スコア:870/999
出典:アミューズソフト
『アヒルと鴨のコインロッカー』
【あらすじ】
親元を離れ仙台の大学へ入学した椎名は、入居先の隣人の河崎から書店にある広辞苑を一緒に奪おうと誘われる。流されるままに手伝うハメになった椎名だったが、これを契機に彼はある事件に巻き込まれていく事になる。
【作品情報】
公開:2007年6月23日(日本)/上映時間:110分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:ヒューマンドラマ/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督)中村義洋/(脚本)中村義洋,鈴木謙一/(音楽)菊池幸夫/(主題歌) ボブ・ディラン『風に吹かれて』/(原作)伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』
【キャスト】
濱田岳/瑛太/田村圭生/関めぐみ/大塚寧々/松田龍平/なぎら健壱/キムラ緑子/キムラ緑子/岡田将生
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見放題配信
※情報は【2022年11月5日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。
ポイントレビュー
■ボブ・ディランの『風に吹かれて』と完全マッチング
ポイント:282/333|評価:GOOD
冒頭でボブ・ディランの『風に吹かれて』が流れた時点で絶対失敗作にはならないと確信しました。なんて耳ざわりが良い曲なんでしょう。そして、その曲になんて合っている物語なんでしょう。微妙に長ったらしく感じる時間帯はありましたが、「本作は丁寧な作品だから仕方ありません」と食い気味にフォローしたくなるお話です。完璧とまではいいませんが、邦画界の珠玉の一作と言っても差し支えない映画です
■そのまま連続で再々生してしまったほどの出来の良さ
ポイント:303/333|評価:GOOD
ジーンと来るってこんな感覚だったのね。周囲にいる本作視聴済みの人々がやたらと褒めちぎっていたから、評価を逆張りしてやろうという意気込みで見たんだけど、それは徒労に終わった。エンドロールも最後まで真っ直ぐに眺めた。これは世にも奇妙な好みが別れそうで別れない映画だ。そして、すぐにもう一度見返したくなる映画だ。こんちくしょう……合計で4時間近くかかっちゃったじゃないか。あぁそうだよ。エライ面白かったよ。
■わけわかんない事を言い出す序盤からの完璧な終盤
ポイント:285/333|評価:GOOD
私が勝手に提唱している、「最後にタイトルが出る作品に良作多し」を地でいく作品。最序盤から隣人の河崎(瑛太)がわけわかんないことばっかり言っていたので、「賞レース狙いの芸術映画かよ」って肩を落としていたんですが、心から謝罪致します。全部意味がありました。これに勝てる邦画ってなかなかないんじゃないかな?洋画ではまずリメイクが出来ない雰囲気だし……恐れ入りました。邦画のイメージ変わったで賞をあげちゃいます。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
あの「後は視聴者のご想像にお任せします」が許される稀な作品
メインレビュアー
サスペンス担当/最高評価俺が大学生になって初めて一人暮らしをした時は、主人公の椎名(濱田岳)と違って今時挨拶しに行くもんなのか迷った挙句、結局は行かず仕舞いだったなぁ。
隣人もたぶん大学生だったんだけど、作中のドルジっぽい人(田村圭生)みたいな対応されてもイヤだしねぇ。って感じで、学生時代のどうでもいいい思い出が蘇ってくるところからスタートした本作品。
濱田岳、意外と歌うめぇ。河崎(瑛太)、言ってること意味わかんねぇ。なんだ、何が言いてぇんだよ。「君はどうしてディランを歌えるんだい?」ってなんなんだよ。
そもそも超名曲だろ?歌えたっておかしくないだろ?意味深な言い回ししてんじゃねーよ。そんでついでに初対面で人様の淡い恋物語を聞き出してんじゃねーよ。心の傷に粗塩を塗り込むんじゃねーよ。そしてアレだアレ。
「彼には調べたい言葉が二つあるらしい、一つはアヒル、もう一つは鴨」
なんだそれ?わけわかんねーよ。ネットで調べて教えてやれよ。しかも、そのためにわざわざ広辞苑を奪いに書店に強盗に入るってなんだ?
