スコア:843/999
出典: ワーナー・ブラザース
『プリズナーズ』
【あらすじ】
ケラーの娘アンナと友人の娘ジョイが感謝祭の食事会中に失踪、近辺にRV車を止めていた不審な男が誘拐の容疑者として浮上したものの、証拠不十分で釈放されてしまう。娘の居場所を突き止めるためケラーは男を追う。
【作品情報】
公開:2013年9月20日(アメリカ)|2014年5月3日(日本)/上映時間:153分/ジャンル:サスペンス/サブジャンル:クライムサスペンス/映倫区分:PG12/製作国:アメリカ/言語:英語
【スタッフ】
(監督)ドゥニ・ヴィルヌーヴ/(脚本) アーロン・グジコウスキ/(音楽) ヨハン・ヨハンソン
【キャスト】
ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ジレンホール/マリア・ベロ/テレンス・ハワード/ヴィオラ・デイヴィス/ポール・ダノ/メリッサ・レオ/ディラン・ミネット/エリン・ゲラシモヴィッチ/ドリュー・シモンズ
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見放題配信
※情報は【2022年11月20日】現在のものです。上記のボタンをクリックすると各VODの作品ページにジャンプすることが出来ます。詳しくはこちらのページをご確認ください。
ポイントレビュー
■普段以上に万全の準備をしてから見るべきサスペンス
ポイント:283/333|評価:GOOD
名作サスペンスの常とはいえ、準備を万全にして視聴して頂きたい一作。少なくとも洗濯物の靴下を一足に丸めながら見る向かない作品であることは間違いない。どんな場面も原則見逃し注意だ。
トイレは見る前に済ませておこう。映画館で観るわけではないので、途中一時停止ボタンを押すことは可能だが、お話には勢いというものがある。疾走感を殺してはいけない。最悪失禁も覚悟しよう。いや、冗談だ。でも、出来るだけトイレは膀胱のためにも事前に。
また、出来ればアルコールも飲まない方がいい。前述の利尿的な理由もあるが、シャキッと整理された話ではあるが、複雑な話ではあるため、お酒に弱い方だと途中でわけがわからなくなる可能性がある。ただ、俺は飲んだ。美味しかった。
そして、もっとも重要なのは、最後まで見る事。面白いので体感では短く感じるが、かなり上映時間が長い。
俺が敬愛してやまないアインシュタイン先生のうろ覚えの名言……
熱いストーブの上に1分手の平を乗せると、何時間にも感じられるが、好みの女の子と一緒に1時間座っていると、1分にしか感じられない。それが相対性です。
を信じない時間絶対性主義者は、格別の覚悟を持って臨もう。ケッ、キャバクラでは延長するくせによ!けち臭くボーイさんにあんまり文句言うなよ。スマホで指先ひとつでタイマー機能を起動出来ちゃうこのご時世じゃ、店は気を使ってちゃんと計ってんだから。
って、最近行ったキャバクラで女の子とキッチンタイマーが出て来た時は何ともやるせない気持ちになったなぁ。マジで関係ない話だが。
■たとえレンタルして見たとしても後悔しないレベルの名作
ポイント:275/333|評価:GOOD
サスペンス映画としてはもちろんのこと、わが子を想う親の執念と葛藤といったヒューマンドラマとしても、素晴らしい映画です。
このレベルの作品をネタバレなしでレビューするというのは野暮なお話。というか、何を書いてもネタバレの一部になりそうな本物のサスペンスです。ご契約済みのVODサービスの見放題にあったら、取り敢えず忘れないうちにマイリスト等に入れておくことをオススメします。
レンタルで見ても十分に価値がある作品ですが、せっかく見放題にあるんなら、それで見るのが一番です。私は複数加入しているので、見放題で見られましたが、気が付いたらメインで使っているVODのサービスでは、見放題配信終了でレンタルバージョンに華麗に変化していました。
