洋画『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』/リーマン・ショック後のアメリカと中国の複雑な投資関係とは?

スコア:859/999

チャイナ・ブーム 一攫千金の夢出典:マグノリア・ピクチャーズ
『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』


【あらすじ】

リーマン・ショックの影響が冷めやらぬ中、次にアメリカの投資家達が目を付けたのは中国だった。中国企業の株は一大ムーブメントとなり株価は上がり続けたが、その企業実態には恐るべき事実が隠されていた。


【作品情報】

公開:2017年9月8日(アメリカ)|2018年3月30日(日本)/上映時間:84分/ジャンル:ドキュメンタリー/サブジャンル:ビジネス/映倫区分:NR/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督)ジェド・ロスシュタイン


【キャスト】

ダン・デヴィット/カーソン・ブロック/ジェームズ・チェイノス/マシュー・ヴィーヘルト/ソレン・アンダール


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ポイントレビュー


■一流大の講義を受けているかのような気分になれる

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:279/333|評価:GOOD

最早ドキュメンタリーの枠を越え、一流大学の講義の域にまで達しています。当サイトでこれまでレビューしてきたドキュメンタリー映画の中でも際立って難解ですが、非常に良く出来ている。

わからない部分をわからないままにしておかずに見れば、得るものが必ずあります。

ただ、邦題の『一攫千金の夢』部分はいらなかったんじゃないでしょうか。何だか安っぽいから原題の『ザ・チャイナ・ハッスル』のままで良かったような……


■登場人物全員悪人、真っ向勝負のドキュメント

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:277/333|評価:GOOD

冒頭で「この話の登場人物は全員悪人だ 私を含めて」みたいな台詞があったから、『アウトレイジ』かよって笑っていたんだけど、内容は笑い事じゃなかった。そして、その言葉通りに気持ちの良いぐらい登場人物全員悪人(単純に悪とは言い切れない悪党に近い人もいましたが……)でした。

本作で問題とされていることは、複雑に見えて実はシンプルなもの。最初は頭がこんがらがりそうになるかもしれませんが、ゆっくりと理解を深めさせていく作りになっているので、諦めずに最後まで見ることを推奨いたします。


■ありがとうございます!大変勉強になりました!!

橘 律
橘 律
下手の横好き代表
ポイント:303/333|評価:GOOD

頭が悪い癖に私の中で密かなブームになりつつあるビジネス系作品。

むずい。マジでむずかった。カタカナ英語多い。多いよ。和訳の意味あんのかよ。いや、カタカナ英語の下にさらに日本語の言い換えをつけたりしてくれて、めっちゃ丁寧なんですけどね……終始なんだなんだの連続でした。

でも、目を凝らしてよ~く見ているときちんと難しい金融用語の意味も分かりやすく説明してくれているんですよね、この作品。超高校級に勉強になりました。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

このクソ難しい映画を会話風に解説してみました

橘 律
橘 律
メインレビュアー
下手の横好き代表/最高評価

ツルンツルンの脳にまた一つシワが増えました。それでは、それでもまだまだ足りない頭で簡単に解説させて頂きましょう。

本作が提起しているテーマは実は一つなんです。それは「あのリーマンショックから何にも学んでねぇなお前ら」ってこと。最序盤のナレーション“中国との関係は前向きだが複雑でもある”が、本作品の概要を表してはいるものの、全体としては「中国企業への投資問題を主軸に語ってるけど、これはアメリカが抱えている大きな問題を語るための一つの切り口に過ぎないんだからね、プンプンというツンデレな描かき方になっています。

ただ、本作が主軸にしている中国企業への投資問題自体はそれこそ複雑なので、ここで私なりのかみ砕いた説明をさせて頂きますね。

-投資会社など-
「急成長中の中国に目をつけたんだけど、向こうさんの法律で中国企業には直接投資出来ないから上場させられないんだよね、どうしよう?」

アメリカで上場している休眠会社(シェルカンパニー)
「アメリカで上場済みの企業であるウチと中国企業を合併させれば、上場出来まっせ。全然仕事はしてねーけど、すでに上場してるんすから(へいへい、逆さ合併しようぜ、裏口上場しようぜ)」

-仲介会社-
「こんな感じの話なんですけど、どうですか中国企業さん?儲かりまっせ?」

-中国企業-
「いい話っすね。やりやしょう」

-投資会社のお抱えアナリスト-
「ほんじゃ、その合併した中国株は熱いって皆に言っときますわ」

-投資系の営業マン-
「なら、俺はアナリストさんの話を利用して皆に株を売り付けますわ」

-個人投資家など-
「へぇ~そうなんだ。すげぇ儲かりそうじゃん。いいよ。買う買う~」

-投資会社など-
「株上がり切ったねい。じゃあ持ってたヤツ売っとこう。儲け儲け。」

-中国企業-
「合併後の自社株式売却益あざーす!!!」

-個人投資家など-
「ん、何か割高な気がしてきたけど、どうなんだろ?」

-格付け会社-
「大丈夫っす。大丈夫っす。アメリカの(名ばかり)上場企業と合併した中国企業さんの経営状態大丈夫っす」

-大手監査会社-
「俺らも付いてるんだから安心っしょ?だって大手だし。企業利益も報告通りだと思うよ。実際担当するのはウチのフランチャイズんとこだけど、彼らもウチの名前でやってるわけだし」