確かに高ぇけどそれぐらい買えよ。あと、それに椎名も付き合うなよ。法学部だろお前。でもって、いざ強盗に入って広辞苑と広辞林間違えんなよ。その時の河崎の「ま、これでもいっか」みたいなテンションも気に喰わねぇ。まぁ似たようなもんだけどよ。
っていうか、そもそも今日び広辞林置いてる書店ってあんのか?その書名では、お前らが子供の時ぐらいにもう絶版になってんだろ?今は大辞林じゃん。どんだけ物持ちがいい書店なんだよ。超不人気店か。
そこは古本も置く書店だったってことで泣いといてやるけど、そんなとこに強盗に入んなよ。可哀そうだろ。多分、その広辞林すげぇ大事にしてたと思うぞ。見た目綺麗だったしな。
うん……本当にごめん。見終わった今となってはそう素直に言える。こういうやり取りも全部意味があったのね。完全なる伏線だったのね。そして、それを漏れなく回収してくれる作品だったのね。
思えば、意味不明なところから始まって、数々のツッコミを入れながら見ていたけど、不思議と途中で面倒臭くならなかったのはそのせいか。知らず知らずのうちに等加速度的に話に引き込まれて行ったもんなぁ。
そしてこれは題名に関してもそう、本作は10年以上前に作られた作品で、ちょうどその頃は狂ったように映画を見ていた時期だったから、評判は聞いていたし、当時いくらでも通い詰めていたレンタルビデオ屋で見かける機会はあったんだけど、どうも題名がね。
あんまりこういう意味深なタイトルって好きじゃなかったから、手に取って裏面のあらすじを読むことさえなかった。でも、今じゃ後悔してる。タイムスリップしてでも、人生の選択ミスの指摘ついでに、これ見とけよって言ってやりたいぐらい。
そうなんだよ。この題名さえも伏線だったっていうね。完璧にやられた。マジごめん。俺、邦画舐めてた。
ったく、俺にオススメしてくれたヤツも伊坂幸太郎原作なら先に言ってくれよなぁ。『重力ピエロ』とか『ゴールデンスランバー』とか書いた人だろ?どっちの映画版も良かったし、こんなの面白いに決まってんじゃんか。
ただ欠点が一つもないわけじゃないかな?後半戦の謎明かしパートはちょい長かった。あと10分ぐらい削ってコンパクトにしてればさらに良かった。求めすぎだけどね。あの時間帯が好きって御仁もいらっしゃるだろうし。
それであの結末よ。結末。ヤバいだろ。色々と計算し尽され過ぎだろ。序盤で椎名が引っ越しの荷物の中にラジカセがないことに気が付いて、母親に電話をかける場面があったけど、あんなどうでも良さそうなシーンでさえも伏線だったのね。普通の映画なら、あれは単なる導入用の日常場面のワンカットでしかなかったろうに。
そんなわけで、マジのガチで伏線に次ぐ伏線が散りばめられまくっている映画。最後の最後の河崎(瑛太)の運命については、「ご想像にお任せします系」なので本当だったらあんまり好きじゃいはずなんだけど、この結末なら観客に丸投げも許せる。
というより、答えを映画として出しちゃいけない話だとさえ思う。ここで明確に描写されちゃうと、きっとエンドロールを迎えた時の余韻が薄れちゃうと思うんだよね。
しかし、ボブ・ディランの『風に吹かれて』は名曲ですな。本作の何とも言えない余韻の影響もあるけど、邦画でエンドロールを巻き戻したのは、もしかしたら初めてかもしんない。
本作の名台詞
呼び捨てにすると 親しく聞こえるだろ?
出典:アヒルと鴨のコインロッカー/VOD版
役名:河崎
演:瑛太