スコア:547/999
出典: ワーナーブラザース
『とんかつDJアゲ太郎』
【あらすじ】
渋谷の老舗人気トンカツ店、「しぶかつ」の跡取り息子であるアゲ太郎は美女を遠くから眺め続けるぐうたらな毎日を送っていたが、DJに弁当を届けた事をきっかけにその美女と接触。クラブミュージックにも目覚める。
【作品情報】
公開:2020年10月30日(日本)/上映時間:100分/ジャンル:ミュージカル/サブジャンル:青春映画,コメディ映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督・脚本)二宮健/(音楽)origami PRODUCTIONS,黒光雄輝 a.k.a. PINK PONG/(主題歌)ブルーノ・マーズ
『ラナウェイ・ベイビー』/(原作) 原案:イーピャオ,作画:小山ゆうじろう『とんかつDJアゲ太郎』
【キャスト】
北村匠海/山本舞香/加藤諒/浅香航大/前原滉/栗原類/伊勢谷友介/伊藤健太郎/池間夏海/片岡礼子/ブラザー・トム
スポンサーリンク
見放題配信
※情報は【2023年1月13日】現在のものです。上記のボタンをクリックすると各VODの作品ページにジャンプすることが出来ます。詳しくはこちらのページをご確認ください。
ポイントレビュー
■とんかつ映像が美味しそうでお腹がぐるぐるグルーヴする
ポイント:199/333|評価:GOOD
クラブ自体はやや苦手ですが、クラブミュージックは大好き派です。思った以上に音楽を重視した構成になっているので、これがなかなか意外性があって良かったかな?あ、ここで言っちゃったら、これから見る人の意外性が少し減っちゃうじゃん!あらら大変だ。
『シックス・センス』の結末を暴露するほどの重罪ではありませんが、なんかこう、全体的に褒められる部分がここぐらいしかなかったんですよね。
出演陣も本気の人のそうでない人の差が露骨だったような……
だけどですね。なんか時間を損したなぁという感覚にはならなかったから不思議です。これをミュージカルとして受け入れてみる(特段製作側がミュージカル映画だと言っているわけではないですが)のは、担当の私ですら若干抵抗がありましたけど、どう解釈しても音楽とその周囲で起こる現象に魅せられた青年の話なのでねぇ。
本作にとって一番優しい視聴スタイルは、やっぱりミュージカル映画、若しくは音楽映画として観てあげることなんじゃないかなって思いました?
あとですね。あくまで作中のワンシーンに過ぎないんですけど、とってもとってもとんかつが美味しそうなんです。いや、この作品、もしもアカデミー賞にとんかつだけの部門があったら、間違いなく受賞作品になれたと思います。
アカデミーとんかつ賞、ほら、そんなに字面も悪くないじゃない?いっちょ新設してみちゃいませんか?ねぇハリウッドの皆さん!?
■コメディ要素だけを評価しちゃうと中の下ぐらいの作品
ポイント:188/333|評価:GOOD
漫画原作の映画化、コロナ過による公開延期というハンディキャップをそもそも背負いながら、ついでとばかりにダメ押しに起こった出演俳優の不祥事も相まって、一部では『呪われた作品』などと揶揄される向きもあるが、アゲ太郎(北村匠海)は頑張っている。
本作の原作漫画の名誉のために言っておくが、別メディアでの作品展開はすでにアニメで経験済みで、その総集編が一部で劇場公開されていたりもする。決してクラブ的なイケイケのノリで製作された映画ではないことは、フォローをしておきたい。
だが、私は漫画原作もアニメも見ていないので、その辺りの気合い入れ具合いの比較が出来なくて非常に残念だ。また、俺の場合はコメディ映画と決めかかって見てしまったので、これから視聴される方はそちらにもご注意を頂ければと思う。
ハッキリ言おう、本作はコメディ映画としては中の下ぐらいの作品ではあるが、青春ドラマとしては中の上ぐらいに入れる資質を持った作品である。何事も最初から決めてかかって見てはいけないな。
視聴前に相当ハードルが低くなっていた作品であった部分が幾分評価に影響を及ぼしている感は否めないものの、コロナが完全に収束して10数年経ったあたりに改めて見ようかなというレベルには達しているのではなかろうか。おそらくその頃にはその決意も本作のタイトルも忘れてしまっているだろうが……
■青春映画として締めるところは締めているけど……
ポイント:160/333|評価:BAD
