なのでね。ヒヨコはカワイイけどしょうがないじゃん。動物にしろ植物にしろ生き物を食べるってことから逃げることは出来ないんだから。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

自称「健康派」が食ってるのは食べ物じゃなく広告だって話

近道 通
近道 通
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価

日本の様々な飲食チェーンで、産地を公表し、生産者の人格をアピールするみたいな店内広告が流行った時期があったのですが、本作を見て合点がいきました。結局、「モノは言いよう」って話なんですよね。

本作の唯一いけない部分を挙げるとすれば、その「モノは言いよう」って部分を本来そこに対する批判者である作品自身がその技を使ってしまっているところ。伝えたいことも分かるし、ちゃんと伝わったしで、ドキュメンタリーとしての主題は分かるんですが、自己批判が出来ていないんです。

明らかにどちらが悪いとは言いにくい問題に言及するドキュメンタリー映画にとって、この点がかなりマイナス材料なんじゃないかと思います。もちろん、作品としては前作の『スーパーサイズ・ミー』より余程良かったですし、中立性の担保はある程度保たれています。

ただそのせいで、どうしても結論ありきでドキュメンタリー映画を撮っているような気がしてしまう。

肥満や不健康な食生活はアメリカ社会における大問題なのかもしれませんが、「食べたいものを食べたいだけ食べて死ぬ」っていうのもひとつの生き様だし、ひとつの生き方だと思うんですよね。

君が食べている食品には秘密が沢山つまっているんだよって言われたって、そもそもそういう思想を持っている人間にとっては、どうでもいい話でしかない。

ただ、分かりやすく体験取材で「広告的な健康に騙されるな」ってことを伝えようとしてくれているところは評価出来ます。当サイトでご紹介した『フード・インク』なんかは、ニヒルな観点を排除している分だけ、諸問題に対する理解に時間がかかるところがありましたから。冷徹に分析された方がややこしい話になるんだなと思ったぐらいです。

本作は面白いんです。確実に面白い。だけど、その感想と同時に自分の主義思想を変えられたくないとも思ってしまうのはなぜなんでしょうかね。前作の『スーパーサイズ・ミー』はエンタテイメント的な要素が濃かったので、ここまで考えさせられませんでしたが、本作は3歩ぐらいレベルが高い。

その分、真剣に見てしまうから、批判的な感想になってしまる部分はあると思います。なので、このように書いておきつつも、私は本作を高く評価します。

本作の監督であるモーガン・スパーロックは「モノは言いようだよね」っていうのをしっかり理解しているんです。だからこそ彼は『モノの言い方』を考えてこのドキュメンタリー映画を撮っている。

そのドッコイドッコイな感じがドキュメンタリー映画としての格を上げているなとは思いました。

正直に言えば、これを見てファストフードでご飯を食べるのをやめる日本人って驚くほど少ないと思うんです。だけど、彼が成し遂げた『誠実なファストフードの形』っていうコンセプトは評価したいと思います。

何でも正直に誠実に表記すれば、意外とお客さんも来ると思います。私は屈折した人間なので、「本日のオススメできないパスタ」とか書かれたメニューを渡されたら、頼まない自信がありません。なんか面白そうじゃないですか?

その意味で本作は、『スーパーサイズ・ミー』とは違い、ファストフードチェーンへの批判ではなく、そこに紐づく広告業界への批判の映画なのだと思っています。

ほとんどこじ付けじゃんっていうシーンはところどころで見受けられましたが、ギリギリのとこで、それでも押し付けてはいないよねっていうドキュメンタリー映画ではありました。

前作から10年以上の時を経て、新しい試みした一風変わったドキュメンタリ―でしたね。映画的にも『スーパーサイズ・ミー』の方が著名で、それを利用しながら始まる物語なのに、こちらの方がドキュメンタリーとして完成しています。映画界としては駄作になりがちな2作目だっていう……

しかしアメリカは皮肉の使い方が上手な国です。こうした皮肉交じりの議論が当然のように出来るというのは、羨ましいところがあります。日本人はなんだかんだで空気を読んでしまいますから。

それ自体は特段悪いことではないと思ってはいますが、ドキュメンタリーを作るにあたって、「空気を変えよう」という姿勢は見習わなければならない部分があると思います。

作中の『ホーリーチキン』が日本に上陸したら、たぶん一度は行きますね。

本作の名台詞

僕も仕事の中で学びました 答えを知る方法の一つは問題の一部になることだと

出典:スーパーサイズ・ミー2:ホーリーチキン!/VOD版

役名:モーガン・スパーロック
演:モーガン・スパーロック