洋画『ベイビー・ドライバー』/音楽最高!!だけど、そんなに運転してません

スコア:502/999

ベイビー・ドライバー出典:ソニー・ピクチャーズ
『ベイビー・ドライバー』


【あらすじ】

天才的な運転技術を持つ通称「ベイビー」は、裏社会の大物ドクへの借りを返す義務があった。彼に与えられた任務は銀行強盗の一味を無事に逃がす事。イヤホンを付けた瞬間、彼のそのテクニックは最高のものとなる。


【作品情報】

公開:2017年6月28日(アメリカ)|2017年8月19日(日本)/上映時間:113分/ジャンル:アクション/サブジャンル:カーアクション/映倫区分:全年齢/製作国:イギリス・アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督・脚本)エドガー・ライト/(音楽)スティーヴン・プライス


【キャスト】

アンセル・エルゴート/リリー・ジェームズ/ケヴィン・スペイシー/ジョン・ハム/エイザ・ゴンザレス/ジェイミー・フォックス/ジョン・バーンサル


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※情報は【2022年11月4日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。

ポイントレビュー


■カーチェイスシーンがちょっと少ない

山守 秀久
山守 秀久
アクション担当
ポイント:183/333|評価:GOOD

『ワイルド・スピード』のような作品を期待して見始めてしまうと、もしかすると痛い目を見るかもしれません。カーチェイスシーンはもちろんありますが、そうしたアクションシーンよりも、ドライバーである「ベイビー」自身について、重きが置かれている作品です。

あくまでもカーアクションではあったのですが、想像以上に求めていたチェイス場面が少なく、若干拍子抜けしてしまいました。ヒューマンドラマとしてもやや中途半端な印象を受けます。

ただ、これに関してはアクションファンである私が、勝手に思い込んで多分に期待を込め過ぎたからこその感想ではあるので、あまり参考にならないかもしれません。客観的に見れば、アクションと人間ドラマの割合がちょうどいい映画だと言えなくもないと思います。

車を題材にした作品の中で名作かと聞かれれば、そこはちょっと首を傾げたくはなりますが……作中でかかっている音楽に関してだけ言えば、最高だったのではないでしょうか?


■主人公のベイビーをもう少し際立たせて欲しかった

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:194/333|評価:GOOD

私にとってはイマイチ感情移入も応援も出来ないタイプの主人公でしたが、結末で一応の盛り返しは見せてくれました。しかしながら、他の登場人物達の方がずっと魅力的なのは痛かった。

ケヴィン・スペイシーやジェイミー・フォックスといった超一流どころのアカデミー俳優の中で主人公として立ち回るのは、やっぱり、よっぽどの脚本でない限り難しいところがありますね。

アクション映画なのでストーリー展開が大味になってしまうのは、致し方ない部分もあるとは思いつつも、もう3歩ぐらいキャラ立ちさせてあげて欲しかった。

とはいえ、世界観の割にシリーズ化を狙って無さそうな作りは評価に値すると思います。いや、ちょっと調べてみたら、続編の脚本作られてる噂があるみたいです。まぁ、あれだけヒットすればしゃーないですね。


■ラブストーリーがなかった方が格好良かったんじゃ……

橘 律
橘 律
ラブストーリー担当
ポイント:125/333|評価:BAD

恋愛映画推しの私がこう言うのもアレですけど、この映画にラブ要素いらなかったんじゃないですかね?そうしたら、もっともっと主人公が映えたのでは?

男の世界に、女があれこれ余計なチャチャを入れるのが、映画の世界の常とはいえ、そのチャチャの入れ方にも流儀ってもんがあるんじゃないかなぁ。

そこまで恋愛描写が酷いわけではないんですけど、どうしてヒロインが主人公に惹かれるようになったのか、ゴメンナサイ、私には全く理解出来やせんでした。

ラブストーリー好きの人間にとっては、行き付けの総菜屋さんに「奥さん、オマケつけといたよ!」って言われたけど、微妙なおかずだったって感じの作品です。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

面白いんだけど主人公の魅力不足が残念でならない

アクセル神田
アクセル神田
メインレビュアー
ドラマ担当/最高評価

『オーシャンズ11』の映画を見ている場面(映っているのはブラピです)がサササッと差し込まれている場面から察するに、あんなムードのクライムアクションをかなり意識していると思われるんですが、その方向性では失敗しちゃってるんじゃないでしょうか?

こういうジャンルとしては、郵便局に強盗に入るっていう発想に新鮮味があったぐらいです。音楽でノリノリのカーアクションかと思いきや、蓋を開けてみれば、走って逃げるシーンの方が多いですし……最序盤のカーチェイスがアクション映画としての一番の見所ってのもどうなんでしょう……

それに冷静に考えると、郵便局の件にしても銀行強盗モノの映画としてはもの珍しいだけで、日本で言えばゆうちょ銀行に押し入るようなもんですしね。

多分、主人公のキャラ設定が私にはあまり合わなかったのが、ストーリーに対するこうした評価に繋がっているんだと思います。

銀行強盗のメンバーに初めて紹介される時も全く喋らず、さらに見てくれもナヨナヨしいので、彼はメッチャ初対面から嫌われるんですが、その理由も何となくわかるような気がします。

