スコア:818/999
出典:松竹
『聲の形』
【あらすじ】
小学生時代に聴覚障害の転校生硝子をイジメた事で、将也は逆に自分がイジメられる側になってしまう。後の人生はすっかり内向的なものとなり、ついに自殺を決心。最後の贖罪のため、硝子がいる手話サークルを訪れる。
【作品情報】
公開:2016年9月17日(日本)|他多数の国で上映/上映時間:129分/ジャンル:アニメ映画/サブジャンル:青春映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督)山田尚子/(脚本)吉田玲子/(音楽)牛尾憲輔/(主題歌)aiko『恋をしたのは』/(原作)大今良時『聲の形』
【キャスト】
入野自由/ 松岡茉優/悠木碧/小野賢章/金子有希/石川由依/潘めぐみ/豊永利行/西谷亮/小島幸子/増元拓也/武田華
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ポイントレビュー
■元いじめっ子こそ見て欲しい作品
ポイント:277/333|評価:GOOD
この映画、小学校で上映会とかやった方が良いと思うんですよねぇ。これを見たおかげでイジメが収まるなんて可能性は低いでしょうが、もしかしたら100人のイジメっ子の内、1人ぐらいは自分の過ちに気づいてくれるかもしれない。そう思ってしまうほど、感銘を受けました。
主人公の将也のしたことは、本来ならば永遠に許させることではありません。でも、それでも許して貰おうと努力し続ける姿勢があるのとないのとでは、人として雲泥の差があるんですよね。
元イジメっ子という称号を深い業として背負って生きるのか、それとも、知らんぷりしてそのまま忘れて過ごすのか?
残念ながら、現実の世界では圧倒的に後者が多いと思われますが、元イジメ子の皆様は是非この映画を見て、今一度、自分のしてしまった過ちと向き合い直して貰えたらなと感じました。
■主人公の人間臭さを感じられる秀作
ポイント:246/333|評価:GOOD
贖罪の話って難しいです。もし私が同じ立場なら主人公の将也を許すような態度は取れません。ただ、勇気は買ってあげたい。見ていてそう思いました。
彼はいじめっ子でもあり、いじめられっ子でもありますから、作中で様々な葛藤を抱えて、成長している部分とほとんど成長していない部分があるのですが、それでも命を張って前に進もうとしている。
時折立ち止まって後ろを振り返りながらも必死にあがいている。
そうなんです。加害者である本人も、綺麗には、すんなりとは、自分の過去とは対決出来ないんです。本作はそういう人間臭さを明確に描いています。
これは勇気の物語なんじゃないかと思います。
■謝罪の機会があるって凄く運が良いこと
ポイント:295/333|評価:GOOD
主人公の将也がヒロインの硝子にやったことは犯罪です。まだ小学生だったとはいえ、聴覚障害者の命綱である補聴器を壊すなんて、イジメという一言で片づけられる問題じゃない。
たまたま硝子が強い女の子だったから助かり救われただけの話で、もっと弱い子だったらとんでもないことになっていたでしょう。
補聴器がなかったせいで(補聴器付けてもほとんど聞こえないみたいだけど)車にひかれて死んだりしたら、どうするんですか?このまま自分の弱い部分を責められ続けられたらと悲観して、自殺でもしたら、どうするつもりだったんでしょう?
そうしたら、罪滅ぼしもクソもありません。
本作の唯一の欠点はそこです。謝罪に行けるだけでも運が良かったという描写がほとんどない。将也が過去の罪を清算しようと身と心を削るところに時間が割かれ過ぎてしまっていて、そういった問題の根本がふわっとしてしまっている。
とはいえ、それ以外は素晴らしいの一言の作品です。映画の世界だけでも救いが欲しいじゃないですか。少なくともこの映画にはそれがありましたから。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
イジメられっ子とイジメっ子のファンタジー
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価イジメは絶対になくならない。これは断言していいと思います。大の大人だってイジメがあるんですから……最近では、いじめを発見し止めさせる役割をすべき教師が、イジリと称して、犯罪に等しいイジメを行っていたという事件さえありました。
本作を見て、もうイジメは確実に起こりえるものとして、管理監督するような社会にした方が良いと改めて感じます。
イジメた側は大きくなるに連れて、イジメていた時の記憶が薄く薄くなっていきますが、イジメられた側は逆なんですよね。その記憶はどんどん濃くなってゆく。私もイジメを受けた経験があります。結構いい歳になりましたが、まだ全然忘れてないし、これぽっちも許していない。
当時は、不登校にこそなりませんでしたが、常に無視され、時折リンチの標的となる地獄のような学校から家に帰るだけという毎日を過ごしていました。無論、友人なんて振り仮名な「ゆ」の字出て来ないぐらい一人もいません。
そのおかげで一人でも全てを完結出来る映画、連続ドラマ好きという、いるのかいらないのか良くわからないスキルを身に付けることは出来ましたがね(笑)
ただ、その点で本作の主人公の将也に、一定の好感が持てたの確かです。私の経験からくる予想とは正反対の心の動きをしていましたから。最初は「コイツどのツラ下げて、どう謝るつもりなんだよ」とは思いましたが、被害者が生きている間に罪を償おうとしているだけ、幾分マシです。
私なんて、成人式の時に元イジメっ子の何人かに会いましたが、ケロっとしたもんでしたからね。「よぉ、久しぶりー」みたいな。そんな言葉を当時はかけられたこともなかったので、その瞬間はビックリしましたよ。マジで。
ですから、私の中でこの物語はファンタジーなんです。イジメた側の人生が変わることって、実際にはほとんどありません。
でも、イジメられた側の人生は、もしものイジメられていなかった時の人生とは絶対に変わってしまう。私は運よく立ち直り明るい性格をある程度取り戻すことができましたが、イジメられたことのある人全員が、そういう風に運よく人生がまわるわけじゃない。私だっていまだに敵意のある目には弱いですから。こっちも敵意ある目で睨み返すぐらいは出来るようになりましたが……
しかしながら、そういうファンタジックな甘い甘い部分があるからこそ、エンターテイメント足り得、さらには人の心を動かすことが出来るというのは確実にあると思います。
もし、この作品の原作者や監督や脚本家にそういう意図があったのだとしたら、元イジメられっ子としては誠に嬉しいお話です。
なんだか暗い話ばかりになってしまいましたが、珍しくそういうレビューを書きたくなるぐらい、心臓を締め付けてくれる素敵な映画でした。
本作の名台詞
君に生きるのを手伝って欲しい
出典:聲の形/VOD版
役名:石田将也
声:入野自由