スコア:814/999
出典:ワーナー・ブラザース
『エスター』
【あらすじ】
3人目の子供を流産した事で不安定になっているケイトは、3人目の子供に与えられたはずの幸せをせめて別の子にと、エスターを養子を向かい入れる。はじめは家族の一員として、ごく普通に過ごすエスターだったが……
【作品情報】
公開:2009年7月24日(アメリカ)|2009年10月10日(日本)/上映時間:123分/ジャンル:ホラー/サブジャンル:サスペンスホラー/映倫区分:R15+/製作国:アメリカ/言語:英語・アメリカ手話
【スタッフ】
(監督)ジャウム・コレット=セラ/(脚本) デヴィッド・レスリー・ジョンソン/(音楽)ジョン・オットマン
【キャスト】
ヴェラ・ファーミガ/イザベル・ファーマン/ピーター・サースガード/ジミー・ベネット/アリアーナ・エンジニア/CCH・パウンダー
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ポイントレビュー
■エスター役のイザベル・ファーマンの演技にガチで戦慄
ポイント:281/333|評価:GOOD
エスター役のイザベル・ファーマンは、日本が誇る芦田愛菜大先生とタメ戦……いや、ひょっとしたら、それ以上の演技力がある子役かもしれない。あぁ、まだ怖いよ。
ストーリーが秀逸なことも、彼女の高評価を手助けしているのかもしれないが、この演技は天から与えられた格別の才能がなければ、どうこう出来るもんじゃない。結末を迎えて、どうして彼女がああいう演技をしていたのかが分かるのかも凄い。大人顔負けってまさにこのこと。
本作の原題は『Orphan』で、直訳すると『孤児』という意味らしいけど、『エスター』に変えて正解だね。今回については。たまには邦題も仕事するから困ったもんですわ。だってこれ完全に『エスター』の話だもん。
■日本人の感覚にも合うアメリカンホラー映画
ポイント:241/333|評価:GOOD
ホラー映画をこんなに無駄なく仕上げないで欲しい。無駄が魅力みたいなところあるでしょうよ。すんません。イチャモンつけたかっただけです。
でも本当に始末の悪い映画でした(褒めてます)。
恐そうな音楽が流れて、振り向くとエスターが居たり居なかったりっていう、ホラー映画のスタンダードを抑えつつ(やらしいことをしてるとヌッと現れたりとか)も、微妙に禁じ手も使ってくるから、彼女の行動の先がほとんど読めない。
ホラー映画にはビックリさせる恐怖と精神を震えさせる恐怖の二種類があると思っているんですが、その両方をやっている稀有な作品だから、もう落ち着く暇がありません。頭空っぽにして、脳内突っ込みしながらでは見られないお話です。
あんまりアメリカのホラー映画って日本人の感覚と合わないと思っていたんだけど、本作はだいたいの日本人がイケる作品なんじゃないですかね。
そして何よりもオチに納得できるのが素晴らしい。頼むから余計な派生作品作るなよって感じです。エスター役の演技も素晴らしい。『危険な遊び』のマコーレ―・カルキンを彷彿とさせます。
そんでもって、主人公ケイトの実の娘役のアリアーナ・エンジニアの愛らしさがヤバイです。この子に何かあったら、私はエスターを許しません。彼女がどうなるのかは、本編をどうぞ。
因みにアリアーナ・エンジニアご本人も作中の役どころと同様に難聴を抱えていらっしゃるそうです。
■自分の嫌な部分を垣間見られたのも含めてホラーでした
ポイント:292/333|評価:GOOD
いや、子を持つ母親目線では、恐いには恐かったけど、自分自身の性格の悪さに対して悲しい気持ちにもなりましたね。最初は流産をしてしまった主人公のケイトに同情しかなかったんですが、徐々に彼女が勝手な女に見えてきてしまいました。
冷静に考えると、全然彼女は悪くないんです。でも、「ちょっとそれは違くない?」みたいな感情になって来ます。その自分の感情の変化が何より恐ろしかった。終盤あたりで流石に我には返ったけど、途中、ほんの少しだけエスターを応援してましたからね。
自分が同じ立場だったら、同じ母親として、女として、おそらくケイトと同じようになっていただろうに……
こういう自分の嫌な部分に気づかされることもあるから、ホラー映画ってつくづく苦手だなって思いました。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
結末にある意味救われました
メインレビュアー
