アニメ映画『この世界の片隅に』/私の人生は可哀そうなんかじゃない

スコア:793/999

この世界の片隅に出典:東京テアトル


【あらすじ】

舞台は大戦時の広島。のんびり屋のすずは昔に一度だけ会ったという男の元、呉へと嫁ぐ。戦時下という厳しい状況の中での夫とその家族との慣れない同居生活。それでもすずは懸命に家族愛を育もうと努力する。


【作品情報】

公開:2016年11月12日(日本)|他、各国多数公開)/上映時間:129分/ジャンル:アニメ/サブジャンル:戦争映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督・脚本)片渕須直/(主題歌)コトリンゴ『みぎてのうた』/(原作)こうの史代『この世界の片隅に』


【キャスト】

のん/ 細谷佳正/小野大輔/尾身美詞/稲葉菜月/潘めぐみ


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見放題配信

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※情報は【2020年07月23日】現在のものです。上記のボタンをクリックすると各VODの作品ページにジャンプすることが出来ます。詳しくはこちらのページをご確認ください。

ポイントレビュー


■子供向けに見えて実は大人向けなアニメ

猿渡 りん子
猿渡 りん子
アニメ担当
ポイント:234/333|評価:GOOD

子供に見せられないわけじゃないけど、子供が見て楽しいか?と聞かれたら答えに戸惑ってしまうかもしれません。第二次世界大戦あたりまで学校の授業が進んでから見た方が良さげなお話ではあります。だいぶ大人向けな印象をです。絵は子供向けっぽいんですけどね。日本昔話をほんの少し写実的にしたみたいな可愛らしい絵になっています。

本作は戦時中が主な舞台なんですが、空襲などにまつわるお話の悲壮感っていうのはあんまりなくて(そういったシーンはもちろんあるけど)、当時の生活や家族関係、男女関係をメインにしている映画です。

最初の10分ぐらいはあれれ?もしかしてハズレ引いちゃったかも?な人もいると思いますが、それ以降はとっても良いお話なんで、しばし我慢をして下さい。この作品を機に戦時中を知っているおじいちゃんおばあちゃんと一緒に見れば、なおのこと良し。VODの世界へと是非いざなってあげてくださいな。

鑑賞後に「実はおばあちゃんとおじいちゃんはね……」なんて出だしから始まる驚天動地の戦中のリアルエピソードを聞かせてくれるかもしれませんよ。


■まさか主演声優がのん(本名:能年玲奈)だったなんて……

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:279/333|評価:GOOD

純粋にヒューマンドラマとして良かったです。見ていて、夏にNHKの朝ドラとかで実写化しそうな雰囲気がありましたね。原作漫画がある上に、さらにアニメ版まである作品の実写化は色々と大変ですけど、本作はうまくいきやすい部類の作品だと思います。

……って、むしろ実写のが先だったんですか。

日本テレビがスペシャルドラマとして2011年に北川景子さん主演でやっていたみたいです。そして、このアニメが放映された後に、TBSが松本穂香さん主演で連ドラを公開しています。申し訳ございません。全然知らなかった。この話、映像化やり過ぎでしょ(笑)

では、少々、話がずれたので本作アニメ版の話を……

主役のすずの声優を務める、のん(旧芸名:能年玲奈)の声は割かし適役だったんじゃないですか?あの声のおかげでお話がホンワカしたものになったと言っても良いぐらい。声優業には全然詳しくありませんが、映像から声が浮いている感じは全然ありませんでした。

泣くためとか笑うためとかではなく、すずの人生をただただぼんやり眺めるといった趣旨の映画だと思うので、のんのぽわんとした声の魅力は、この映画の成功に一役買っていたと言っても良いと思います。

ちなみにのんが主演声優だというのも、またまた申し訳ないことに見終えるまで全く知りませんでした。真に良い作品には出演者の知識なんて不要だってことですね(笑)。


■この時代にしかない柔い色気があった

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:280/333|評価:GOOD

事前に確認したVODユーザーの星の数が半端じゃなく高評価だったので、かなり期待値の高い状態で見ることに。星の数はアテにならない場合が多々ありますが、本作については至極真っ当な評価がされていると感じました。私も星5つが満点なら4.5前後は付けていたと思います。

作画は一昔前のアニメって感じなんですが、妙な色気が漂っているというか、そういう予想外の場面があったのが非常に印象的でした。

ちょっとしたラブストーリーな部分もあり、家族愛の部分もあり、戦時中で結構な状況なのにやけに淡々とした部分もありで、もしかするとそれに色気を感じたのかな?

