邦画『残穢 -住んではいけない部屋-』/シャンプー中に背後に感じる視線ってこれ?

スコア:495/999

残穢出典:松竹
『残穢 -住んではいけない部屋-』


【あらすじ】

怪奇作家でありながら怨霊の類を信じない私は、読者である久保さんの体験談に興味を持つ。彼女は自室に何かがおり、さらには前の住人は引っ越した先で自殺したという。二人は真相を探るべく共同して調査を始める。


【作品情報】

公開:2016年1月30日(日本)/上映時間:107分/ジャンル:ホラー/サブジャンル:オカルトホラー/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督)中村義洋/(脚本)鈴木謙一/(音楽)安川午朗/(主題歌) 和楽器バンド『Strong Fate』/(原作)小野不由美『残穢』


【キャスト】

竹内結子/橋本愛/滝藤賢一/佐々木蔵之介/山下容莉枝/坂口健太郎


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ポイントレビュー


■リアルな怪談が苦手な人にとっては、たぶん相当怖い

試分 書人
試文 書人
ホラー担当
ポイント:202/333|評価:GOOD

久方ぶりの正統派ジャパニーズホラーという感じがした。夜に1人きりになることが多い人は、視聴後しばらくの間はドアを開ける度、ふいに後ろを振り返る度に、ビビるハメになる恐れがあるから要注意だ。

ホラー映画の怖さタイプとしてはナメクジのようなじっとりとした怖さで、不安感、緊張感のタイプは、小さな赤ちゃんゴキブリが自宅でお披露目された後の2週間ぐらい。「1匹見かけたら30匹」「そろそろ別の赤ちゃんゴキブリが成長している頃」「赤ちゃんを産んだデカいお母さんゴキブリが出て来るかも」。

こうしたまだ見ぬ何かが自宅にいるかもしれないという恐怖を忠実に映像化した点では、なかなかの良作である。ただ、いかんせん地味だ。突然心拍数が上がる話ではなく、脈拍数が上がったままの状態が続く話なので、それに慣れてくると少々眠くはなってくる。

言ってみれば、本作の怖さは、かってみて初めて分かる成人病の怖さみたいなもんだから、体質的に嗜好に引っかかる人と引っかからない人がいるんじゃないだろうか。ホラー映画ファンの間でも意見が割れる作品だと思う。


■相関図が欲しくなるほどの登場人物の多さ

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:159/333|評価:BAD

登場人物がかなり多いので、名前と顔を一致させるのに苦労をしますが、基本的に初登場時には一応、氏名と肩書きのテロップを付けてくれる親切設計となっています。

ただ、「~家の」といった、古臭い言い回しで表現されるだけの登場人物達もいるので、そこを覚えられるかどうかが勝負所です。人によっては相関図を作りながら見ないと、わけがわからな仕様になっています。

かく言う私もその一人で中盤までは自分なりの簡単な相関図を作りながら、見ていたんですが、途中で明らかな間違いに気が付いてしまったこともあって、最終的には諦めました。

ラストが良かったらもう一度見直して相関図を完成させようとも思ったのですが、残念ながら私にとってはそこまでの作品ではなかったですね。結局印象に残ったのは、女子大生の久保さんの圧倒的な取材力くらいのものでした。あれは素人さんのフットワークじゃありません。

しかもミステリー研究会に所属してるって……っていうか本当に実在するんですか?ミステリー研究会。人生でそのような研究会に所属していたことがある人に今だかつて出会ったことがありません。ミステリー研究会自体が私にとってはミステリーな存在です。


■創意工夫を凝ら過ぎたせいで、返って安っぽくなってしまったような……

山守 秀久
山守 秀久
ドキュメンタリー担当
ポイント:134/333|評価:BAD

登場人物を所属と名前のテロップ出しで紹介する手法を取っているのは、おそらくドキュメンタリー調の作品に仕上げたかったからなのでしょうが、私の目には崖で犯人を追い詰める2時間サスペンスドラマにしか映りませんでした。