お母さん代表/最高評価見る人の人生観にもよるのでしょうが、私の場合に関して言えば、後味は余り良くありませんでしたね。でも、見たことによる後悔もまたありません。
怖かったホラー映画って、視聴者側は、ただ怖がっていれば良いものだとばかり思ってましたが、本作品はその私のイメージを根底から覆してくれました。そういう視点で言っても恐ろしい作品です。
この映画の何が恐ろしいって、主人公のケイトに一瞬身勝手さを感じてしまうところなんです。彼女は過去に3人目の赤ん坊を出産直前で流産してしまったことを気に病み続け、その精神的に不安定な状態から一歩でも前に進もうと、孤児院から養子を貰う決断をします。
作中では、こうした彼女の心の動きをセンセーショナルな映像を交えて描写しているのですが、いざ、養子を貰うと決断した時に、私はアレ?ってなってしまった。
孤児院から子供を引き取り、立派な大人として育てる。
それはとても素晴らしい決意だと思いますし、ワケあって子宝に恵まれなかった夫婦にとっては、一つの選択肢であることは間違いありません。同時に社会貢献にもなります。
でも、何故かケイトに対しては、自分自身が救われる目的で子供を養子にしても良いの?とふと思ってしまった。子供は自身の精神を安定させるための処方薬ではないし、一人の人間の人生に関わる重大なことなのに、自分の心を救う目的で養子を貰ってもいいの?って……
ですが、よくよく考えてみると、彼女のしていることは別に何も間違ってはいなんです。こういう疑念が沸いてくるのは、きっと私がさして苦労もなく、無事に子供をもうけられたからなんですよね(もちろん、私なりに苦労や葛藤はありましたが)。
私が子供を授かったのだって、最初の気持ちは自分が「母親になりたい」という願望を満たしたいがために行動して生まれた結果なんです。人間なのだから、自分の欲するものを求めて、救いを求めて当たり前の話なんです。正しいとか正しくないとか、もうそういう次元の話ではない。
鑑賞後に気が付かされたこうした私の醜い部分は、もっと人の立場と人の気持ちになって考えられる人間だと思い込んでいただけに非常にショックでした。もしもこれが最後にエスターの仕掛けた罠だとしたら、実に恐ろしい映画です。
実際、作中でもそうした場面が多々あって、エスターが智謀策略を駆使して、生まれて来るはずだった3人目の子供の代わりのような不当な扱いをされている養子を演じるので、ケイトはどんどん孤独になっていきます。
エスターがヤバイ子ってだってことは分ってはいるんですが、もしこの子がまともだったら、3人目の子供の代わりに一生を終えなきゃいけないんだろうなという、同情みたいなものも同時に芽生えてきて、見ていて自分でも理解しがたい気持ちになりました。
実際に存在したら、自分の実の子にも手を出すような最悪の養子なのに……
でも、ここでも思ってしまう。養子と実の子供とを分けて考えるのも違うよなぁとか、実の2人の子供に手をかけたのが、実の3人目の子供だとしたら、ケイトはどうするんだろうとか。
もう終盤近くになると、頭の中はぐっちゃぐちゃです。
しかしながら、この映画はそんな私にも救いの手を差し伸べてくれました。
エスターの正体が明らかにされた時です。
あぁ、良かった。そんなに難しく考えなくていいんだって。
正直、この時に明かされるエスターの境遇も可哀そうと言えば可哀そうなお話なんですが、そんなことを考えている余裕がないぐらい頭がパニック状態だったので……あの瞬間はホッと胸を撫で降ろしました。物語の着地としても辻褄が合っているし。
エスターが時折、子供にも大人にも老婆にも見えたのは、そういうことだったんですね。
最後の最後でやっとホラーらしい。直球なエンターテイメントを見せてくれたなって、感じです。いやはや、年齢制限さえ満たしていれば、どんな方にでもオススメ出来る映画ではあるんですが、私としてはとんでもないものを見させられたって感想です。
二度は見たくないかなぁ、また自分の嫌なところを見なきゃいけないから。
もう、エスターも自分も怖いですね。でも人間というものがそもそも怖ろしい生き物なので、仕方がないのかもしれません。
ただ、普通に見れば、極めて優秀なサスペンスホラーって感じの映画なんで、私のようにあんまり深く考えずに見る分にはとても見やすい映画だと思います。
本作の名台詞
もし自分の身に何か悪いことが起きても―いいことに変えようとすればいいの
出典:エスター/VOD版
役名:エスター
演:イザベル・ファーマン