洋画『ボウリング・フォー・コロンバイン』アポなしで観客の心に問題提起するドキュメンタリー

スコア:640/999

ボウリング・フォー・コロンバイン出典:ユナイテッド・アーティスツギャガ
『ボウリング・フォー・コロンバイン』


【あらすじ】

1999年に起きた『コロンバイン高校銃乱射事件』を主軸に、アメリカの銃社会について独特の切り口で問題提起をするドキュメンタリー。インタビューや突撃取材等は、監督であるマイケル・ムーア本人が務めている。


【作品情報】

公開:2002年10月11日(アメリカ)|2003年1月25日/上映時間:121分/ジャンル:ドキュメンタリー/サブジャンル:社会派映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督・脚本)マイケル・ムーア/(音楽)ジェフ・ギブス


【キャスト】

マイケル・ムーア/マリリン・マンソン/チャールトン・ヘストン/トレイ・パーカー/マット・ストーン/チャールトン・ヘストン


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ポイントレビュー


■監督の思想色は強いですが、娯楽性は高いです

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:198/333|評価:GOOD

編集と構成に意図的な悪意が感じられるものの、根が深い社会問題について皮肉とユーモアを交えることで、ドキュメンタリーに一種のエンターテイメント性を付与した点については、功績として称えられるべきかもしれません。

ただし、これを純粋なドキュメンタリーと言ってしまうのは少し違うかなと思います。

客観的な姿勢で撮られている作品ではないからです。ほぼ全編に渡って、監督自身の思想が色濃く出ています。内容としてはドキュメンタリー半分、監督の思想半分といったところでしょうか?

本作……いや彼が主張していることを全て鵜呑みにしてしまうのは少々危険かもしれません。

が、概して退屈なものになりがちなドキュメンタリー映画というジャンルの作品としては、その娯楽性の高さは評価に値すると感じました。


■たまにふざける真面目なドキュメンタリー

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:217/333|評価:GOOD

扱っている問題は非常に重たいものだけど、かなりライトに描かれている部分が多いので、そこまで憂鬱にならずに、見ることが出来る映画ではある。

途中で差し込まれる黒人差別の歴史を語るアニメのシーンなんかは、表現の仕方と言い回しで思わず笑ってしまった。笑ってはいけない問題なのに。いや、逆に笑えてくるぐらいアメリカが抱える人種問題はヤバいってことなんでしょうね。

ただ、かと言ってずっとふざけているドキュメンタリーではなくて、抑えるべきところは真剣に向き合ってキッチリ抑えている印象。

特に題材となったコロンバイン高校の事件で、無関係にも関わらずやり玉にあげられたマリリン・マンソンのインタビューシーンなんかは、思わず聞き入ってしまった。

マリリン・マンソン……ミュージシャンとしては賛否両論のある極めて独特なキャラですが、流石、元ジャーナリストです。


■銃があるせいで死んだ人の方が絶対多いですよね

猿渡 りん子
猿渡 りん子
お母さん代表
ポイント:225/333|評価:GOOD

限りなく不可能に近いんでしょうけど、アメリカはどう考えたって銃を規制すべきですよね?

力の弱い人の自衛手段として有用だって意見だったり、道具が人を殺すんじゃなくて、人が道具を使って人を殺すんだって意見だったり、考えは色々あって結構だとは思うんですけど……ですけどね、どう贔屓目に見たってその銃は、自衛以外で使われる可能性のが何百倍も高いじゃないですか。

じゃあ、お前は料理に使う包丁で、人を刺した主婦のことをどう思うんだって言われてしまいそうですが、いやいや、その包丁はそもそも料理を作るという正しい使い方があるもので、人を撃つ以外に使い道のない銃とは全然話が違いますから。

もうこの問題ってどうしたら良いんでしょうね。おバカな私には凄くシンプルな問題だと思うんですが、どうしようもないんでしょうか。

本作品を見ているとそういう行き場のない怒りが、弱火で煮込んだシチューみたいに、ふつふつとこみ上げてきます。

やりようによっては、シチューをすくうお玉でだって、人は殺せるような気がしますが、どんなにムカついたって、行動にうつさないのは物凄く手間がかかるからでしょ?

ふいに激情にかられたときに、それを抑止するのって最後は、面倒さだと思うんですよね。そこがお手軽になっちゃダメ。

私は家庭を抱えている身なので、本当の抑止力は家族だよみたいなイイこと言いたいんですけど、コントロールできないほどの怒りにかられてる時って、それを思い出すので無理があるんですよね。

だって、手元に銃があって「自分の子供がボコボコに殴られて殺された」なんて聞いたら、99%撃ちにいきますもん。あれ?作品に全然触れてない(笑)


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

ついつい長文を書いてしまうドキュメンタリーの秀作?