こういうノスタルジックな色気を、アニメ映画で描くのはなかなか難しいはずなんですが、そこがきちんと成立した映画になっているのは凄いです。

特別直接的な色っぽいシーンがあるわけじゃないのに、何かドキドキしちゃう映画ってあるんですよね。まさかアニメでそんな雰囲気を味わえるとは思わなかったな。

あ、変な意味にとらないようにお願いしますよ。もちろん健康的な意味でです(?)。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

最近見た映画の中ではダントツにときめいた作品

近道 通
近道 通
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価

これは評価されて当然。見終えた後に素直にそう思える映画でした。

自分がひねくれているだけかもしれないけど、結構VOD内の評価ページの星の数と相性が悪いんですよね。星が4つ以上あるからまず安心だ。とは到底思えない。星が4.5とかでも疑いの目を完全には捨てきれない。逆に星が3.5ぐらいの方が期待値が適度な分、安心できるぐらい。そんなに一般的な評価とかけ離れているつもりはないんだけど、自分の中では結構気にしてる部分です。

でも、この映画は、本当に評価通りでした。戦時中という時代の描写の仕方、そこで生きる視聴者的に好感度の高い主人公。冒頭で少し凝り過ぎじゃないかな?と思うようなシーンはあったけど、それにもきちんと意味があることがわかったし、トータルでは大満足の鑑賞でした。

良い意味で期待を裏切る時代描写

しかしながら、完全無欠の完璧な映画アニメかと言われれば、そうでもないような気がします。

こういう日常を描く作品には視聴者がそれぞれに「話は良かったけど、もっとここを深く描いて欲しかったなぁ」という部分が出てきがちで、この映画でもそういった感想が出て来そうなところはありました。

私個人としては第二次世界大戦時の広島が舞台の作品なので、もっと原爆関連のお話が出てくるかと勝手に思っていたのだけれど、意外とそこはさらっとしてる。この時代の広島を描く上では絶対重要な要素なはずなので、そこは少し気になったのは事実です。

世代的にどうしても広島、原爆と聞くと、小学校の図書館で読んだ『はだしのゲン』が想起されてしまうので、本作のようなまったりとした世界があったことを受け入れにくい部分がありました。

ただ、今になって考えてみると、むしろそれこそがリアルな日常っぽくて、逆に良かった点なのかなぁとも思います。実際爆心地から距離がある場所だったら、映画の中みたいな雰囲気だったのかもしれないし。視聴側が勝手に抱いた戦争映画に対するイメージの押し付けはいけませんよね。

それらを加味すると、万人にとって期待通りの時代の描き方ではない方が良いこともあるのだと気づかされたというのはあります。その意味でも非常に素晴らしい映画です。勉強になりました。コロコロ主張が変わってすみません。

「声優のん」の声に癒される

さて、話は変わりますが、聞いたところによると本作よりも先に実写版があったそうで(アニメの後に連続ドラマ版もあるそうです)、そっちの方も見てみようかなぁと思っているんですが、最高のレベルに近いアニメ版を見た後だと、イメージが崩れそうでちょっと怖いかもと躊躇しています。

もう私の中では完全に愛しい愛しい愛娘のすずは、のんのほんわかほわほわの声で定着してしちゃっているのでね……

専門的なことはまるでわかりませんが、彼女、マジに声優に向いてるんじゃないですか?それぐらい、この作品内のスズのイメージとマッチしていました。純朴な色気って表現がもしあるとしたら、声でそれを出せるのは、もしかしたらのんだけなんじゃないかなとさえ思います。

付け足しの繰り返しになっちゃうかもだけど、レビューポイントの欄でも書いた通り、恋愛っぽいパートでは、体ではなく、心が反応してしまう方の色気が、のんの声のおかげもあって、とても自然に演出されている映画です。

最近、一番ときめいたラブストーリーは?って聞かれたら、今ならこの映画だと言ってしまうかもしれないぐらい。

いやいや本当に良いお話でした。

本作の名台詞

水原さん… ウチはずっとこういう日を待ちよった気がする……

出典:この世界の片隅に/VOD版

役名:北條すず
声:のん