スコア:682/999
出典:パラマウント・ピクチャーズ
『フライト』
【あらすじ】
コントロールが効かなくなった航空機を無事に着陸させ、乗員乗客の命を救って英雄となった主人公のウイップだったが、後に開かれた調査委員会で、彼が操縦時にアルコールを飲んでいた疑いが浮上する。
【作品情報】
公開:2012年11月2日(アメリカ)2013年3月1日(日本)/上映時間:139分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:ヒューマンドラマ/映倫区分:PG12/製作国:アメリカ/言語:英語
【スタッフ】
(監督) ロバート・ゼメキス/(脚本) ジョン・ゲイティンズ
【キャスト】
デンゼル・ワシントン/ドン・チードル/ケリー・ライリー/ナディーン・ベラスケス
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ポイントレビュー
■アルコール依存症の恐ろしさの啓蒙作品ではない
ポイント:261/333|評価:GOOD
アルコール依存症と薬物依存症の恐ろしさの啓蒙作品かと思いきや、依存症自体の怖さみたいなものはそこまで突き詰めて描いてはいなかったですね。結構主人公は周囲の人間に甘やかされています。
でも、この映画で大事にしているのは、アルコール依存症を克服できるかどうかというお話ではなくて、それをきちんと主人公が自分の問題として捉えられるのかってことなんだと思います。
卑怯に英雄として生きるのか?
それとも英雄であることを捨てて、ありのままの自分をさらけ出すのか?
もしも自分が同じ立場だったとしたら、非常に選択が難しいです。アルコール依存症の問題というよりは、人としての生き方の問題として、なかなか考えさせられる作品でした。
■安心の「デンゼル・ワシントン主演」のブランドは健在
ポイント:239/333|評価:GOOD
モーガン・フリーマンと同レベル、いや、今となっては彼をも超える安心のブランドと言えるデンゼル・ワシントンの主演作。
『トレーニングデイ』とか『インサイド・マン』とか色々だいたい良かったですし、本作もそのブランド(こっちが勝手にそう呼んでいるだけだが……)の名に恥じない出来の良さです。
また、航空関係者とアルコールという近年マスコミまわりで結構ホットになっている話題を扱っているのも、好印象。飲んだら乗るなは、当然車だけの世界じゃない。飛行機なんてもっとダメ。
でも、これって、ガブガブに飲んで、酔っぱらってても異次元の上手さで操縦出来ちゃって、結果的に乗客の命を救っちゃったって話なんですよね。そこら辺のモラルと結果の整合性の取り方って難しいとこもあるんだけど、まぁダメなもんはダメ。お酒を飲んだら絶対操縦してはいけません。
■もう少し飛行シーンが欲しかったかな
ポイント:182/333|評価:GOOD
飛行機が墜落させないために、必死に操縦をしているシーンはかなり緊迫感がありました。
序盤がそんなシーンでしたので、まず墜落することはないのは頭の中ではわかっているのですが、もしかしたら……といった怖さがしっかりと残っているのも高評価です。
そうしたシーンの後は人間ドラマパートが始まるんですが、それ以降はあまり飛行シーンは出て来くなります。
お話がお話なので仕方がないんですが、本音を言えばもう少し飛行機の映像が見たかったです。飛行機が大好きなので……でも、いくら飛行機映画だとはいえ、旅客機モノで『トップガン』みたいなシーンばかりを期待するのは、流石にお角違いでした。
メインレビュー
ネタバレありの感想と解説を読む
人生はオートパイロットに出来ない
メインレビュアー
ドラマ担当/最高評価アルコールと運転(本作では操縦ですが)の問題って、やっぱりどこの国でも根が深いんですね。一時期日本でも車による飲酒運転のと合わせて、航空関係者がアルコールを飲んで勤務していたというニュースが毎日のように報道されていました。
この映画の主人公の場合は元々アルコール依存症とコカインの常習者でしたが、そういった病気でない人も実は暇つぶし感覚で飲んじゃってたりしてるんじゃないでしょうか?
日本の場合は、いまでこそ飲酒運転には厳しいですが、全体的にはお酒に緩い国ですからね。一昔前は車で飲み屋に向かうなんて当たり前でしたし、大きな契約が決まったお祝いだとか何とか理由を付けて、就業時間中にビールが振舞われるなんて会社がいまだにあったりします。
見た目以上にクズで人間らしい主人公のウィップ
さて、このあたりで話を『フライト』のレビューに戻しますが、この主人公のウィップ。かなりギリギリまで結構クズなんですよね。
どことなく憎めない愛嬌があるので、見ている間にふと忘れてしまいそうになるんですが、やってることはしっかりクズです。それもかなりの終盤まで。
アル中でコカ中なんだからしょうがないじゃん。ちゃんと操縦出来てたんだから別にいいじゃん。人のせいにしたっていいじゃん。全部いいじゃんいいじゃんの精神で、苦境を乗り越えようとする男なんです。ウイップは。
究極的に追い詰められてもなお、あと一日だけ我慢すれば良い酒を止められないような男ですからね。何でこのタイミングで?って誰もが思うところで自分を許してしまう。シーンとしては見た目はほとんどギャグでしたが、やってしまったことは笑いごろじゃありません。
自分を支援してくれている人々を意図も簡単に裏切ってしまう。決して支援者達の考えや救い方は褒められたものではありませんが、それでも手を差し伸べてくれたのは事実です。だけど、彼はそんなことを気にも留めずに、一杯ぐらいいいかと酒を飲み。あとはドツボにハマってあの有様です。
アルコール依存症がそのような傾向がある病気であることは承知していますが、この時の彼の行動は病気に由来するようなものではなかったように思います。彼の人格の根本的な問題です。
この最終局面に来るまで彼は、ある意味自分に正直過ぎる生き方をしていましたからね。自分のその時その瞬間の気分だけを優先する、基本的にはゲスな男なんです。
でも、こうした主人公の描き方は人間らしさが出てて非常に良かったと思います。酒さえ飲まなければ清廉潔白な男で、何か事件を起こしたぐらいで反省されては現実味がありません。
人間なんてそうそう変われるもんじゃない。変わるには大きなきっかけと大きな勇気が必要なんですよね。良い評価や評判を積み上げてきた人なら尚更です。失うモノが大きいですから。
人生の着地点は自分自身の意思で探さないといけません
さぁ、じゃあウイップはどうするのか?結局変わらないのか?というのが、この映画の最大のテーマなのですが、もう本当に最後の最後の方まで結果が分からないように作られています。
このレビューでもそこのネタバレに関しては控えさせて頂こうと思います。個人的な意見としては80%ぐらいの納得感はあるラストでした。
彼は最後にどう人生を着地させるのか?
映画の中の話じゃないですが、人生の操縦って彼が操縦する飛行機みたいには上手くいかないものですね。
本作の名台詞
まるで 生涯の嘘をつき切ったみたいだった
出典:フライト/VOD版
役名:ウィップ・ウィトカー
演:デンゼル・ワシントン