邦画『脳内ポイズンベリー』/申し訳ございません。櫻井いちこはただいま頭の中で会議中です

スコア:450/999

脳内ポイズンベリー出典:フジテレビジョン
『脳内ポイズンベリー』


【あらすじ】

ケータイ小説を書いている30歳の櫻井いちこは、ある日の合コンで気になる存在となっていた23歳のフリーターの青年、早乙女亮一と偶然再会する。突然の出来事に戸惑う彼女の頭の中で担当者達による脳内会議が始まった。


【作品情報】

公開:2015年5月9日(日本)/上映時間:120分/ジャンル:ラブストーリー/サブジャンル:ラブコメディ/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督)佐藤祐市/(脚本)相沢友子/(音楽)井筒昭雄/(主題歌)クリープハイプ『愛の点滅』/(原作)水城せとな『脳内ポイズンベリー』


【キャスト】

真木よう子/西島秀俊/神木隆之介/吉田羊/桜田ひより/浅野和之/古川雄輝/成河/カンニング竹山/ともさかりえ


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ポイントレビュー


■自分好みのラブストーリーではなかったです

橘 律
橘 律
ラブストーリー担当
ポイント:93/333|評価:BAD

一応ラブコメになるのかなぁ。

主人公のいちこの脳内には「ポジティブ」「ネガティブ」「衝動」「記憶」「理性」を司る担当者がいて、恋愛的なことが起こると、彼らが会議を始めるというストーリーです。私自身は会議というものが大嫌いなので、そんなに共感は出来ない作品でした。好きになったら、ヘッドスライディングをかまして行くタイプですしね。

恋に落ちてる時の行動なんて基本的にはさっさと決めればいいんですよ。さっさと。ダメなら次いこうよ次。ウジウジしてんじゃねーよ。なるようにしかならねーんだから!あらあら、ついお口が悪くなってしまいましたわ。

う~ん…私が恋愛映画を好んで見るのは、恋愛パートでさり気なく描写される心の揺れ動きが見たいからって理由から来てますからね。ストレートな自分にはない部分なので。

でも、本作については会議に変換して具体化されてしまっているので、そういうシーンがあまりなくて、おそらく世界観に馴染むことが出来なかったんでしょう。会議シーンがラブコメ的に笑えるかっていうとそうでもないですし。

途中で見るのを辞めようとは思わなかったけど、ううむ…微妙です。っていうか、こういうのは私はもういいですね。


■コメディ映画としてはそれなりの水準じゃない?

試文 書人
試文 書人
コメディ担当
ポイント:177/333|評価:GOOD

昔は良くやったな。自分会議。議題は恋愛なんて大それたもんじゃなくて、「何を買い食いして帰るか?」とかだったけど。あぁ…でもあの時脳内にはこの映画で言うところの「理性」と「衝動」しかいなかったから、厳密には会議ではなかったか。会話だな。漫才みたいな。

さて本作についてだけど、恋愛模様は割とどうでも良い作りだったものの、コメディ映画としてはそこそこ面白かったって言って良いんじゃないかな?日本の会議ばりに最終的に大事なことは何も決まらないっていう風刺も効いてた気がするしね。

特に男性であれば、恋人と一緒に視聴するVOD内の映画選びという局面に立たされた時、彼女オススメの『泣けるらしい恋愛映画』を無理して見るぐらいだったら、本作は選択肢に入れても良いんじゃないかな?実際泣けるのは、そんな局面なんて一度もなかったくせに、こんな偉そうなことを言っている俺自身って説が有力だね。

だから、VOD配信の映画を彼女と見るんならこれでいいんじゃない?男女楽な気持ちで見られると思う。仮に失敗しても俺にメリットもデメリットもないしさ。彼氏彼女で一緒に見るのなんてこれでいいじゃん、何だっていいじゃん、もう……

ん?投げやり過ぎるって?

ごめんね。俺の脳内会議で『嫉妬』の担当者の意見が通っちゃったのよ。


■世の中の女性が皆こんな脳内会議してたらイヤだなぁ

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:180/333|評価:GOOD

これを見て「わかる、わかる」って言う女性って多いんですかね?いや、嫌味ではなく、素朴な疑問として。

もしそうだったら、ちょっとイヤだなぁ。恋に落ちた時に、これまでの経験と自分のこれからの生き方に照らし合わせて、行動考えることは大切なことだと思うけど、ずっとこればっかじゃ恋愛を楽しめていない気がして……

本作では、終盤に議長の吉田が言った締めの一言で、このモヤモヤはちょっと解消されるんだけど、結局はっていうね。世の女性がこんな感じで脳内会議してばっかりだったら、恐いなぁ。

ただ、こういう感想は恋愛経験に乏しい男が言っても何の説得力もないですね。ええ、修行します!序盤の早乙女のように、合コンに来た真木よう子の顔と名前を覚えてないような、余裕のあるイケメンになります!