猿渡 りん子
猿渡 りん子
メインレビュアー
お母さん代表/最高評価

学校に通う子供を抱える身としては、もう気が気ではない事件をメインに扱っているドキュメンタリーなので、終始、神妙な面持ちで画面を見つめていたんじゃないかって思います。

私はリアルタイムでニュースに流れていたコロンバイン高校の銃乱射事件を知っている世代の人間なので、映画で扱われている事件そのものについての衝撃度は当時と比べればそこまででしたけど、母親という立場で言えば、改めてあの時にはなかった不安感にかられたのは事実ですね。

真っ先に思い浮かんだのは、「自分の子供が同じように学校で撃たれたり、刺されたりしたらどうしよう……」といった当然の心配なのですが、見ているうちに別の心配も出て来て「もし、うちの子供が加害者になってしまったらどうしょう……」という心配も同時に浮かんできてしまいました。

まさかウチの子に限って……って言葉は、実は被害者にも加害者にも当てはまる言葉なんですよね。殺人まではいかなくても、ウチの子に限って、人にイジメられるようなことはないだろう。ウチの子に限って人をイジメるようなことはないだろうと。

これって、親としての私の凄くおこがましい部分だなって思うんです。その時々の環境や状況によって、子供が何をされるか、何をするかなんて親には分からない。だって、血は繋がっていても違う人間ですからね。

アメリカはそこに銃という、圧倒的な攻撃手段、ある意味解決策を持っていますから、まだ精神が未熟な子供が、それを使ってどう行動するかなんて予想もつきません。

作中でも事件の犯人であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドが学校でイジメられていたという話が出て来ますが、その怒りの矛先がどういう形で噴出するかなんて、これまた分からない話です。

ましてやアメリカは、いわゆるスクール・カーストという特殊な差別的な学校文化があると言われている国です。学園ものの映画なんかに出てくる『ジョック』や『ナード』って言葉がそれです。それぞれ、カースト上の疑似的な身分を表しています(ジョックが最上位でナードが最下位)。

インタビューシーンで登場した『サウスパーク』の原作者マット・ストーンもこうした学校文化に触れていて、「子供たちはこの状況がずっと続くと思ってしまう。本当はそうじゃないんだと教えてあげなきゃならない」みたいなことを熱弁していましたが、そんな厳しい精神状況の中、すぐそこに銃がある。力でねじ伏せられていた自分が力でねじ伏せ返せるだけの武器が手を伸ばせば簡単に届くところにある。

これはとても特殊な状況だって思います。リックとディランは友人同士で、お互いを励ますことが出来る関係だったはずなのに、それだけでは乗り越えられなかった。

日本の学校でイジメを受けている子って味方がいなくて、一人ぼっちなイメージなのですが、少なくとも彼らはお互いという友人がいた。でもそれなのに、凶行に及んでしまった。しかも二人で協力して。

なんか救いがないんですよね。友人の存在という救いが見えている分だけ、結果に全く救いが感じられない。その救いのなさをマイケル・ムーア監督はコミカルな描写を途中で交えることで、何とか子供達の将来について救いがあるかのように見せてはくれていますが、作品としては、問題を提起するだけに留まらざるを得ない印象でした。

おそらく解決策が見当たらないんですよ。第一歩として、スーパーマーケットで銃を販売するのをやめるように頼みに行くシーンもありますが、あれだけでは何も変わらないことは多分、監督本人も分かっているんじゃないでしょうか?

作品としては非常に考えさせられる、考えさせられ過ぎる部分はあります。でも、この映画を見たからって、何か行動に移すかって言われたら、それはないんじゃないかなと思います。

アメリカ社会の問題点だけをニヒルに上から目線で伝えられても、希望がなさ過ぎて……監督が全米ライフル協会のチャールトン・ヘストン会長の自宅にアポなしで突撃して、銃で殺された子供の写真を置いていく場面は、それはなんか違うんじゃないって感じました。それは全然問題に対する答えになってない。

……と、作中での監督の行動に独善的なところがあったことも、作品としての希望のなさに影響しているのは確かですが、そこまで高い評価をつけたわけではないのに、これだけの長文のレビューが書けているわけですから、ドキュメンタリーとしては秀逸な作品だってことかもしれません。

ただ、私の胸に一番響いたのはマイケル・ムーア監督のナレーションでも犯人が通っていた学校の生徒達の言葉ではなく、マリリン・マンソンのインタビューシーンです。

ネットで調べると、多くの方が彼の回答について、同じような感想を抱いたようですが、彼の口から出る言葉の一つ一つは現在(当時)のアメリカが抱えている大きな問題を的確に表現しています。

本作では『ボウリング・フォー・コロンバイン』という題の命名理由が本作のラストシーンで分かるような作りになっているのですが、これは彼の回答から着想を得たシーンだと思います。

以上、マリリン・マンソンのインタビューシーンだけで、十分見る価値がある作品だと思いますので、是非ごらんになって見てください。次点でマット・ストーンの回答も良いですよ。

もう、マットのは少し当レビューで触れちゃいましたが……

しかし、本当に長いな今回のレビュー。作品としては中の上の上ぐらいの評価なんですけどねぇ。もっと編集能力を身に付けなければ!

本作の名台詞

大統領のせいで事件が起きたとは誰も言わない

出典:ボウリング・フォー・コロンバイン/VOD版

役名:マリリン・マンソン
本名:ブライアン・ヒュー・ワーナー