スコア:680/999
出典:ドリームワークスSKG
『ドリームガールズ』
【あらすじ】
中古車ディーラー兼、プロデューサーとして活動しているカーティスは黒人女性3人組のグループを誘い、自らが担当する歌手ジミーのバックコーラスとして雇う。グループのモデルは1960年代から活躍したスプリームス。
【作品情報】
公開:2006年12月16日(アメリカ)|2007年2月17日/上映時間:131分/ジャンル:ミュージカル/サブジャンル:社会派映画/映倫区分:全年齢/製作国:アメリカ/言語:英語
【スタッフ】
(監督・脚本)ビル・コンドン/(音楽)ヘンリー・クリーガー
【キャスト】
ジェイミー・フォックス/ビヨンセ・ノウルズ/ジェニファー・ハドソン/アニカ・ノニ・ローズ/シャロン・リール/キース・ロビンソン/エディ・マーフィ
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ポイントレビュー
■ミュージカル映画ファンになるための入門映画
ポイント:282/333|評価:GOOD
歌声に聞きほれるも良し、純粋に1960年代のアメリカの雰囲気を楽しむも良しの一石二鳥のミュージカル映画です。
ミュージカルと言っても、一般的にイメージされているような、心情を表現するために歌うタイプのものではなく、当時の音楽とその時代背景が題材というタイプの作品なので、『キャッツ』的なものを期待している方はご注意下さい。
本作でも主演を務めているジェイミー・フォックスがアカデミー主演男優賞を受賞した『Ray/レイ』に少し似ていますが、こちらの方がかなり音楽に重点を置いているかなって印象です。
ただ、台詞を歌にして歌いまくるという作品ではありません。
なかなかどうして、映画としてはとてもファンの幅が狭いジャンルなので、こういう作品からミュージカルの良さを知って貰えたらなぁと思います。
ミュージカル映画の入門編みたいなお話といったら、わかりやすいですかねぇ。同ジャンルの別の作品と比べると、かなりとっつきやすい作品なのではないでしょうか?ここからどうかミュージカルにハマってみてくださいな。
■本物のスプリームスの歌も是非聞いてみて
ポイント:195/333|評価:GOOD
1960年代の黒人が立たされていた差別的な立場や黒人同士による搾取のし合いなど、客観的な時代考証がかなりきちっとしている映画だと言えると思います。
作中で流れる曲の数々も、当時の雰囲気をごくごく自然に醸し出していて、ミュージカル映画特有のわざとらしさはありません。
また、観賞終了後に、参考までに本作のモデルとなったスプリームスの歌を聞いてみたのですが、時代こそ感じるものの、彼女達の味のある素晴らしい歌声に感銘を受けた次第です。
もし、鑑賞前に聞いていたらもう少し低い評価になっていたかもしれません。ちょっぴり劇中の歌は音が綺麗過ぎるんです。仕方ないことではありますが……
■エディ・マーフィーのシリアスな演技が見られた!
ポイント:203/333|評価:GOOD
私のペンネームでも拝借している『ビバリーヒルズ・コップ』のアクセル役、エディ・マーフィーが準主役で出演しているとなれば、見ない理由はありません。
エディ自身の大ファンでもあるので、彼が出ているだけで、満点をつけたいぐらいです。
ですが、レビュアーとしてはそういうワケにもいかないので……真面目に評価をしたいと思います。果たしてエディ・マーフィーにシリアスな演技が出来るのかという一抹の不安もありますし……
って、その部分は本当に余計な心配でした。もちろん役柄的にこういうシリアスな作品の中ではふざけたヤローではあるので、マッチしやすかったってのはあるのでしょうけど、今までにみたことがないエディを見ることが出来たような気がします。
あれ?そういえば、『ネゴシエーター』なんかのシリアスな映画でもちゃんと主演を務めてたか。
でも、やっぱりアクセルっぽいエディのが好きなんですよねぇ。落ちぶれていくジミーの姿を見ているとファンとしては違う哀しさまでこみ上げて来てしまって、この作品に感動しているのかどうかがあやふやな部分があったのは確かです。
メインレビュー
- ネタバレありの感想と解説を読む
重いテーマをミュージカルシーンが救ってくれる
メインレビュアー
ミュージカル担当/最高評価主演のジェイミー・フォックスは、大学で音楽を学んだだけあって、ミュージカル映画に良く出てくるイメージがあります。
『アニー』しかり『Ray/レイ』しかり、あと多分なんかの作品でも歌ってたような……思い違いかな?彼が出演している作品はぶっちゃけ私の中では、当たり外れの振れ幅が半端ないので、あんまり覚えてないんですよね。
これ、良かった方だっけ?って。
ただし、本作はレビューを書いているので忘れません!この『ドリーム・ガールズ』は間違いなく良かった方です。
差別の中にあっても、逞しく生き抜くためのひとつの術として最大限に『音楽』という手段を活用している当時の黒人達には尊敬の念しかありません。
そして、本作の何よりも素晴らしい部分は、それを全部綺麗ごとだけで済ませていないことです。
黒人同士でも騙し合い、時に音楽にさえ裏切られ、それでも歌い続け、這いつくばってでも生きて前に進もうとする姿勢。泥くさいのは仕方がないんです。正しいやり方だけじゃ生きていくことは出来ないんです。
だって、差別されているんですから。同じスタートラインに立たせてさえ貰えないんですから。
今のアメリカは、当時よりはずっとマシなのかもしれませんが、日本人の私でも根が深い部分は未だに感じます。
ただ、差別され、虐げられたがゆえに生み出すことが出来た黒人ならではの素晴らしい音楽性という側面は否定できないような気がします。
その生みの苦しみの時期と、生み出したばかりの黎明期がきっとこの1960年代だったんでしょうね。この映画を見ているとそう思います。
ミュージカル映画って、案外軽いものが多くって、話を深堀してみたくなるようなストーリーって数が少ないんですよね。
私自身、ミュージカル映画ファンとしても、作中の歌を聞きたいからってだけだったり、リズムに乗せたわかりやすい心情描写で、流れるようにシンプルに、悪い言い方をすればお気楽にストーリーを楽しみたいってだけだったり、ってことが良くあります。
だから、何度も同じ話を繰り返し見られるっていう良い部分もあるんですが、たまには考えさせられるミュージカル映画も見ておかないと、ミュージカルの真の魅力である爽快感みたいなものが感じられなくなってしまいそうな気が私はするので、本作はその面で非常に勉強になりました。
映画全体としてはさほど暗くもなく、比較的明るい雰囲気でお話が展開されてはいくのですが、扱っているテーマのことを考えると、気分としては多少落ちるところもある作品です。
ただ、その落ちそうな部分をやっぱり作中の音楽が救ってくれるので、やっぱりミュージカル映画って素晴らしいなと思います。
そうした意味合いでは、この映画はミュージカル入門編でもあり、応用編でもある作品なのかもしれません。
本作の名台詞
黒人局は電波が悪い
出典:ドリームガールズ/VOD版
役名:C.C.ホワイト
演:キース・ロビンソン