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【あらすじ】
明智光秀が討たれると、織田家の後継者を決めるべく清州城で会議が開かれた。家老筆頭の柴田勝家は信長の三男の信孝を擁立し、主君の仇を取り発言力を持つようになった羽柴秀吉は次男の信雄を候補に立てるが……
【作品情報】
公開:2013年11月9日(日本)/上映時間:138分/ジャンル:コメディ/サブジャンル:歴史映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督・脚本・原作)三谷幸喜/(音楽)荻野清子
【キャスト】
役所広司/大泉洋/小日向文世/佐藤浩市/妻夫木聡/浅野忠信/寺島進/でんでん/松山ケンイチ/伊勢谷友介/鈴木京香/中谷美紀/剛力彩芽
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ポイントレビュー
■脚本が大泉洋の持ち味を消しちゃってない?
ポイント:158/333|評価:BAD
秀吉役の大泉洋は大好きだけど、秀吉の内なる狂気を表現し切れていたかと聞かれると、答えは俺としてはNOと言いたくなってしまった。コミカルな部分は十分魅力を発揮していただけに、ちょっともったいない。
あくまで脚本に従った結果なんだろうけど、大泉洋らしい新しい秀吉像みたいなものは、期待していたほどには感じられなかったかな。真面目な題材をこねくり回して、無理にクスッとさせようさせようとしてくる脚本のせいもあるんだろうけどね。
大泉洋には別の脚本で再挑戦して欲しい感じ。
うん、惜しい。天下取りかけてた信長ぐらい惜しい作品だった。
■もっと会議の場面に力を入れて欲しかった
ポイント:115/333|評価:BAD
タイムマシンに乗って過去を見て来たわけではないので、何とも言えませんが、歴史好きとしては現実味に欠けるかな……といった印象です。コメディに走り過ぎるあまり、駆け引きの部分がやや御座なりになってしまっている感があります。
人たらしと言われた秀吉の性格上、作中のような動きを見せたこともあったのでしょうが、史実とは離れた脚色部分に力が入り過ぎていて、会議そのものの重要性が全体的に伝わり辛いです。
清州会議を清須会議と改変しているのには、そうしたフィクション部分が強い作品ですよというエクスキューズの意味を孕んでいるのはわかるんですが、それならもっと、その方向性で突っ走って欲しかったです。完全なるフィクションとして評価しても、歴史上の一大会議に対する甘えが散見されます。
原作・監督・脚本が三谷幸喜とのことでしたので、『12人の優しい日本人』のような話を期待していただけに残念です。戦ではなく、会議によって天下の道筋が決まるという戦国時代としては、極めて珍しい出来事が素材なのですから、コメディ的な人間模様よりは、やはり会議の部分に力を入れて欲しかったです。
■争うのがこの面子だったら、秀吉の立身出世も納得
ポイント:190/333|評価:GOOD
なんだなんだ?この上の私の肩書?まぁ実際嫌いだから別に良いですけど……
ううん…面白かったですね。次男の信雄を筆頭に戦国時代の武将達がマジであそこまでお馬鹿さんだったとしたら、普通に考えればありえない日本史上空前の豊臣秀吉の出世劇も「何とかなるのかもね」という風に思いました。
作中でも良く見れば一番まともなんですよね。大泉洋の普段のキャラのせいで、かなり裏に回ってしまっていますが。新たな切り口って意味では成功していると思いましたし、会議っていう地味な作業にしては楽しい気分にさせてくれる映画ではありました。
でも、歴女とか怒るんじゃないかなぁ、これ。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
最後が史実に丸投げ……ただし剛力彩芽にパンチあり
メインレビュアー
歴史好き代表/最低評価兎にも角にも柴田勝家のキャラ付けと行動原理について物申させて頂きたいです。
役所広司の演技には問題ないんです。史実でも実直な人であったと言われている家臣ですから、それこそ柴田勝家の如く忠実に原作、脚本に従わざるを得ないわけでして、ああした立ち回りになるのは致し方ないと思います。