……自分なら親の仇ばりに覚えてるけどな。あんな美人。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

結局いちこは何の成長もしてないって話なんだよなぁ

橘 律
橘 律
メインレビュアー
ラブストーリー担当/最低評価

脳内会議の議題は、「恋愛に対する葛藤」よりも「恋愛の駆け引き」だった方が面白かったんじゃないでしょうか?

私も刻一刻と、30歳に近づいているので結婚や歳の差に焦ったりっていう主人公のいちこの気持ちはわからなくもないんですけど、すでにその状況はどうしようもないものなんでね。一歩進んだ、恋に強気で策略家の30歳ど真ん中女子の恋の会議が本当は見たかったです。

だって、恋って本能的なものじゃないですか?いちこの場合は辛い過去があって、それに囚われてしまっているからしゃーない部分もあるんでしょうけど、恋に落ちちゃったら、そんな過去のトラウマもへったくれもないと思うんですよね。そう、落ちてる時は。

いちこの脳内で考えてることは、どちらかと言うと恋愛関係が安定している時に考えることだと思うんです。でも、作中では彼女はずっと不安定。

「恋はするもんじゃない、落ちるもんだ」なんていう格好いい言葉がありますが、彼女は恋はしていても、落ちてはいないんですよね。そこに終始イライラしてしまいました。

ことに恋愛映画においは、私の場合、主人公の女性が一度気に喰わなくなると、一気に冷めて苛立ちポイントばかりを探すようになってしまうんで、物語を肯定的に捉えられなくなってくる。全部がイラつく女性ではないんですけど、ウジウジとグズグズがしつこ過ぎなんですよね。

配役で言っても演じてる真木よう子のイメージと合ってない感じもしますし。

もっとね。ガツガツ行けばいいんですよ。恋愛市場は戦場です。恋に落ちたんなら、どんな手を使ってでも、好きな銘柄を押さえにいかなきゃ。後のことは後から考えればいい。私はそういう恋の物語が見たかったなぁ。

うちのお母さんは、家族で洋画を見ている時にキスシーンが差し込まれると必ず「外人さんはすぐチューする!!」って興奮するんですが、恋なんてそんなもんなんじゃないですかね?

……お母さん。自分だってお父さんとスピード婚だったじゃない。

本作でも会議のメンバーの中に「衝動」がいましたが、恋模様を描きたいのであれば、そこがもっと強くないとダメだと思うんです。でも、本作はそうでもない。「衝動」の強さに負けて続けてしまったみたいなことをメンバーの一人が言う場面があるのですが、全体を通して言えば、ただ流されていただけのようにしか見えません。

だから本作は30歳の恋の葛藤の物語ではないんだと思います。

つまりは、打算なんですよね。打算。そりゃ色々過去に大変なことがあったんでしょうけど、結局話し合っているのは、自分がどう思われるだろうかとか、自分はどうなりたいんだろうとか、考えたって仕方ない自分のことばっかり。

ハッキリ言って、自意識過剰って言ってもいいぐらいです。小説がヒットしたら、糟糠の妻をあっさり捨てて女優に走る芸能人みたいに、相手の気持ちも考えずに上から目線な態度になるし……

そうなんです。これは、桜井いちこという1人の女性の自意識と打算の物語なんです。

なーんて、格好付けて辛辣なことを言う強い女子を演じてみましたが、自分のことしか見えなくなっちゃうってのは、恋愛の仕方のひとつではあるのかもしれませんね。その点は私の許容力が弱いのかもしれません。

というように、私には全く理解できない話ではありましたが、本作に共感できる人もいなくはないとは思います。設定の試みとしてはユニークですしね。でも、私がこの映画に対して恋に落ちることはありません。くっつくかくっつかないかでイライラするのはいいけど、主人公自身にイライラするのは感情移入できないですからね。

ただ、ふわりと軽い作品ではあるので、軽い気持ちで見る分にはありちゃありなのかな?

途中、一時停止ボタンを押し忘れてトイレに行ったのですが、「どうせこんな展開だったんでしょ。そのまま見ちゃえばいいんじゃない?」と、巻き戻すかどうかを一瞬迷って、リアル脳内会議をしたぐらいでしたから。

議論の結果、巻き戻して見ることに決めましたが、巻き戻した再生時間より、その会議の時間の方が長かった……

この時私は確信しましたね。やっぱり会議って無駄だなって。

作品のラストでは、また会議が始まるんですが、このシーンを見て、結局いちこは何にも変わってないんだと思いました。この終わり方だと作品の言いたかったことが迷子になっちゃう気がします。

本作の名台詞

大事なのは、誰を好きかじゃない。誰と一緒にいる自分を好きかということだ!

出典:脳内ポイズンベリー/VOD版

役名:吉田
演:西島秀俊