邦画『あさひなぐ』/運動オンチの地味っ子が薙刀部に入ってみたってお話です

スコア:308/999

あさひなぐ出典:東宝
『あさひなぐ』


【あらすじ】

主人公、東島旭は運動オンチ。先輩に憧れて入部した薙刀部でも足を引っ張ってばかりだった。しかしながら部員達と行動を共にしていくうちに、彼女の中で熱い感情が芽生えていき、仲間と共に大きく成長していく。


【作品情報】

公開:2017年9月22日(日本)|2017年12月8日(台湾)/上映時間:105分/ジャンル:ドラマ/サブジャンル:スポーツ映画/映倫区分:全年齢/製作国:日本/言語:日本語


【スタッフ】

(監督・脚本)英勉/(音楽) 未知瑠/(主題歌) 乃木坂46『いつかできるから今日できる』/(原作)こざき亜衣『あさひなぐ』


【キャスト】

西野七瀬/桜井玲香/松村沙友理/白石麻衣/伊藤 理華/富田望生


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ポイントレビュー


■なぎなた部の設定をもっと丁寧に扱っていれば……

アクセル神田
アクセル神田
ドラマ担当
ポイント:141/333|評価:BAD

そうですね……部活モノの邦画をランダムに1つ選んで本作と合わせて視聴すれば、超高確率で「どっちも似たような話だったね」と、盛り上がれるんじゃないでしょうか?

メジャーな武道じゃない分、それゆえの特殊な技巧や攻撃方法などを期待していたのですが、経験者の方が演じているわけでは無さそうなので、限界があるのでしょうね。あまり薙刀の魅力について掘り下げて描写する場面はありません。

部活モノとしてのスタンダードな構成は外せないのかも知れませんが、せっかくの薙刀部という実態が謎に満ちて溢れている部活動なのに、その特異性を捨ててしまうのは得策ではない気がします。主人公と一部の登場人物達にフォーカスを当て過ぎて、「薙刀部」を描く作品ではなってしまっています。

こういったタイプの普通の部活話は、もうメジャーな部活動の方々の物語で出し尽くされていますから、別の角度で戦わないと興味関心を呼びにくいんですよ。私もマイナーな部活に所属していたことがあるので、そのことを良く知っています。普通の「練習きつかったけど頑張った」っていう話じゃ誰も聞いてくれません。

単に頑張っただけの映画は、メジャーどころの部活に任せておけばいいんです。観客も大体ルールを知っていますから、彼らは心理描写に集中できる余裕があります。本作の良くなかったところは、そこですね。映画として、キャラクターを描くことにステータスを全振りしていては、こういった部活動の魅力を伝えるのは難しいと思います。


■薙刀ならではのドラマが見たかった

近道 通
近道 通
オールジャンル担当
ポイント:31/333|評価:BAD

なんて言ったら良いんだろう。たぶん、その日に見て次の朝には全て忘れてる……何なら30分もしたら忘れてる……それぐらいしかマジで感想がありません。見てから15分後に書き始めてマジで良かった。

これ、真剣に「なぎなた」をやっていた人や、今やっている人はどう思うんでしょうか?

そんなにメジャーな部活動じゃないから、これで武道として人気が出れば少しは良い部分があるのかもしれないけど、結局中身は別のスポーツでも良かったんじゃねぇか?つー話だし。武道としてのなぎなたの奥深さなんててんで御座なりだったし。

同じ「スネ!!」を狙える競技なら、ローキックがあるキックボクシングとかが題材でも問題なかったんじゃないのかな?そんな具合に、丸っきり「なぎなた」である意味が感じられない作品でした。


■女子の部活っぽさは出てたけど、それだけかなぁ……

猿渡 りん子
猿渡 りん子
お母さん代表
ポイント:136/333|評価:BAD

アイドル映画にケチをつけるのも大人気ないと思うので、ごくごく私事な怒りを少しだけ八つ当たりさせて貰います。

ちゃんと戦って!武道やってるんでしょ!最初はビビちゃうのはわかるけど、戦う部活に入ったんでしょ!?お母さんだって、武具を買うために戦ってるの!!洗剤の値段だって思っている以上に馬鹿にならないの!!!パートの時給だってなかなか上がらないんだからね!!!!