一時の気の迷いで衝動的に再生ボタンを押してしまった作品。こういうパターンで観た作品の場合、8割は数時間前の自分を呪いたくなるようなお話で、残りの2割は案外良かったりして「初めて自分で自分を褒めたいと思います」と、日本のメダリストの名言を失礼にも引用して満足感に浸るのがお決まりなのですが、今回はそのどちらにも属さない珍しいケースとなりました。
公開当時に舞台裏で起きてしまった不祥事をスパイスにしてみると、深い見方が出来なくもないんですが……本作は炎上商法をウリにした作品ではなく、頭から爪の先まで真面目に作られた作品ですからね。あくまで不運に見舞われただけの被害者です。
そこで、それらの要素を出来うる限り頭の中から排除して視聴に臨んでいたわけですが、アゲ太郎の友人役の栗原類に対しての「元気そうで良かった。頑張ってた」ぐらいの感想しか抱けませんでした。
青春コメディミュージカル(長いな)として観た感想としても、これを決して安くはない映画館で観ていたとしたら、「損したな」と思う方が多くても仕方ないなという思う方がいてもおかしくありません。あのぐらいの映像では、映画館はクラブフロアにはならないような気がしました。そっち目的なら本作の観賞券代をシンプルにクラブイベントのチケット代に充てた方が無難なんじゃないかな?
ただ、物語として話をきっちりと締めているところは、映画ファンとして好感が持てたことだけは付け加えてさせて下さい。お話をテーマを途中で投げなかったからこそ、可もなく不可もなくな本作を最後まで見て「特段ガッカリはしなかった」という部分は大いにありましたから。物語というのはどんな作品であれ終わらせてなんぼですからね。
なお、本作にはプチエンドロール後のオマケ部分があります。本編でやり切れよというレベルのかなり重要な部分になってしまうので、視聴される方はお見逃しのございませんように。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
視聴の際は目ぼしいとんかつのご用意を忘れずに
メインレビュアー
ミュージカル担当/最高評価音楽を題材にした映画というものは、スポーツ映画と同様に、挫折アリ、ひょんなことからの復活アリ、恋愛要素アリの概して同じようなストーリー展開になりがちですが、本作もそれらの例に漏れず、王道テンプレートに沿う形でお話が進んでいきます。
中盤あたりまで視聴すると、同じく音楽青春映画の『8Mile』に設定と演出が似ているような気がしてきて、もしかしたらオマージュしているのかな?とも思いましたが、それは少しばかり色眼鏡で見過ぎました。多分というか、絶対そんなことはありません。
最初のイベントで失敗したり、ビビッてトイレに入ったり、アホで仲間想いの友人達が側にいたり、っていう表現が使えなくなってしまったら、王道系作品は大体同じ、こういうジャンルは大体友達になっていまいます。
失礼……しかしながら、この『とんかつDJアゲ太郎』は王道を行きつつも、細部がほど良く日本人向きに出来ているんですよ。
コミカルな作品名に騙されてはいけません。予想に反してコメディシーンは少なかったですしね。劇中の選曲も踊り出したくなるようなタイトルから、アゲ太郎の心情を表現したタイトルまで、それこそ優秀なDJのようにシーンとシーンの繋ぎを何よりも大事にして、お話を盛り上げておりました。
終盤に入ると、肝心の本筋がどうでも良くなって来てしまう欠点はありましたけど、クラブミュージックは盛り上がってなんぼなんですから、それを題材にした映画だって盛り上がってなんぼ。ウスターソースな作品かと思わせておきながら、実は中濃ソースの作品だったなんて、なかなか肉いとんかつ映画です。
キャベツを刻むリズムも、ジューシーな豚肉が薄っすら黄色い乳白色の衣をまとって揚がる音も、見事にお腹にささるグルーヴを盛り立てていました。
だけど、結末でアゲ太郎がコンテスト結果発表に出なかったのは何でなんでしょう?とんかつ業もDJ業も両方大事とか、お客さんが楽しんでくれればそれでいいってことが言いたかったんでしょうけど、いやいや、コンテストに出たんだったら、そこはプロとして最後まで参加しようよ、と私は思ってしまった派です。
これってとんかつ屋で言えば、美味しそうな揚げ音と肉汁の香りを店内に散々漂わせて食欲を最高潮に盛り上げ、挙句の果てには出来上がったとんかつにシャキシャキのキャベツまで添えて客に喰らわせておきながら、「いや、どこのとんかつよりも美味しかったとかそういう感想はいらないんで……」みたいなもんですよ。
そりゃ人気店ならそんな感想聞き飽きたって感じかもしんないけど、自ら望んでコンテストに出てるんですよ。本作では新たな夢であるDJのコンテストでしたけど、これが家業のとんかつコンテストだったら一体どうしていたんでしょう?
