スコア:674/999
出典:東宝
『恋は雨上がりのように』
【あらすじ】
17歳の女子高生橘あきらは超高校級の陸上選手であったが、足のケガで休養を余儀なくされ、現在はファミレスでバイトをしている。あきらが働く理由はただ一つ、彼女が恋してやまない中年の店長がいる店だからである。
【作品情報】
公開:2018年5月25日(日本)/上映時間:111分/ジャンル:ラブストーリー/サブジャンル:恋愛映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督) 永井聡/(脚本) 坂口理子/(音楽)伊藤ゴロー/(主題歌)鈴木瑛美子×亀田誠治『フロントメモリー』/(原作) 眉月じゅん『恋は雨上がりのように』
【キャスト】
小松菜奈/大泉洋/清野菜名/磯村勇斗/葉山奨之/松本穂香/山本舞香/濱田マリ介/吉田羊
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見放題配信
※情報は【2022年11月4日】現在のものです。上記のボタンから本作品の再生ページに直接ジャンプ出来ます。各VODを選択してご利用ください。詳しくはこちらのページでご確認いただけます。
ポイントレビュー
■高校時代の懐かしさに浸れるのは良い
ポイント:196/333|評価:GOOD
中年男性が戸惑っている姿って何だか可愛らしいですよね。その点、店長役を務めた大泉洋は適役過ぎて、危うくファンになりそうでしたが、もう逃げ道はないというギリのところで平常心に戻ることが出来ました。
役者をやめて、『水曜どうでしょう』に集中しない限り、私は彼のファンにはならないと心に固く誓っていますから。
なので、代わりにヒロイン役の小松菜奈さんのファンになります!『渇き。』の時は若干無理をしていて固い印象がありましたけど、本作ではとても自然体です。黙っていると怒っているように見える役をやらせたら、若手女優ではピカイチだと思います。
本作のお話そのものは、シンプルな歳の差恋愛映画に「ふりかけ」をかけた作品としか私には思えなかったので、好きなタイプのラブストーリーではなかったのですが、出演俳優陣の「いたよね~レストランのバイト先にこういう人達」な演技が抜群だったので、懐かしい気持ちには浸れました。
あぁ、戻りたいな高校生に。女だけでファミレスでダベってると、ロクな話にならないけど、それが楽しかったんですよね。きっと。
■エンドロールの曲が映画とマッチしまくり
ポイント:236/333|評価:GOOD
エンドロールで流れる曲が素晴らしく良いです。この主題歌があるかないかで、随分評価が変わるんじゃないでしょうか?
曲のタイトルは『フロントメモリー』。歌っているのは鈴木瑛美子×亀田誠治で、神聖かまってちゃんが2014年にリリースした同名曲のカバーとなっています。
原曲が先に生まれているので、当然映画に合わせて作曲された歌ではないのですが、この映画のストーリーに合わせて作ったとしか思えないほど、ピッタリの曲です。
作品としてのコンセプトは、日本の連ドラ『高校教師』の舞台を『ファミレス』に移したようなもんなので、そこまで物珍しくないラブストーリーでしたが、映画と主題歌の相乗効果とでもいいますか、見た後の余韻は非常に心地良かったです。
そもそものお話が『高校教師』のようにドッロドロしたものではなく、むしろ爽やかが過ぎるぐらいの恋愛モノだったのも、この歌に行きつく過程としては良かったのかなと。
ただ、本作も禁断の恋って言えば、禁断の恋ではあるんですけどね。中年の店長が見上げてしまうほどの大人の男なので、そうはならないだけで。
■自分としてはアニメ版のラストのが好きだけど
ポイント:242/333|評価:GOOD
原作漫画、アニメ、映画、『恋雨』これにてコンプリート達成です(えっ……これスピンオフもあるの?じゃあまだコンプリートしてないじゃん)。いや~ラブストーリーそんなに好きじゃないのに、この作品に一体何時間使ったんだ、私は。
きっと読んでいる間だけでも、青春を取り戻せたような気分になれたからでしょうね。
映画版もラスト以外はさほど文句はありません。
物語は結末が8割だと思っている私なので、通常だと評価を著しく下げるんですが、「こういう終わり方もあってもいいんじゃない?」といった感触で、製作者からの新たな提案みたいなもんでしたから、そこは今回はいいかなと。
まぁ、私的にはアニメ版のラストが一番合点がいきましたがね。二番が原作。そして最下位がこの映画って感じです。
もっともリアルな終わり方はやはり原作版なんですが、本作は一種の中年男性のおとぎ話みたいなところはあるのでね。あの終わり方じゃちょっと浦島太郎的すぎて、可哀そう過ぎやしないか?っていうのはありましたから、これはこれでいいんじゃないでしょうか?