あーすっきりした……(ウチの場合はサッカー関係の衣類だけど)

と、個人的にはサッカーの子供用の脛当とそれ用の靴下の高額さから鑑みて、薙刀をやるためのスネ用の防具はもっと高いんだろうという、「金の話」だけが頭をもたげた映画でした。


メインレビュー

ネタバレありの感想と解説を読む

出演者では魅せるのではなく、「なぎなた」を魅せるべき

近道 通
近道 通
メインレビュアー
オールジャンル担当/最低評価

部活モノの映画はアイドル達の俳優への登竜門だとは良く言ったものですが、これは門としては、「門はあったけど、格子の隙間が大きいから開けずにすり抜けられたよ♪」みたいな感じ。

単なるアーチと言ってもいいぐらいです。鍵も掛かっていなければ、扉さえ閉まっていないお花で飾られたアーチです。そこを潜り抜けさせただけ。本作が登竜門としての役割を果たしていたとは到底思えませんでした。

女優として売り出すためのプロモーションムービー感が色濃い

あれだけ人気がある同タイトルの漫画を原作として擁しておきながら、出演者のための出演者によるプロモーションムービー感が半端じゃないんです。

アイドルが主演の映画を専門雑誌などがレビューする際に、初々しい演技が光るなんて表現が良く使われますが、こうも出演者ありきで映画を作られてしまうと演技をしていたのかどうかさえ怪しく感じてしまいます。

物語というものは出演者のためにあるのではなく、読む人見る人のためにあるものでなくてはならないのに、本作ではそれより上に出演者が来てしまっているんですよね。

決してメジャーとは言えないこの「なぎなた」の魅力を作中で伝えることが出来れば、マイナー部活ジャンルのオピニオンリーダーになれたかもしれないのに、その辺りの意気込みがストーリーの中でほとんど感じられないんです。売り出し中のアイドルの薙刀道着姿を観客に見せるぐらいしか、「なぎなた」を題材に使う意味が見当たりません。

ここまで露骨にされると、ただ映画を楽しみたいという人間にとってはキツイ作品になります。強いていうならファン方々のためにもなっていない。出演しているアイドルの今後のキャリアを思うファンの方ためを考えたら、作中でもっとちゃんと「なぎなた」をやるべきだったと思います。

「なぎなた」をあえて選んだ理由は何処へやら

特段なぎなたに思い入れがあるわけじゃないですが、一般的に薙刀には有事における女子のたしなみというか、そういう由緒ある可憐なイメージがあって、そのイメージを出演者の売り出しに利用したくて作ったハズの作品で、本当になにやってんだかって感じです。

しかも部活モノとしてガッチガチの雛形通りに話が進んでいくから始末に悪い。「なぎなた」という武道の新鮮味さえも自ら放棄してしまっています。まるっと先が読めるんです。しかもそれらのシーンは全て別の部活動にも置き換えられるという、ありきたりさ。

特に部活モノではお約束の寺合宿のシーンなんて酷いもんでした。いくら多作な部活モノとはいえ、既視感にもほどがあります。

まぁ、本作に関して言えば、薙刀の名手、宝蔵院胤栄が興福寺の僧兵だったことに因んでの合宿先だったのかもしれませんが、結局は如何にも合宿で起きそうなエピソードの寄せ集めみたいなシーンばかりなんですよね。寺である意味がない。音量をオフにしていても何を話しているのかがわかるんじゃないかってぐらい予想通りの展開のオンパレードです。

いっそのこと開き直ってくれた方がありがたかった

正直、どっかのバラエティ番組でやりそうな「人気アイドルがなぎなたに挑戦してみました」みたいな企画を見た方がまだマシだったかもしれません。それぐらいの最後まで題材である「なぎなた」を生かす気が感じられない、雛型に沿っただけの私にとっては典型的なダメ部活映画でした。

作品ジャケットのどこかに「本作は売れっ子アイドルのプロモーションムービーです」の一文言を入れておいてくれれば、まだ救いがあったんですけどね。新ジャンルの部活映画として見てしまったがゆえにガッカリ度も激しかったです。

こういう感想を書いてしまうと、事前に出演者を確認すればだいたい判断できるだろ?っていうツッコミを受けてしまいそうですが、稀にプロの役者陣とアイドルの真剣勝負の名作品があるからやっかいなんです。そっちは大好物だから困ったものですね。

本作の名台詞

スネ!!!

出典:あさひなぐ/VOD版

役名:東島旭
演:西野七瀬