とは言っても、VOD複数入るのもそれはそれでコストがかかりますからね。大の映画好きの方なら良いでしょうけど、普通に好きぐらいですと、ハードルが高いかもしれません。どこかに一つだけ契約されている方は、とにかく気になったらすぐ見る。そういうクセをつけると後悔を防げると思います。
本作単品にお金を払って見るのも全く問題ないかなりの名作ですが、テンション的な問題には関わってくると思うので。いやいや、本気で何をどう隠して感想を書いたらいいのか、今から見る方にご迷惑をかけないのか、判断に良い意味で困る作品でした。敗北です。
■皆さん……「気付き」って大事ですぜ
ポイント:285/333|評価:GOOD
日本でも高評価を受けた『ナイトクローラー』でサイコなカメラマン役を驚異の演技力でやり遂げたジェイク・ジレンホールが、もう一人の主人公とも言うべきロキ刑事役で出演しています。
正直に言うと、個人的にはあんまりこの俳優さんが好きではなかったのですが、私の大いなる勘違いでした。公開自体は本作より後ですが、随分前に視聴済みである『ナイトクローラー』のあのカメラマンを演じた俳優と同一人物だとも気が付けなかった。
あれだけ、『ナイトクローラー』の俳優さん凄いよ。と、さも自分の手柄のように周囲に触れ回っていたのに、とんだお笑い草ですよ。すみませんでした。いや、でもこれは謝る必要はないな。
本当はずっと好きだったのに、その感情に気づかない振りをしていた幼馴染に恋する高校生的なアレだ。ふとした瞬間に芽生える奴だ。すんごい都合のいい言い方だけど、多分それが一番近い。ってなわけで、本作がそのタイミングだったということですね。
「時は来た、それだけだ」
追伸、きちんとジェイク・ジレンホールの出演作について調べて見た結果、私は違う俳優さんと誤認していたことに気が付きました。
ホント、「気付き」って大事だよね。本作に関しても視聴する上でこうした「気付き」がエンタメ要素の一つになっているので、彼の演技力を含めて、その当たりもお楽しみ頂くのがよろしいかと思われます。
名探偵ぶって推理しながら見るも良し、完全なる観客としてシンプルに楽しむも良し、久しぶりに大手を振るって人にオススメ出来る作品出会えました。こんなところでご勘弁下さい。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
こんなに伏線をパンパンに張っているのにキッチリ風呂敷まで包むとはね
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価伏線に次ぐ伏線とミスリードからのミスリードで、数ある失踪事件の結末の如く、思わず思考が迷宮入りしてしまいそうになるサスペンスでした。
本作って題名さえも罠になってるんですよね。『プリズナーズ』ってタイトルから勝手に刑務所にある程度関わりがある話かとまず誤認させ、観客の深層心理に先入観を持たせる。ロキ刑事は少年院に入ったことがあるようで、体も入れ墨だらけだし、ヒュー・ジャックマン演じる主人公のケラーの父も元刑務官。
でも、本作が指す『プリズナーズ』は、刑務所関連のそれではなく、刑務所の役割の一つである『監禁』のことだったということです。ですので、タイトルの正しい日本語訳としては、『監禁者たち』若しくはになるのですが、アメリカ原題の『Prisoners』をそのままカタカナにしたところも配給会社にセンスを感じます。
というか、『監禁者たち』とタイトルを付けて日本公開してしまうと、メッチャネタバレですからね。最初からストーリーの結末にまで関わってくる重要なキーワードです(結末ネタバレしてるので、まだ見てないのに読んじゃってる方はご注意を)。
ケラーとその友人の娘も監禁(被害)者なら、容疑者であったアレックスを監禁した者ケラーとその友人と妻も監禁(加害)者。果てにはアレックスの偽叔母をしていたお婆ちゃんもアンナとジョイを監禁した監禁(加害)者です。強いて言うなら、ロキ刑事だってアレックスを一時拘置していた監禁(加害)者になります。彼が少年院に入っていたなら、それも一応監禁かな?もっと言えば、もう一人の容疑者となったボブも蛇の監禁(加害)者?と言っても良いでしょう。
