スコア:556/999
出典:東宝
『後妻業の女』
【あらすじ】
熟年者向けのお見合いパーティーへの出席を繰り返す小夜子は、企画者の結婚相談所所長の柏木と組んで遺産目的で結婚をする「後妻業」を生業にしていた。彼女の夫達の不審な死への疑惑、愛と金、二人の運命は如何に?
【作品情報】
公開:2016年8月27日/上映時間:128分/ジャンル:コメディ/サブジャンル:ブラックコメディ/映倫区分:PG12/製作国:日本/言語:日本語
【スタッフ】
(監督・脚本)鶴橋康夫/(音楽)羽岡佳/(原作) 黒川博行『後妻業』
【キャスト】
大竹しのぶ/豊川悦司/津川雅彦/尾野真千子/長谷川京子/水川あさみ/ミムラ/森本レオ/泉谷しげる/柄本明/永瀬正敏/笑福亭鶴瓶
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ポイントレビュー
■やっぱり人生の終盤に独りは寂しいよね
ポイント:171/333|評価:GOOD
大竹しのぶのキャスティングは大成功だったんじゃないかな?
俺はこの映画で主人公に惚れる男性陣よりだいぶ年下だけど、「わかる、その寂しさわかるよ」って、無意識に何度か頷いてしまった。
騙されててもいいなって女性は確かにいるんだよね。騙された振りをした上で、自分なら上手くコントロールが出来そうだなと、大きな勘違いをしてしまえる女性が……
ただ、実際はそんなことはなくて、そう思ってしまっただけで負け。でも、負けてもいいから演技でもいいから、自分を愛ある眼差しで看取って欲しいという気持ちはわかる。すっげ~わかる。
あぁ、愛しさと切なさと独り身の寂しさよ。くわばら。くわばら。
■「財産がなくて良かった!」の空笑いが出る
ポイント:198/333|評価:GOOD
コメディとしてはどうなんでしょう?昨今の熟年男女の状況を考えると、少なくとも蛍光灯みたいに明るい笑いではなかったですね。常夜灯ほどのボヤっとした明るさの笑いだったと思います。
でも、それぐらいの明るさに調節した笑いで丁度良いお話なんですよね。常に明かりがついてないと眠れない人と一緒で、あのオレンジの光みたいなボヤっとしたユーモアが常に照っていないと怖いんです。
これが真っ暗で冷徹なシーンばっかりだったとしたら、お見合いパーティーになんて行けなくなってしまいます。そんなの映画を作ったら、健全なイベント会社からクレーム入っちゃいますね(笑)。
ただ、常夜灯が付きっぱなしなら、それはそれで常に薄っすら何かが見えているわけですから、別の意味の怖さがこの映画にはあるかもしれません。
いずれにしても、生活のための結婚ではなく、あくまで遺産を奪うことが目的の結婚って凄い。普通の人間なら、そんなに徹底して鬼になり切れなません。
だからこそ、この映画では乾いた笑いが生みだせたのでしょうが、現実を考えると空恐ろしいお話です。財産がなくてよかった。私と同じく財産がない幸運な方は、同じようにエンターテイメントとしてお楽しみ頂けると思います。
■大変そうだけど、いいなぁ……後妻業
ポイント:187/333|評価:GOOD
ははははは。はははははははは。なーに言っちゃってるんでしょうかね?
こういう話はごくごく作られた限られたお話ですよ。冗談交じりにこういう話を仕上げるのが映画業界の方は本当にお上手ですね。でも、どうしてくれるんです?この映画がヒットしたら、旦那が私の塩辛い料理を食べてくれなくなっちゃうじゃないですか?
苦労して旦那に遺言書を書いて貰ったのに困るなぁ……
なーんてね(笑)
メインレビュー
ネタバレありの感想と解説を読む
もうすでに『後妻業』って生業自体が面白い
メインレビュアー
ドラマ担当/最高評価もう設定だけで、つまらなくするのが難しいお話です。いいですよね。ずる賢くて、人を騙すことに一種の悦びを感じる女性。しかも、この映画はそれがコメディタッチで見やすいんです。平均的に見て、少なくとも「面白くなかった」って方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか?
現実世界でも実際にありえるようなお話ですから、それを想像すると非常に恐ろしい部分があるんですが、「人間は裏切るけど、金は裏切らない」って真理をきちんとついていて、笑えるシーンの中でも少しゾっとするものがありました。
本作でほくそ笑まなかった方は恐らく人間が出来ています
この映画はコメディ作品としては、良い笑いを提供するお話ではないんですよね。悪い笑いを提供するお話です。
でも、いつの間にか観客側はそれを忘れていて、男を騙し、たぶらかす主人公の小夜子の味方になっていて、なんとか苦難を乗り越えて欲しいって、応援しながら笑うようになるんです。
そして、騙されながら死んでいく夫達への同情心は徐々に薄れていって、最終的には「騙されちゃってバカだねぇ」というのところまで感想が行きつきます。
だから、この映画はコメディでもあり、ホラーでもあり、サスペンスでもありラブストーリーでもあり、人間ドラマでもあるんだと思います。
「笑えた」「笑えなかった」の線引きをするのに、ある程度視聴者の倫理観が試されるお話ではあるのですが、私は出来た人間ではないので「笑えました」と丁寧に申し上げておきます。主役の小夜子が金のためじゃなく、人としてターゲットを好きになりかけるシーンは、正直いらなかったんじゃないかと思う程に、生き様が素敵な熟女さんでした。
人の弱みに付け込むビジネスの話にハズレなしとは言いませんが、何か黒い話を見たいなぁという、人としてイケナイ気分になりたいの時は打ってつけの映画です。
大竹しのぶになら騙される自信があります
それにしても、大竹しのぶは魔性の女優ですね。彼女の演技を見ていると、『後妻業』という生業は、誰にでも出来るものではないことが良く分かります。役者として単に演技がうまいからという理由ではなく、大竹しのぶのキャラクターでしか出来ないことを、この映画の中でやっていたんじゃないでしょうか?
歳をとって、もしも高齢者向けのお見合いパーティーに出席したら、大竹しのぶに騙される自信、あります。めっちゃあります。
それを確認出来ただけでも価値がある映画でしたね。なので、私は歳を取っても高齢者専用の婚活パーティーには死んでも行きません。どんなに寂しくても天国の婚活パーティーまで待つことにしたいと思います。
本作の名台詞
死別した夫に尽くしきれなかったという想いがあったからです……
出典:後妻業の妻/VOD版
役名:武内小夜子
演:大竹しのぶ