スコア:679/999
出典:アスミック・エース
『メゾン・ド・ヒミコ』
【あらすじ】
伝説のゲイママ『卑弥呼』を父に持つ沙織は借金に追われていた。母を捨てた父を恨み、ゲイそのものも嫌悪していた彼女だったが、父の恋人からの高待遇の誘いにより、父が経営するゲイだけの老人ホームで働き始める。
【作品情報】
公開:2005年8月27日(日本)/上映時間:131分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:ゲイ映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督)犬童 一心/(脚本)渡辺 あや/(音楽)細野 晴臣
【キャスト】
柴咲 コウ/オダギリジョー/田中 泯/西島 秀俊
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見放題配信
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ポイントレビュー
■ドラマなのか?コメディなのか?社会派作品なのか?
ポイント:220/333|評価:GOOD
主ジャンルをヒューマンドラマにするか、コメディにするか、非常に製作陣も迷った脚本だったのではないでしょうか?映画作りの際に、主ジャンルを決めなければならないという決まりはありませんが、それぐらいジャンル分けというのは曖昧なものであるということなのかもしれません。私がもしレンタルビデオ店の店員さんだったとしたら、どの棚に並べるか迷う作品です。
本作は話の設定や演出から想像すると、明らかにコメディ映画の要素が色濃いはずなんです。ですが、どこか心から笑って良いようなムードじゃないんですよね。もちろん、そういったお約束のゲイバーっぽいギャグは随所に散りばめられているんですが、全然濃くないんです(ギャグシーンは面白さとしては、ちょっと私には中途半端でしたが)。
かといって人間ドラマの部分が濃いのかと言えばそれもそうでもなくて、良く言えばリアリティのある、悪くいえばどっち付かずなお話になっています。ただ、何かそういうモヤモヤが残る作品ではありつつも、万人に「良い話だった」と言って貰えるようなクオリティに仕上がっているから不思議です。感動にジャンルはないってことでしょうね。
■ゲイラブはそんなに期待しちゃダメ
ポイント:191/333|評価:GOOD
男と男のラブ。このジャンルって、映画の中では意外と描かれているラブストーリーなんですよね。
腐女子なんて言葉が世間で定着しているぐらいなので、最近では隠れた人気ジャンルなのかもとさえ思えるほどです。特に今を生きる女性にとっては『おっさんずラブ』なんかの影響でそれもひとしおでしょう。男性と男性がキスして「キャー」みたいな、ただしイケメンに限るぜ、みたいな好みはあるんでしょうけどね。
ただ、本作に関してはそれを期待する作品ではないかなぁ。恋愛を描いてはいるんだけど、それは物語のひとつのアクセントみたいなものでそれが重要なわけじゃない。あくまで主人公である沙織の葛藤のお話ですね。
こういったお話は、つい「ゲイ専用の老人ホーム」という設定ばかりに目が行きそうになりますが、沙織父とその恋人の恋愛要素が名脇役に徹してくれたおかげで、マイノリティなヒューマンドラマとして見ることが出来ました。
途中、泣きそうにもなったりしたけれど、ギリギリ涙は流れない感じの作風もいいですね。元彼がその昔、「パンチラはギリで見えない方が嬉しい」と言っていたのはこういうことだったんですね。今ならあの時彼がヤケに男前な顔をしていた理由が理解できます。ギリで涙が出ない時の胸の温もりを存分に堪能できました。
うん、ゲイラブはそんなに見られなかったけど、嫌いじゃないなぁって作品です。私みたいに変にふざけず、真面目にこの設定を描き切った姿勢も評価に値すると思います。
■ゲイバーの店員に聞かされる思い出話
ポイント:268/333|評価:GOOD
ワインには全然詳しくないけど、ワインで言ったら『ロゼ』みたいなお話です。ゲイの老後っていう物凄く興味深い話を掘り下げているわけじゃないですが、そこにも物語の邪魔をしない程度には触れています。
たまたま遊びに行ったゲイバーで、ゲイママから思い出話を聞かされて思わず泣かされてしまった。そういうノリのお話です。
この映画の設定はもっと別な形で描いても面白い作品が出来そうだなと、ぶっちゃけそのアイデアに関心させられましたが、そこに頼りきってはいない点もグッドでした。
今ままでありそうでなかったゲイ映画ですね。ノンケ(女性が恋愛対象)だけど、キャバクラよりゲイバーのが楽しいって方には凄くオススメ出来る作品だと思います。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
笑いも涙もストレートに楽しめる
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価この映画で唯一納得できなかったのは、主人公の沙織役の柴咲コウがキャバレーのバイトの面接でバニーガールの格好をしたら落とされてしまったってエピソードです。
どんだけ無能な店長だよ(笑)そりゃ流石に無理があるでしょうよ……と思いました。
別にこの映画が他の部分で完璧だったかっていうとそれも違うんですが、ヤケにそのシーンは気になりましたね。でも、他に特段大きな文句はありません。
ゲイキャラの演じ方も出演陣それぞれに個性が感じられる
出演陣の演技も押しなべて良かったですし、きちんとゲイに見えました。ストーリーも抑揚がそこまであるお話ではありませんでしたが、終始一定のリズムで進展してくれたので、見心地が良かったです。
また、ゲイにも色んなタイプがあって、色々事情があるんだよってことをキッチリ描いている点も大変興味深かったです。「同性が好き」という一括りにされがちなキャラクターをそれぞれ別個のものとして、個人の人格を描いていました。
そして、ラストもいい。ベタ褒めするほどじゃないし、映画を見慣れている人だと展開的に読めはするんですが、とてもシンプルで分かりやすい素敵な終わり方です。
長髪のイケメン社長役、西島秀俊にも要注目
ただ、それにしても、主人公沙織の勤務先専務役である西島秀俊は、ゲイ関連の作品に何か縁でもあるんでしょうかね(笑)
ここでは、ゲイではなく、女好きの普通の男性役でしたが、古の時代に私の姉が見ていた『あすなろ白書』でも、実はゲイだったって役をやってましたし、最近ではテレビ東京で放送されていた『きのう何食べた?』(2019年4月6日~2019年6月29日)でも、主人公、筧史郎役でゲイの男性を演じていました。
役者として駆け出しの頃にゲイ役をやり、最盛期を迎えた今もゲイ役をこなす。仕事を選ばない役者はやっぱり生き残るもんですね。逆にゲイを公表している役者が異性愛者を演じるなんて日常茶飯事でなんですから、彼のように体当たりで他の役者さんもどんどん挑戦して欲しいものです。
でも、見た目に関して言えば、この映画の時はイケメンではあるんだけど、今の方がずっと格好いいかな?
この頃のオダギリジョーが男前過ぎなせいもあるけど、断然今の方がいい。歳を取ってからの方がいい男になる現象って本当にあるですね。
ゲイ界のスラング「ストレート」の意味
なんてことばっかり言ってると、どんどんゲイっぽい切り口になってしまうけど、何だかんだで私はストレートでございます。西島秀俊には柴咲コウとキス出来て羨ましいなぁという感情しかありません(笑)。
え?『ストレート』ってどういう意味かって?
ゲイ業界では普通に異性が好きな人のことをそう呼ぶのだそうです。異性愛者って意味ですね。ちょっと前に遊びに行った、ゲイバーのママが教えてくれました。
本作の名台詞
触りたいところ… ないんでしょ……
出典:メゾン・ド・ヒミコ/VOD版
役名:吉田沙織
演:柴咲コウ