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
あきらちゃんが言う通り、店長は凄い人です
メインレビュアー
オールジャンル担当/最高評価原作漫画は、全国の夢見がちな中年男性の精神状態をドン底まで突き落とし、阿鼻叫喚の渦に巻き込んだと言われるほどの伝説的な結末で締めくくられましたが、映画版はある意味救いのあるものに変わっています。
ですから、原作の最終回を読んだことで、メンタル面がマントルを突き抜け、コアの部分にまで辿り着いてしまったという方は、どうか地上にお戻りください。映画版が待ってますから……
ただ、原作版の方が現実的かつ倫理的なラストだとは思うんですよね。店長が彼女の年齢やまだ高校生である点を非常に気にしていた(店長は押しかけられた側とはいえ、現実じゃ通報されてもおかしくないしね)のは、原作版、アニメ版、映画版ともに共通していますが、映画版がもっとも恋愛的な救いがある分、中年男性としての矜持に重みがなくなってしまった印象がどうしても残っちゃう。
確かに映画版は映画版で素敵な物語の畳み方です。ですが、恋と夢と再生の物語だったハズのストーリーが、恋の部分だけが頭一つ抜きん出てしまったせいで、本当の恋をするのには若過ぎる女と、本当の恋をするには歳を取り過ぎてしまった男の、世にありがちな単なる恋愛モノになってしまっている。
原作とアニメも視聴済みの私でも、本作は相当に胸を打たれるものがあった作品ではありますし、配役イメージもピッタリでしたから、ありがちな恋愛映画というのは言葉が過ぎたかもしれませんが、せっかくのタイトルとストーリーのリンクが、映画版のラストだと全然しっくりと来ないんです。
あれだと「雨、あきらの中では完全には上がってないじゃん」って思うんですよね。あきらあきらめてないじゃんって。
と、総務部の部長あたりが言いそうな中年ギャグはこれぐらいにしておくとして、加えて配役についての感想を少しだけ……
橘あきら役を務めた小松菜奈は文句の付け所がないぐらい、見た目もイメージもピッタリでしたが、その親友役の喜屋武はるかを演じた清野菜名がちょっとね、といった感じです。正直、最初に映画内で登場した時は陸上部の顧問か、教育実習にしか見えませんでした。
完全に見た目だけの問題で、演技力に申し分がないことは言わずもがななんですが、目から入る情報としてそこが邪魔になってしょうがない。
あきらを励ましたり怒ったりしているシーンでも、先生がなんでそんなに彼女の人生に熱くなってるの感が満載で、陸上部でのシーンなんかは監督のお前も練習すんのかい!って思わず、声が出そうになりました。
とは言いつつも、原作もアニメも知らず、本作が初見であったとしたら、男でもかなり見られるというか、ほろ苦さで悶えられる作品だとは思います。特に中年男性はそうですね。大枠では同じ展開のお話を、特段ラブストーリーが好きなわけではない私が3回も見れたんですから、それなりに高い評価をせざるを得ません。
いやはや、私にしてはかなり真面目っぽいレビューになってしまいましたが、それだけ店長に歳が近づき、感情移入しやすくなってきているってことでしょう……
女子に惚れられるなんてことは、私には絶対にありえませんが、もしももしもの奇跡が起こったとしても、私はあらゆる邪念を振り払って、本作の店長のような対応を取りたいと思います。
あれぞ本物の男の生き方です。小松菜奈に惚れられてそれを拒否するなんて、中年男の中の中年男でないと、そう易々と出来る事ではありません。役者大泉洋の中に真の「漢」を見たのは、もしかしたら『水曜どうでしょう』以来かもしれません。
本作の名台詞
俺は…ただのオジサンだよぉ?
出典:恋は雨上がりのように/VOD版
役名:近藤正己
演:大泉洋