ゴリゴリのヤクザモノの彼らからすれば、気取って斜に構えてんじゃねーよって感じになるのも当然でしょうね。オタク系とはまた違う独特のスカした感じが視聴者としても鼻につきました。

そのくせ、実際は結構普通に喋られるっていうね。無口って設定が必要なら、そこは貫いて欲しかった。ヒロインを口説く時なんかはごく普通の若者レベルで会話しています。

また、この紹介時に『ウォーキング・デット』でショーン役を演じたジョン・バーンサルが出てくるのですが、結局は「あ、ウォーキング・デッドに出てた人だ!」の枠だった模様で、中盤以降は物語に絡んですら来ない(アメリカ流のファンサービスみたいなもんなんでしょうか?)。

こうして、コイツとの関係性で何か変わって来るのかなぁという淡い期待感さえも、あっけなく撃ち砕かれてしまったことで、私の主人公ベイビーに対する印象は芳しくないまま、その後も尾を引きずることになるわけなのですが、ボス役のケヴィン・スペイシーや、2度目の強盗のリーダー格のジェイミー・フォックスがフォローしてくれたおかげで、何とか彼を見守ってやろうというモチベーションは失わずに済みました。

特にジェイミー・フォックス扮するリーダー格のバッツは悪人ではあるんですが、どこか憎めないところがあって魅力的なキャラでした。可愛いんです。人も殺すんですけど、なんか可愛い。

作中で偶然ヒロインが勤めるレストラン近くに通りがかり、その店に寄ろうとバッツが提案するシーンがあるんですが、ベイビーが「あの店は嫌いだから行かない」と断ると、「じゃあ、絶対寄らなきゃ!」みたいなことを言って、無理やり連れて行かせます。

普通に考えたら、彼らに愛するヒロインの存在を知られてしまうかもしれない、凄く怖いシーンなんですが、その台詞を言う時の表情がメチャ可愛い。最終的に彼はあっさり死亡退場することになるんですが、ちょっとホロリと来たくらいです。正直、「ベイビーお前が死ねよ。許さねぇ!」と思ったぐらい。

あと、登場人物として印象に残ったのは一度目も二度目も強盗メンバーだったバディでしょうか?

彼を演じるジョン・ハムが『ウォーキング・デッド』のニーガンに良く似てるんです。調べたら、全く別の役者さんでしたが、最初にジョン・バーンサルが出てきたせいで、ニーガンにしか見えない。

連れの女を大事にしているし、彼はニーガンよりもずっと優しい悪党なんですが、いつ釘バットを出すのかという変な期待感にさいなまれ、これまた純粋な鑑賞の妨げになりました。バディ自体はとても魅力的な悪人ではあったんですがね。

そう、そうなんですよ。この映画では、主役であるはずのベイビーがもっとも魅力が薄い存在になっちゃってるんです。唯一関心出来たのは、ベイビーがいつもイヤホンで音楽を聴いているのは、幼い頃の事故の影響で止まらなくなった耳鳴りがあるからって設定ぐらいなんです。

耳鳴りは私も経験があって、低音で音楽をかけてみたり、耳栓をつけたりと悪戦苦闘したことがありましたからね。結局落ち着いた解消方法は「エアコンの音で誤魔化す」でしたけど。

あ、忘れるところでした。そういえばヒロインがいましたね。はい、彼女についてですが……

ハッキリ言って何の印象も残ってない。恋愛部分の脚本が凄く雑なので、何で彼女があそこまで主人公に付き合うのかが分からない。

「それが恋ってもんだぜベイビー」って言われてしまえば、反論のしようがありませんが、もう少し丁寧に描いて欲しかった。

でも、ラストは良かったですね。それまでの展開が主人公達に対して余りにも独善的過ぎたからというのもありますが、この終わらせ方は意外でした。きちんとベイビーの人生にも非があるってことを伝えています。

多少甘いですが、そこは目を瞑りましょうという感じです。このラストがなかったら、かなり低評価になっていたかと思います。

とはいえ、一番の見所であるはずのカーチェイスシーンは冒頭が最高潮でその後は尻すぼみ。さらには、天才的なドライバーなのに、かなり頻繁に一般車にぶつかられたりする。どう切り抜けるかにハラハラドキドキするっていうよりは、ベイビーがいつミスるか心配でドキドキするってどうなんでしょう。

じゃあ、ストーリーに力が入っているかって言うと、全然そんなことなくて、大事なバックボーンがほぼほぼ削られているせいで、軽いものになっちゃってる。終盤のドク(ケヴィン・スペイシー)の行動も意味不明。

何故この映画の評価が異常に高いのか私には理由不明でしたが、終わってしまえば、「見て良かったのかな?」って感想には至ったので、良しとしましょう。主観的には中の上ぐらいの映画ですね。

ただ、この感想には結果的に刑務所に入ることになる彼への同情も含まれていることを最後に付け加えておきます。絶対、お尻を狙われるタイプです。

ムショに車はないぜ、気を付けな。ベイビー。

もうこうなると、ベイビーって言いたいだけですね。本作自体もそんな映画でした。

本作の名台詞

通称ベイビーまだ喋れん

出典:ベイビー・ドライバー/VOD版

役名:ドク
演:ケヴィン・スペイシー