2時間に満たないホラー映画ですが、再生している時間も何処か長く感じられます。次々と怨霊が憑りついた部屋に関わった人々が不審な死を遂げるという設定は分かるのですが、その設定を生かし切れていない上に真相究明の取材パートが冗長です。

ある問題があって、それに関わった人のインタビューシーンを放映するのは、これまたドキュメンタリーの定石ですが、それはそこに真実が隠されているから聞く価値があるのであって、心霊系の作品でそれをやるのは、相当無理があります。よほど現実味がないと、色んな人の作り話を聞かされるだけの物語になってしまう。

本作はそれに加えて登場人物達の関係性が複雑だから尚更です。話がややこしい上に、画面の向こうの世界のドキュメンタリーとあっては、知的好奇心も失われていくばかりです。作中で発生する心霊現象も「部屋に1人ぼっちの時あるある」を並べたようなものばかりなので、中盤ぐらいで飽きも来てしまいました。やりたかったことは分かるんですが、もうひと踏ん張り欲しかったです。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

オカルトホラーとしてのルール設定が甘くて混乱してしまう

山守 秀久
山守 秀久
メインレビュアー
サスペンス担当/最低評価

怖くなるぞ、怖くなるぞ、怖くなるぞ、を繰り返し続けた果てに、本作が最終的に用意した結末は、「これからもっと怖くなるかもね」でした。

冒頭から感じたのは、やはり映画版『リング』は偉大であるというこです。這いつくばる人間の怖さも貞子が開拓した分野ですし、忌々しい過去の出来事に付随して怨念が消えずに残り、むしろ増殖していくのも『リング』の功績が大きいと言えます。

そして、本作は二十数年の時を経ても、この『リング』の域を超えることが出来ませんでした。レジェンド相手に良く戦ったと褒めたい部分がないこともないのですが、三白眼気味の瞳のアップ映像など、一部のシーンに同作のオマージュとも受け取れるような場面があったので、類似作品の中ではマシな方でしたという評価に留めておきたいと思います。

ただ、本作のストーリー構成に関しては、どちらかと言えば1995年にフジテレビで放映されたスペシャルドラマ版の『リング』に似ています。映画版のように映像による見た目の恐怖に重きを置いていません。

ごく小さい頃に見てしまったことも関係しているのでしょうが、私はこの最初代スペシャルドラマ版の方が好きだった人間なので、本作の構成は最初は自分に合いそうだと思っていたのですが、悲しいかなやはり衝撃度が段違いです。怨霊と、それに憑りつかれた人々の関連性がひどく難解だったこともこのような感想に結びついているかと思われます。

本作のレイティングはG(全年齢)なので、小学生でも見ることは出来ますが、低学年ですと余程の秀才でもない限り、物語の全体像をつかむことが極めて難しい内容です。もしも当時私が見たのがフジテレビ版『リング』ではなく、本作であったとしたら、夜トイレに行くのが怖くなるだけの思い出しか残らなかったでしょう。

そういう意味では本作の方が大人向きの作品です(最初代リングは若干映像的に子供にはマズイシーンがありました)。

とはいえ、実在の事件をモデルにしたようなプロットがちょこちょこ混ぜられている作りには、心なしか惹かれるものがありました。

床から赤ん坊が沸いて出てくる原因である作中の嬰児大量殺人事件は、実際に1944年に日本で起きた『寿産院事件』をモチーフにしているじゃないだろうか?と合間、合間に想像してみるのは楽しかったですし、「私宅監置」という過去日本に実在した悪しき制度を、そのまま怨霊関連の話題に紐づけたりもしていて、そのマニアックな知識量の多さに関心させられた部分があったのは確かです。