レビュー前半で『8Mile』と似通った部分について少し触れましたが、この点では『8Mile』のラストと本作のラストは、似て非なるものですからね。詳しくは本編を観て確認して頂きたいですが、『8Mile』ではこういうところをオチャらけて終わらせるようなことはせず、明確なメッセージ性を残した上で結末を迎えますから。
この最後の部分に関しては、もっともっと文句を言ってやりたいんですが、本作を思い出しながらレビュー書いていたすんごいお腹が減ってきてしまったので、これぐらいにしたいと思います。そこ以外は意外と来ななる描写や演出もありませんでしたしね。
なので、トータルで評価すれば、毒にも薬にもならないお話ではあるものの、そこに悪気が全くない素直な作品と言えるのではないでしょうか?少なくとも私にとっては観やすい映画でございました。音楽を題材にした映画って、振り切り過ぎるとやたらと難解なだけの作品になってしまいますからね。特段主張したいことがないのであれば、単純でいいんです。
ただし、視聴の際には大きな注意点がございます!
(ここは視聴済みの方向けのレビューですが)近くに目ぼしいとんかつ屋さんか、あらかじめとんかつ弁当をご用意しておくことを強く強く推奨致します。たぶん我慢出来ません。
本作は揚げ物狂いにはたまらない映像が画面に広がり、涎的な天使の汗がお口いっぱいに広がってしまう映画となっております。この点を考慮すると、本作はクラブDJ対とんかつという面では、後者に軍配が上がった奇妙な物語と言っても過言ではありません。
それだけにDJ部分にももう少しカラシが欲しかった惜しい映画ではありますが、ダイエット中の方には、これ以上敵な映画はないでしょう。読んでる方にとっては若干意味不明な感想かもしれませんが、そこはクラブ的な揚げアゲのノリで何となく伝わってくれたら嬉しいです。
いや、ちょっと待てよ……そろそろ食事の時間にしたいけど、これでレビュー終わるのも何か癪だなぁ。食欲に負けたレビュアーみたいで悔しいなぁ。
そういえば、本文でああは書いたけど、とんかつにウスターソースってのもアリっちゃアリなんだよね。でもここはやっぱしスタンダードに中濃でいって欲しかったよねって、書きたかったんだっけ?
……っていうか私はいきたい。中濃でいきたい。とんかつが食べたい。もう塩でもいいよ。何ならケチャップでもいい。いや、それは流石にダメだ。それだと、とんかつじゃなく、イタリアン的な何かだ。
まてまて、ソースを選ぶ前に本体をミックスにするか選ばなきゃ……とんかつだけだとスクラッチがちょい弱いからなぁ。かと言ってドタるのもイヤだし……エビフライとかアジフライも付けたいけど、味がハウっても困るしなぁ……どうしょう。どうする私!?
あれれ、今気が付きました!とんかつとDJって何か似てるね!きっとそれが言いたかった映画(注)なんだよこれ!今なら最初のアゲ太郎の気持ちが分かるよ!分かる!
凄いよ私!マジ凄い!!!私が凄い!!!
さぁて、いざ入らん…目前の『かつや』へ……
注:元々そういう設定のお話です。
本作の名台詞
ブタを揚げるかフロアをアゲるかに大した違いはねぇ!
出典:とんかつDJアゲ太郎/VOD版
役名:勝又揚太郎
演:北村匠海