流石に脚本を手に入れることは不可能だったので、原作を読んだ限りの感想にはなってしまいますが、彼は原作内で描かれた通りに完璧にほぼ役柄をこなしていたと言っていいでしょう。
ですが、そこが問題なんです。元々の作中での柴田勝家の人物像が余りにも戯れにいじくられ過ぎているので、それを天下の名優に完全に演じ切られてしまうと、それがさも柴田勝家の実際であったように視聴者に取られてしまう。
勝家に関わらず、歴史上の人物は史実を下敷きにして様々なキャラ付けがなされ、彼の上司であった信長などは、美少女になったり、妖怪になったりと、それはそれはひどい有様です。
ですので、そこはもう創作の世界として割り切れば諦めはつくというか、むしろ望むところという感じなのですが、本作に関しては、この『清須会議』中の態度と行動が史実に結びつかない。
人物から会議の流れまで、通説に反して様々な創作を施しておきながら、会議終了後は史実通りですよと言っている。これは大いなる矛盾と言わなければなりません。
本作の柴田勝家では私の中ではどう考えても賤ヶ岳の戦いに突入しそうもないんです。
無論、歴史の通説なんていうのは、あくまで学説であって、何が真実で何が虚実なのかは分かったものではありません。本当に作中のような間の抜けた人物であった可能性は否定できませんし、あのような後継者の決着の仕方になったこともありうるでしょう。
しかしながら、それであれば、「後は通説通りですので、この後どうなったかは教科書をご確認下さい……」といったような終わらせ方はして欲しくなかった。さもこの『清須会議』が新説かのような描き方をして欲しくなかった。
そう思います。
ここまであれだけふざけて来たんです。どうしてあの二人の状況から賤ヶ岳の戦いに突入したのかも、おふざけのタッチでふざけ切るべきでした。
最悪ナレーションでも良いんです。そうしてくれないと、この描き方だと歴史を愛する視聴者としては辻褄が合わなくなってしまいます。
先ほど述べた通り、歴史という如何様にも解釈が可能な題材を扱っている以上、創作物として、武将がどんな姿になろうが、転生してきた人物を食客として迎え入れようが、全く構いまわないわけですから、ちゃんと創作物として肝心の結論(結果、秀吉の織田家の乗っ取り成功)に繋げて欲しかったと思います。
いや、映画自体はつまらないってほどではないんです。ただ、私としては、こうした描き方の影響でどうしても置いてけぼり感が出てしまう作品であったと言わざるを得ない。
え?このままこんな感じで進んでいって、本当に二人は対立するの?と
結局、通説に話が繋がっていくという終わらせ方を選択をするのであれば、それなりの工夫をして視聴者になるほどと頷かさせなければならないと、私は思います。映画として、結論ありきでスタートしている物語のプロセスが、その物語が辿り着くべき結論から脱線したままでは、創作物として不完全なのではないでしょうか?
また、脱線したまま突き進むんなら、突き進むで到着点を新たに作ることが出来るのに、それをしなかった理由も分かりませんでした。どうして最後に丸投げしてしまったのでしょう。綺麗にまとめたいというのは分かるんですが、事実があるものに対して、適当に丸投げするのはダメです。
何だか怒ったような神経質なレビューになってしまいましたが、歴史好きにとっては、受け取りようによっては、相当な駄作に感じられるかもしれません。
私自身も駄作とまでは言いませんが、出来ればこれからは、こういう歴史モノを避けて映画を楽しんでいきたいな程度には低評価です。
ただ、作中で評価に値するものが一つだけありました。それは松姫です。
剛力彩芽殿、あれは本当に頑張りましたね。強烈なパンチ力がありました。あれについては、歴史モノについてどんな持論をお持ちの方でも文句の出ようがないんじゃないでしょうか?
ネットに落ちている本作の松姫の画像を見る度に、お歯黒の文化が廃れてくれたことに心から感謝したい気持ちになります。あれ史実じゃないといいんですけどね……
本作の名台詞
お前ぇ なぁに言ってんだよ
出典:清須会議/VOD版
役名:柴田勝家
演:役所広司