洋画『キャリー』/約四十年の時を経て2013年に元祖美少女ホラー再降臨(今だともうすぐ50年)

スコア:605/999

キャリー出典: ソニーピクチャーズ
『キャリー』


【あらすじ】

高校ではいじめられ、家では狂信的な母から抑圧された日々を送っていたキャリーは、とあるきっかけで凄まじい破壊力をもった超能力に目覚める。力のコントロールを模索しつつプロムの日を迎える彼女だったが……


【作品情報】

公開:2013年10月18日(アメリカ)|2013年11月8日(日本)/上映時間:99分/ジャンル:ホラー/サブジャンル:青春映画/映倫区分:R15+/製作国:アメリカ/言語:英語


【スタッフ】

(監督) キンバリー・ピアース/(脚本) ロバート・アギーレ=サカサ,ローレンス・D・コーエン/(音楽)マルコ・ベルトラミ/(原作)スティーヴン・キング『キャリー』(Carrie)


【キャスト】

クロエ・グレース・モレッツ/ジュリアン・ムーア/ジュディ・グリア/ポーシャ・ダブルデイ/ガブリエラ・ワイルド/アンセル・エルゴート


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ポイントレビュー


■初代は生まれてないからまだしも、リメイク版の本作公開ももう10年前かよ

試文 書人
試文 書人
ホラー担当
ポイント:219/333|評価:GOOD

今や知る人ぞ知るホラー界の巨匠というか代名詞にすらなりつつある、スティーヴン・キング初の長編小説『キャリー』を、1976年に同名タイトルで映画化した『キャリー』を、また新たに現代版にリメイクした作品である。

超有名ホラー映画ではあるけれど、何故このタイミングでリメイク?本作が2013年公開で、原作小説版の『キャリー』(Carrie)の発表が1974年だからギリギリ出版40周年には足んないしね……

発表のために動きだしたのが1973年ってことで、それを記念してかな?うん。なるほどね。流石に最後の理由は分かり辛過ぎる。単なる思い付きの可能性も十分あるな。

なお、続編の『キャリー2』なるものも1999年に公開されている模様。あと、2002年にはテレビ映画として同じく『キャリー』のタイトルで放映されたとのこと。作中の引っ込み思案な性格の割に案外出たがりだなキャリーちゃん(キャリー2に関しては未見なので不明だが)。

リメイクの理由の件だけでレビューが終わりそうだが、あえてここで筆を置きたいと思う。あの名作初代キャリーの名作には及ばぬもののなかなか良かったぞ。とりあえずはじゃあな。いやぁ、これ、絶対もっと最近リメイクされてたって!!


■プロムパーティーとスクールカースト

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:185/333|評価:GOOD

今は多少変化があるのかもしれませんが、アメリカの学生文化としてプロムパーティーというのは、日本人の感覚では理解しにくいレベルで重要な行事なのだそうで、これを楽しむために学校に通っていると言っても過言ではない生徒もいるみたいです。

おそらくほとんどの日本の高校生は、もしも日本で同じ行事が執り行われたとしても、「めかし込んでキングとクィーン決める卒業パーティーなんてダセーし、ダルイよな!」などと言って、その王座を狙っている生徒達を冷ややかな目で見ることでしょう。それぐらい日本の学生文化には馴染みにくい行事です。謝恩会でバカ騒ぎみたいもんですからね。

しかしながら、数え切れないほどアメリカのTVドラマ、映画のメインステージとして使われている題材なので、彼らのあの感覚はある程度自分の中で理解を示した上で、観賞すると、グッとキャリーの人間ドラマ部分に深みが増すと思われます。

そして、このプロムの文化は最近何かと日本で話題になっているスクール・カーストにも密接に関わっていますので、ここに関しても念頭においておくとキャリーのへの感情移入が楽になるでしょう。

因みにですが、「スクール・カースト」自体は和製英語で主に日本でしか使われていません。あちらも学校内の階級分化はありますが、ジョック、ナードといった、階層そのものを表す言葉で表現するのが一般的なようです。

日本の「スクール・カースト」など相手にならないぐらい、とてつもない本物の旧カースト制度そのものの厳しい世界らしいので、そのまま使ってたらシャレにならないという判断なのでしょうかね?

ホラー映画監督がやたらとジョックと呼ばれる上流階級者を殺したがるのも、下流階級のナード出身者が多いからのだとか。フィクション内での復讐で済ませてあげるなんて優しいです。


■二人のダンスシーンのぎこちなさはワザとなの?