-個人投資家など-
「あんたらがそう言うんなら信用するわ」

-調査会社や一部ファンドなど-
「ん?なんか上場してきた中国企業おかしくね。報告書の売り上げとかの数字ってちゃんと合ってんの?」

-投資会社など-
「合ってるっつってんだろ?特に調べてねぇけどな」

-格付け会社-
「全然調べてねぇし、危なそうな情報は隠してっけど合ってるぞ」

-大手監査会社-
「おう、こっちもてんで調べてねぇけど合ってるぞ」

-調査会社や一部ファンドなど-
「めっちゃ調べてみたら、すげぇ数字がデタラメだったんだけど……」

-中国企業-
「そういうことすんのやめてくんないすか?ある意味テロっすよそれ。人の国に来て人の会社のことを許可なく調べんのは違うっしょ?(確かに言ってた程には儲かってねぇけどよ)」

-調査会社や一部ファンドなど-
「今の値段で狙いを定めた中国企業の株を空売りするわ。そんでもって、その企業の経営実態を情報公開するわ。空売りつーのは株価が下がる方に賭ける投資方法で、投資の世界ではすげぇ嫌われてっけど、詐欺行為を正すためにはしゃーないっしょ」

-『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』-
「空売りについて詳しくは本編を参照してくれよな。砂糖の貸し借りに例えて分かりやすく説明してっからよ。ホント、教養のない人間に甘いよなぁ俺達(ドヤ顔)」

-個人投資家など-
「うわっ…私の中国株の株価低すぎ……」

-マスコミ-
「やばくない?思ったよりやばくない?」

-調査会社や一部ファンドなど-
「株価下がってウッハウハだぜ」

-証券取引委員会-
「そろそろガチでヤバそうだけど平気?」

-調査会社や一部ファンドなど-
「だからやべぇってずっと言ってんじゃん!中国にめっちゃ無駄金が行っちゃってるって!!」

-証券取引委員会-
「でも、君たちの言う事ってなんか胸に響いて来ないんだよねぇ」

-個人投資家など-
「あのぉ…大損なんだけど……年金の金とかも取られちゃってんだけど」

-調査会社や一部ファンドなど-
「もういいや、一応正義のために頑張るヤツは頑張るみたいだけど、基本的には真相暴いて空売りで儲け続けるわ」

-投資会社など-
「空売り屋とかマジうぜぇけど、俺自身はあんまり痛くねぇから取り敢えずいっか」

-中国企業-
「ちょっと多めに売り上げ報告しただけで一通り儲けられたから、もう敬語使うのやめるわ。まだまだアメリカに上場してる中国企業沢山残ってるしな。あ、今後のために一応言っとくけど、俺ん中では10倍とか100倍の誤魔化しでも、ちょっと多めぐらいの感覚だからな」

-個人投資家など-
「騙し取った金返せよ。これ、ほとんど泥棒だぞ泥棒」

-ウォール街-
「ま、取り敢えずいんじゃね?しゃーないっしょ。まだまだ良さげな中国企業あるし、次行くぞ、次」

-『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』-
「いや、しゃーねぇじゃ済まねぇだろ」

正確性はおそらく株の世界で言えば経営権を握れる51%ぐらいですが、私の中での本作への理解はこんな感じでした。本作はドキュメンタリーとして非常に理路整然としていますので、普通の方なら1回の再生で十分な理解が得られると思います。私の場合は3回の繰り返し再生が必要でしたが……

しかし話は少し変わりますが、このドキュメンタリーの何が一番凄いって、作品の中で批判される立場の人間も勇気を持って登場してくることです。ウェズリーさん(元陸軍大将のおじいちゃん)は怒って途中で帰っちゃったけど、出て来るだけでスゴイ。

そして、そうしたインタビューを受けている人の回答の言い回しがイチイチ格好いいんですよねぇ。

中国の格言「澄んだ水の中で魚は獲れない」の後に続けて、「金儲けのチャンスは不透明なところにある」って言ってみたり……

本作品のメインテーマは『何も変わらないアメリカ』っていう、とても重たい問題だったけど、こういうところは憧れるなぁ。日本のドキュメンタリー作品で顔出しで本人が問題について回答するものってあんまり見た事ないし。

そういう部分も含めて、本作品の鑑賞は勉学的にも娯楽的にも、アメリカがこの件で失ってしまった年金140億ドルを払ってもいいと思えるぐらいに大満足でございました。1兆1000億ドル貰ったら払うね、テヘペロ(はぁと)

あ、兆の話が出たついでにこぼれ話を一丁付け加えておきましょう。

作中でインタビューを受けていた調査会社のソレン・アーンダールさん……日本企業のの伊藤忠さんを狙っている時期があったみたいです。

いやぁ、あとあとの振り返りサーチが捗りまくるのも、ドキュメンタリー映画の魅力ですね。ミュージカルと担当変えてくんないかな?ミュージカル映画も大大好きだけど、いいヤツがあんまりVODに来ないんだもん。

本作の名台詞

ウォール街最大の嘘は“今日は違う”という言葉

出典:チャイナ・ブーム 一攫千金の夢/VOD版

役名:ソレン・アーンダール
本人:ソレン・アーンダール