しかしながら、怨霊そのものが怖いとは思えないのが致命的でした。怨霊が憑りつくルールと怨霊が持つ能力が見る側にとって安定していないんです。

視聴者の見た目に映るのは、あくまで這いつくばって迫ってくる人影みたいな得体の知れないものだけで、怨霊が具体的に肉体に対して何かをするシーンと言えば、イタズラ電話ぐらいしかありません。自殺や心中してしまった人達が何故そうした行動に出てしまったのかは、こちらで想像するしかない作りになっています。

怨霊が憑りつくことで人の行動をコントロールできるのか、それとも薬物依存患者の禁断症状のように、幻覚(怨霊)を見続けて精神的に参ってしまうから、結果的にそのようになってしまうのか、その答えが何処にも載っていません。

私が考察するに、おそらくは前者のパターンだと思われるのですが、ただそれだとちょっと全体との辻褄が合わないんです。コントロールできたのだとしたら、女子大生の久保さんに真相を探らせる意味がありません。ヘタをしたら、成仏させられてしまいます。

後者に至っては、完全に怨霊側は受動的にしか被害者達の行動を制御できないことになりますから、お話にもならないパターンです。

せっかく、個々のサブプロットにおどろおどろしさを感じることは出来ても、個人的には、こういった不親切な作りの影響で、どんどん気持ちが離れていってしまいました。

あまりにもスッキリしない設定だったので、最後はこの怨霊達は前者と後者の能力を併せ持ったウイルスのようなものであると、無理やりに結論付けてラストまでキッチリ見ましたが、エンドロールの後の映像まで見た最に「それも違うのか……」と、これまたガックリです。

実際、結末に向かうまでの駆け足具合いが本作は酷くて、「もう~ここら辺で終わり、終わりで~す」みたいなノリでお話の決着がついていきます。しかもそれを事件の当事者であり、事件調査の言い出しっぺである久保さんが言い出すんです。

いくらホラーでも謎解き要素を含めている以上、少しぐらいは最終調査結果みたいなものが必要だったんじゃないですか?あまりにも視聴者に全てを投げ過ぎです。

ラストは結局こんなんです。

調査を終わらせてみたら、理由は良くわからないですが、みんな無事だったみたいです。憑りつかれている皆さんには、すでに日常が戻っています。赤ちゃんの心霊画像が映り込んだりしていましたが、大丈夫そうです。でも、その数年後、また私の自宅で何かが動き始めました。話はここでおしまいです。エンドロールの後の意味深な映像をご覧ください。

こんな終わり方はいくらホラー映画とはいえ酷いです。あまりにも悔しかったのでもう一度見ました。改めて考察し直せば、ウイルス説はそこまで間違っていませんでした。

久保さんは途中まではマトモでしたが、怨霊が元居た家(土地)を宿主に人から人に感染るウイルス性怨霊に徐々に脳を支配されていった結果、とうとう行動を制御される段階になり、怨霊の支配能力によって調査を打ち切ることを自らの意志とは無関係に提案してしまいます。

それを受けた私は、その時はまだ支配率もそこそこでしたが、その後次第に浸食され、止めの怨霊からの電話で完全に自我をコントロールされてしまう存在になってしまいました。他の皆も同じく危ないでしょう。さらには呪われた絵画も、住職の前で歪んでいます。怨霊はまで消えていません。もう色々とおしまいです。

こう考えてみると、私としては納得がいく話になるんですが……やはりまだ見落としているところがありそうです

でも、私はそろそろ考えてもキリが無さそうなお話だと思い始めたので、この辺りで本作を考察するのはヤメにしておきます。もしかしたら、私にも怨霊が憑りついたのかもしれません。

まだ見たい作品は沢山あるので、出来ればもう少し無事でいさせて貰いたいものですが……半世紀近くも無関係な人達に八つ当たりをしているような怨霊達ですから、私のような臆病者には、結構グイグイ来られるような気はしています。

本作の名台詞

私… このところ 自分が 何を追いかけていたんだろうと 思うことがあるんです

出典:残穢 -住んではいけない部屋-/VOD版

役名:久保さん
演:橋本愛