猿渡 りん子
猿渡 りん子
ホラー苦手代表
ポイント:201/333|評価:GOOD

無理矢理に様々な作品を観させられたせいで、完全にホラー映画に慣れに近いものが出て来てしまっていますので、この肩書が最早適切であるのかわからない状態にありますが、本作はとにかく血が沢山でます。主婦の大好きな出血大サービスです。でも、スプラッターみたいにグロくはなくて、鮮やかで美しいと思ってしまったぐらい……

ストーリーは単純明快で整然としており、深いことを考えずに楽しめる、おどろおどろしくも変に明るい雰囲気……主演のクロエちゃんの可愛らしさも相まって、私の場合はホラー映画視聴らしからぬ、登場人物の動きそのものに注目してしまう視聴スタイルになってしまいました。

タイトルの『キャリー』はクロエちゃんが演じる主人公の女の子の名前なので、そんなに問題はない話ですが、これまた観させられた『チャイルド・プレイ』のチャッキーの表情や一挙手一投足にそんなに着目しないもんです。

それぐらいキャリーが美少女で可愛らしい。アメリカではこういう子でもいじめられるんですねぇ。ちょっと私の経験だと考えられない話です。後味も私にとっては良かったかな。そろそろホラー苦手代表の卒業プロムパーティーを催す時期が来たようですね!


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

日米合作で『貞子』VS『キャリー』なんてどうだろう?

試文 書人
試文 書人
メインレビュアー
ホラー担当/最高評価

初代『キャリー』は、ホラー映画界における欠かせない系統であるプロム系ホラーの元祖と言える作品であったが、本作リメイク版も、そのDNAはしっかり受け継いでいるようで安心した。

プロム系ホラーで他に正統な有名どころを挙げるとしたら、『プロムナイト』とかそのまんまの映画になっちゃうけど、プロム系ホラーは亜流が多いのでね。

プロムパーティーがお話のキーイベントになっていればプロム系だし、プロムパーティー自体は全然関係なくても、リア充学生達がワチャワチャ騒いでパーティーしている時にホラーな出来事があれば、プロム系と呼んじゃうこともある。

初代『キャリー』はそんなプロム系の中にあって元祖にして、正統という立ち位置で、しかもそれがこういう風にちょいとリメイクすれば、現代にも通じるという名作なので、これと同列に比較するのは可哀そうな感じがするんだけど、あえて言うなら、本作はキャリーへの家庭と学校での抑圧要素がやや緩いんだよねぇ。

どちらかと言うと、観賞感が復讐劇というか、最後にスカッとした感じの感想になってしまう。クラスのいじめっ子……そしてあのどうしようもない母親……どちらも分かりやすく、すげぇムカつくヤツに描けてはいるんだけど、ちょいちょい救いというか、いい人が目立つ形で登場してくるので、キャリーなりに追い込まれているのは分かるんだけど、「そんなに怒らなくても……」みたいな感情が時々芽生えて来て観る側に邪魔になってくる。

ただ人間をイジメたり、抑圧したりするときはこれぐらいの覚悟をしとけよというのは、初代と変わらず伝わって来るものがあったので、概ねは満足です。

ホラー作品の場合、映像が古めかしい方が有利に働くことがあるので、その点も少し不利に働いたかも。何もかも綺麗にすればいいってもんじゃないってことだね。

ただ、このキャリーというキャラはアメリカでは相当キャラ立ちしている少女になっているから、こういうリメイクをどんどん作っていくのはアリなんじゃないかと思う。

HD映像に見慣れている世代だと、映像が古いというだけで、観る気を失ってしまう人も少なくないだろうし……ホラー映画に限って言えば、映像が古いことが怖いを構成する要素にもなってるのでね。そこの逆をついて初代版のファンを逆に驚かせてみるってのもアリなんじゃない?

そうだ、日米合作で『貞子』VS『キャリー』とか作ってみたらどうだろう?

あぁ……でもダメか、実はこのリメイク版は初代とラストが違うんでね。リメイク版がある意味キャリーに優しいラストになってるせいで、リメイク版のキャリーは貞子と戦う感じじゃないんですわ。

俺は初代のラストの方が好きだったけどな。リメイク版は何か現実世界に急に戻されたみたいな感じになって、逆に視聴者にとって残酷な結末になっているような……ただ、そこはそれぞれお好みの問題ということで。

いや、待てよ。貞子と初代キャリーは共に超陰キャで性格が合っちゃいそうだから、ここも対戦不可能だわ。キャリーに対ゴースト属性もなさそうだし、うーん、またまた余計なことを書いてしまったな。じゃあいいよ『貞子』&『キャリー』っていう方向性でいこう。

幽霊の中にもリア充はいるだろうしね。二人で力を合わせて皆やっつけてしまえ!

本作の名台詞

助けて! 誰か助けて

出典:キャリー/VOD版

役名:キャリー・ホワイト
演:クロエ・グレース・モレッツ