スコア:790/999
出典:松竹
『ブラッド・スローン』
【あらすじ】
ジェイコブは優秀なサラリーマン。家族とも良き父として仲睦まじく暮らしていた。ところがある日、飲酒運転事故で同乗の友人を殺してしまう。彼は有罪判決を受け、ギャング達がひしめき合う刑務所へと送られた。
【作品情報】
公開:2017年8月18日(アメリカ)|2017年9月30日(日本)/上映時間:121分/ジャンル:アクション/クライムアクション/映倫区分:PG12/製作国:アメリカ/言語:英語
【スタッフ】
(監督・脚本) リック・ローマン・ウォー/(音楽) アントニオ・ピント
【キャスト】
ニコライ・コスター=ワルドー/オマリ・ハードウィック/レイク・ベル/ジョン・バーンサル/エモリー・コーエン/ジェフリー・ドノヴァン/ホルト・マッキャラニー
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※情報は【2022年11月4日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。
ポイントレビュー
■リアリティ溢れるアメリカの刑務所生活
ポイント:265/333|評価:GOOD
ドキュメンタリー作品で、アメリカの刑務所の話を何度か見たことがあるのですが、その実態に極めて近い雰囲気があります。
こちらは映画なので、ド派手にやり過ぎな点はありましたが、刑務所の中での弱肉強食の諍いは抜群のリアリティです。
「全ては生き残るため」
アクション映画としてはこの上ないテーマではありますが、主人公のジェイコブがどんどん変わっていく姿が泣けてくるせいで、普通なら「うわぁカッコいいなぁ」と思えるシーンでも、素直にそうは映ってきません。
ジェイコブも飲酒運転で友人を死なせてしまったのですから、罰を受けなければならないのは当然なんですが、これが罰なのだとしたら、彼にとっては死ぬよりも辛いことだったのではないでしょうか。
大罪を犯したのですから、幸せな人生を失うのは仕方ないにしても、自分が自分でなくなるというのは何よりも重い罰だと感じました。
■バイオレンスアクションの皮を被ったヒューマンドラマ
ポイント:276/333|評価:GOOD
映画の出だしから刑務所の中の映像とタトゥーだらけジェイコブが映しだされます。
ストーリー展開としては、そこから現在と過去を交互に交えながら、ギャングになったジェイコブの物語が進んでいく、というのが基本的な流れです。
この表現手法のおかげで、人間が環境に順応することが出来なければ生きていけない社会的生物だということが嫌というほど伝わってきます。
かつて彼が属していたビジネスの世界とは、あまりにもかけ離れた刑務所の世界に適応する。それこそ、オオカミの群れに羊が一匹投げ込まれて、生き残れと言われているようなものです。
いや、これ、単純なプリズンギャングの話じゃないです。「それでも生きたい」と思う人間の本質を暴こうとしているヒューマンドラマと言ってもいいと思います。囚人同士の抗争シーンに騙されてはいけません。
本作はプリズンギャングの恐ろしさを描いた映画ではなく、生きるために変わらざるを得ない人間の人生の恐ろしさを描いている作品だと私は感じました。
■ギャングも恐いが、奥さんの罪悪感のなさが一番怖い
ポイント:249/333|評価:GOOD
飲酒運転は絶対に許されないことだし、刑務所に入れられて当たり前なんですが、死んだ同乗者の友人も、ジェイコブ夫妻プラス自分の彼女だか妻だかと一緒に酒を飲んでいたわけで、刑務所に入ったのはジェイコブだけが悪いわけじゃないと、きちんと観客に伝えているところが憎い演出です。
この要素があったからこそ、刑務所にいるジェイコブを素直に応援したくなる。妻のケイトなんて、自分がワインをもう一本追加しときながら、あの態度。ちょっとナシでしたね。
ネタバレになっちゃうので、あまり深くは語りませんが、自国の刑務所が「やらなきゃやられる」ようなヤバイところだってことはケイトだって知っているだろうに……泣き言ばかりでなく、彼に対してもう少し優しくしてあげて欲しかった。
「半分は言い過ぎにしても、ジェイコブがこうなっちゃったのは、2割ぐらいお前にも責任あんじゃねーの?」って思いました。
ある意味この映画では、刑務所のギャングより、塀の外にいるこういう普通の人のドライさの方が恐ろしかったですね。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
惜しい…もう一歩でショーシャンク越えもあったのに
メインレビュアー
ドラマ担当/最高評価刑務所が舞台の話って、意外と良作揃いなんですよね。
洋画なら、『ショーシャンクの空に』や『スリーパーズ』。邦画であれば、『塀の中の懲りない面々』や『刑務所の中』。海外連続ドラマなら『プリズン・ブレイク』『ウェントワース女子刑務所』……と。
パッと思い付くだけでもこれだけの作品が出て来ます。そして本作は、今回の視聴により、私が所長を務める『パッと思い付く良作刑務所作品収容所』に新たに入所して頂く運びとなったわけですが、VODで適当なキーワードを入れて検索した時にたまたま出て来なかったら、おそらく一生見ることはなかったであろう映画です。
こういう隠れた良作に出会えるのは実に嬉しいですね。今ではVODで見られるオススメ映画として、友人、知人に紹介しまくってます。
ただ、惜しいんです。あと一歩半ぐらいでリアル版『ショーシャンクの空に』になれました。
いや、もしかしたら、それを超えられたかもしれない。ショーシャンクって、アメリカの刑務所の話にしては何やかんや言ってヌルいですから。
良作どころか超名作だとも思ってはいますけど、問題が都合よく解決され過ぎなところがあります。
それに比べて本作品は、生き残るためには敵の囚人を殺さなければいけなかったり、刑務所のギャングとの繋がりが出所後も続いたりと、アメリカの刑務所の厳しい現実を観客に刃物をつきつけるみたいに見せつけてくるので、常に緊迫状態……まるで自分がぶち込まれたかのような錯覚さえ与えてくれます。
アメリカの刑務所にはいるのは、力を持っているヤツとそうでないヤツの二種類しかいないって現実を、きちんと観客に教えてくれるんです。
しかしながら、それは中盤ぐらいまでで、彼の生き方の変貌が、シャバで幸せに暮らしていた頃の回想とうまく関連していたからこそ、胸が苦しくなるような名作に見えていたのですが、終盤に近付くに連れて、プリズンギャングの抗争劇シーンばかりになって、最後は無難なギャング映画みたいになっていってしまいました。
いや、惜しいなぁ……と。ラストシーンの何とも言えないジェイコブの顔は良かったですけど、ここまでリアル路線で来たんだから、最後までそれを貫いて欲しかった。
この難点さえなければ、友人、知人にだけオススメ作品として教えるだけでなく、世間様に大ぴらに「名作です!」と言える作品だっただけに、残念でなりません。
ただ、それでも一見の価値ありです。終盤の抗争シーンもこちらが勝手に期待値を上げまくっちゃっただけですからね。いやいや、やっぱり刑務所モノで『ショーシャンクの空に』越えをする作品と出会うのは、なかなかこれからも険しい道のりになりそうです。
本作の名台詞
生まれたばかりの時はみんな天使だ
出典:ブラッド・スローン/VOD版
役名:ジェイコブ・”マネー”・ハーロン
演:ニコライ・コスター=ワルドー