アニメ映画『100日間生きたワニ』/公開前のネット界隈のゴタゴタを一切知らなかったことにして観る分には悪くない

スコア:473/999

100日間生きたワニ出典: 東宝
『100日間生きたワニ』


【あらすじ】

ささやかながらも幸せな日々を過ごしていたワニが100日後に突然死を迎えるまでの日常と、ワニの死を迎えた後の仲間達のその後が描かれる。ワニが生きた100日間を共有した観客達は一体何を想うのであろうか?


【作品情報】

公開:2021年7月9日(日本)/上映時間:63分/ジャンル:アニメ映画/サブジャンル:アニメドラマ/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督・脚本) 上田慎一郎,ふくだみゆき/(音楽)亀田誠治/(主題歌)いきものがかり『TSUZUKU』/(原作) きくちゆうき
『100日後に死ぬワニ』


【キャスト】

神木隆之介/中村倫也/新木優子/木村昴/ファーストサマーウイカ/杉田智和


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ポイントレビュー


■努力して本作まわりのゴタゴタを頭から消してはみたんですが……

猿渡 りん子
猿渡 りん子
アニメ担当
ポイント:163/333|評価:BAD

話題になった原作漫画を読みましたし、ワニが死ぬ100日目の騒動もある程度認識していたので、可能な限り作品の裏舞台で繰り広げていたゴタゴタについては頭の中から消し去って観るように努力はしてみたんですが、完全に消し去ることは無理でした。

ただ、私は大きな話題になる前から原作漫画『100日後に死ぬワニ』をそれほど評価していない層だったので、ある程度達観した視点でアニメ映画『100日間生きたワニ』を観た者としての感想を述べることは出来ると思います。

上映時間が短い作品な上に案外あっさりしていたので、こちらも同じような感覚で感想を一言だけ……

見放題契約中なら話のタネにはなります。それでは。


■映画版は『100日』という設定があんまり機能してないのでは?

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:170/333|評価:GOOD

特筆べき点は特にない「身近な誰かが死ぬ」という設定だけで最後まで乗り切る作品です。特別良かったところもなければ、特別悪かったところもありません。

強いて挙げるとすれば、タイトルを原作の『100日後に死ぬワニ』から、『100日間生きたワニ』に変えた点は良かったでしょうか。こっちの方がしっくり来る構成です。一方で悪かった点は、映画版では原作未見の方にとって『100日』という期間がほとんど意味を成していないところですね。

良くも悪くも100ワニファンのための映画という感じでした。映画上映するよりもファンディスク的な立ち位置でDVDかダウンロードで売った方が良かったんじゃないでしょうか。


■VOD見放題で観るなら、まぁアリなのかなぁ……

橘 律
橘 律
ラブストーリー担当
ポイント:140/333|評価:BAD

映画館でこれに2000円近くのチケット代を払うのは気が引けますね……単純計算してワニ一日当たり20円ですよねぇ?いやぁ私の感覚ではたとえこのワニが絶滅危惧種だったとしても、彼が一日生きている姿を観るために、20円は出せないです。

っていうか、もっと厳密に計算してしまうと、主人公ワニが本作中で生きている時間は上映時間(約60分)の内の半分ぐらいなっちゃうのでね。生きワニ一日当り40円になります。お話の感想以前の問題でちょいキツイです。誰かと被った感想になってしまいそうですが、VOD見放題で観るなら、まぁアリなのかなぁ……と言いたい作品ですね。

ですが、60分程度の映画って結構あるので、一時期話題になったという点がなければ、あえてこの作品を観る可能性は極めて低いと思われます。ただ、不思議と見たことに後悔はありませんでした。満足したとまで言ってしまうと嘘になりますが……私はタダ券で観てしまったので。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

主役をワニにしなきゃいけない理由って一体全体何だったんだい?

橘 律
橘 律
メインレビュアー
ラブストーリー担当/最低評価

作品の感想ではなく、映画としての展開方法についての話から始めることになってしまって非常に申し訳ないんですが、上映時間の10%弱がエンドロールというのは、流石にいかがなものかと思いました。

60分と短い映画アニメなのに、静止画展開や、シーンの使い回しのように思われる場面が散見されました。声優陣の声の出し方も全体的に何だか違和感があります。中途半端な『紙兎ロペ』みたいなノリなのです。

特にワニの声役の神木隆之介は本業は俳優さんですけど、『君の名は。』などで声優としても相当上手な方だという認識だったので、ここはちょっと意外でした。もしかしたら、演出上わざと全員に棒っぽく台詞を言わせていたのかもしれませんね。

でも、だとしたらそこは悪手だったんじゃないかな?お話がデフォルメキャラクター達の日常劇が中心なので、作画も全く凝ってはいませんし……

ただ、作品として全然面白くなかったとまでは言えないところがあるのもまた事実でして、私はこれっぽっちも好きなタイプの話ではありませんが、他の数々の映画レビューサイトでフルボッコにされている現状にはやや疑問を感じます。

作品のスタンスとして『死』を扱うテーマというより、『死』という哀しい出来事をストーリーに組み込めさえすれば、何でもそれっぽく切ない話に見えるだろ?みたいな嫌いがある映画なので、一部の方にはそこが大いに気に喰わなかったのかもしれません。

事実、わたしもそこには若干苛立ちを感じましたね。死んだ者もその者の思い出を抱えて生きる者も当然にいる世の中ですし、それが悲しいのは当たり前で、残された者はその後の人生も必死で生きなければならないのは当たり前なのでね。

それをわざわざ改まって、悲しいだろ?でも頑張っていこうな!って語り口で、単純に物語化されても、それなりに歳を取れば十分実体験で味わっている心情ですから……人間の代わりにワニでそれを描かれたって、結局誰かが死ぬ話なら泣けるんでしょ?と言われている気分になっても反論の余地はないと思います。

だけど、本作の作品外での逞しさには、一種の感動を受けたことは確かです。仮にも『死』を主題に取り扱ったアニメ映画で、まさかキャラクターグッズ展開をするとはね。いやはや、嫌味でも何でもなく、これがまさに生きるってことなんだなぁとしみじみ思いました。

批判も大いにあるでしょうが、実はこういうのって嫌いじゃないですね。売れるか売れないかは別にして、なんだってやってみなくちゃ分からないのが『死』を迎えるまでの人生ですから。本作でもワニの恋愛パートなどで、その辺が描かれています。このへんの現実世界とのリンク部分に関しては私は好きです。製作側にそんな意図は全くなかった可能性は極めて高いですが……

と色々とお話を脱線しつつ、作品を観た感想をここまで書いて参りましたが、最後に絶対に言っておきたいことがあります。視聴中、絶対におかしいなと思ったシーンがあったんです。

序盤中の序盤に、怪我で入院中の親友のネズミに、ワニがお見舞いに行くシーンがあって、「でも、ケガで済んで良かったねぇ」と言うシーンがあるのですが、ネズミがそれに対してこんな返答をするんです。

「まぁな……人はそんなに簡単に死なねぇよ」

あのさぁ、君はネズミじゃないのか?

あんまり細かいことは言いたくないですけど、物語の始まりからこれだとですね。主役をワニにしなきゃいけない理由って一体全体何だったんだよと、つい言いたくなってしまいます……

本作の名台詞

まぁな……人はそんなに簡単に死なねぇよ

出典:100日間生きたワニ/VOD版

役名:ネズミ
声:中村倫也