もう結局はどこもかしこも監禁者だらけのお話だったわけです。終盤にアレックスが実は偽叔母のお祖母ちゃんに幼いころからずっと監禁されていた監禁(被害)者であったことまで判明しますから、これはもうエライことですよ。
主人公のケラーは娘の命がかかってるとあって、アレックスに相当やり過ぎの監禁と拷問をしていましたから、真犯人の叔母が出て来るまでは、もうどうすんのよケラーって感じで、フィクションとはわかっていても気が気じゃありません。この監禁(加害)者たちの中で、もっともやり口が残酷だったのはケラーでしたしね。
あの暴走加減の描写は結構賛否両論だと思います。本作にとっては必要不可欠な設定ではありましたが、自分が同じ立場だったらどこまでやるだろうという罪悪感のようなものを感じずにはいられない監禁と拷問シーンでした。気持ちは分かるけど、やり過ぎはどう贔屓目に見てもやり過ぎなんです。
あと、頭ごなしに決めてかかってますからね。アレックスが10歳程度の知力しか持っていないという点や、物証が何処にもないという点を全く考慮していない。アレックスの見た目が如何にもな、それっぽい見てくれなだけ。
繰り返しになってしまいますが、本作では本当に必要なシーンなんです。冤罪に対する問題提起にも少なからずなっているような気さえします。
もう少しアレックスを明らかに犯人だと思い込める要素があればとも思いましたが、アレックスが釈放され、ケラーに殴り込まれた時に言った「僕がいる間 泣かなかった」という台詞に伏線も真実も全部集約されてるのでね。この激しい描写だけはどう気持ちの整理を付けたら良いのか私もわかりません。
あそこまでやるかなぁ。いや、でも我を失ったらわからないか……でもなぁ。
こういう面では日本の方が描きやすかったかもしれませんね。日本の場合は容疑者ってだけで、当サイトでもレビューをした『白雪姫殺人事件』みたいに、ほぼメディアスクラム組まれますし、逮捕イコール有罪ですから。
ただ、もうこれは映画が終わってから思うことですからね。見終わって、結局一番可哀そうだったのは誰かっていうとアレックスなんですよね。幼い頃に誘拐され監禁され、誘拐犯に育てられて、今度はその誘拐犯のせいで誘拐犯に疑われ実写版ウルバリン似の強面のオッサンに監禁拷問され、疑いが晴れて無事今度は家族の元に戻されたけど、今後はおそらく『八日目の蝉』のような複雑な心境の世界が待っている。
地獄です。考えれば考えるほどアレックスの人生は地獄。だけど、結構そこの部分はスッとしてるところがまた凄い。如何にもアメリカ的なドライなストーリーの落としどころで、物語を終えました。
ただ、本作で救いがないのはアレックスの人生ぐらいのものなので、視聴された方々も見終えて後味の悪さみたいなものはなかったんじゃないでしょうか?
結末のホイッスルの音もなかなか感慨深いものがありましたしね。ケラーをほら穴から助け上げるシーンを映さないで終わったところが何よりも素晴らしい発想だと思います。
なぜなら、あのシーンには「私に気づいて」という、現在も存在する監禁被害者達のメッセージが込められていると思えてならなかったからです。
……え~と、何か格好付けて締めくくるのが何となくイヤなので、アレックスの偽叔母さんがムッチャ強くて、除隊した女軍曹みたいな表情になっていたとこで、笑ってしまったことをここに告白させて頂きます。常に緊張感が漂うお話だったので、ついね。あと、ずっとチョイ役の神父さんを真犯人として疑っていたこともここに懺悔させて頂きます。
結構宗教的な台詞が多かったので、見る方によっては宗教的な作品だという感想もあるようです。色んな見方があるもんですね。私はそんなこと深いことは全く気が付かずに、ただただハラハラドキドキしていました。ま、そこに「気付き」がなかったってことに関しては謝るつもりは毛頭ありませんが。
本作の名台詞
見ればわかる
出典:プリズナーズ/VOD版
役名:ケラー・ドーヴァー
演:ヒュー・ジャックマン